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中国政府が今週発表した9月の購買担当者指数(PMI)では、各産業が縮小モードにあることを明らかにした。同指数の調査は、中国経済を支配する大手国有企業中心の景況感を捉えたものだ。習近平国家主席は相変わらず、小出しの財政支出に拘っている。財政赤字拡大は、習氏の政治責任と結びつくだけに決断できずにいるのであろう。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月3日付)は、「中国は経済を自力で立て直せるか」と題する記事を掲載した。

 

長らく中国の経済成長を主にけん引してきた固定資産投資は今夏、3カ月連続で減少した。「伸びが鈍化した」にとどまらず、「減少した」のだ。不動産投資は何年も落ち込みが続いている。2020年以前に史上最大のバブルの一つとされた不動産市場を中国政府が抑え込もうとしているためだ。新たな懸念すべき傾向は、製造業やインフラへの投資も減少していることだ。

 

(1)「驚異的な規模の債務に支えられた投資主導の旧来の経済モデルは、今世紀初めの中国に驚くべき経済成長をもたらした。だが、そのモデルは根本的に不安定なものでもあった。不動産バブルはそれを警告する予兆の一つだった。もう一つの予兆は、増加する輸出への慢性的な依存であり、この状況がいずれ中国の貿易相手国の不興を買うことは確実だった。 中国政府が非生産的な投資への依存を減らすことは、より安定した経済モデルに向けた第一歩だ。次のステップは、無用の長物を対象とした巨大公共事業や国有企業の無駄遣いといったことへの対応から、国内消費および、起業家精神と生産性に富む民間投資への転換であるべきだ」

 

中国経済は、インフラ投資と輸出への依存で成長してきた。いずれも、中国の国威発揚に貢献している。無駄なインフラ投資でも、都市はきらびやかに飾られる。過剰輸出は、中国製品のシェアを高め「中国の時代」到来を錯覚させる。習氏には、たまらない魅力に映るのであろう。これは、虚栄心の満足に過ぎず、国民が犠牲者だ。

 

(2)「これが実現していないことが、中国の経済的な苦境の原因だ。消費者は悲観的な見方に圧倒されているように見える。住宅価格の修正によって中間層の富が前例のないほど減ったことを考えると、彼らを責めることはできない。公式の経済統計に表れている消費の好調さはおおむね、消費者が白物家電から携帯電話に至るまでの製品を購入する際に政府が出す補助金によって、人為的にもたらされている結果だ。これは経済に関する問題の解決策にはなり得ない。この辺りから、中国政府は全くつじつまが合わない状況へと陥る」

 

家計の満足は、白物家電から携帯電話までを補助金で安く購入することではない。雇用の安定と継続的な賃上げの実現にある。これは、インフラ投資や過剰輸出とは相容れないものだ。習氏は、ここが理解できずに放置している。

 

(3)「習近平国家主席はこの1年間、彼らが「内巻」と呼ぶものへの対応に追われた。これは、地方政府が経済データを良く見せるために過剰な生産を促し、余剰の生産物をどこか別の場所に投げ売りする傾向があることを指す。中国以外の国々が中国による輸出の独占を嫌がる中、その「どこか別の場所」は国内になっている。余剰の生産物をさばくために国内市場で激しい価格競争が起き、デフレの懸念が生じている」

 

過剰生産の捌け口は、最終的に国内となる。過剰輸出は、相手国が抵抗するのでいつまでも続けられないからだ。

 

(4)「別の世界であれば、激しい競争と価格低下が、中国の家計にとって唯一の良い方向へと向かう道となる。デフレになれば、実質的な購買力の向上が期待できるからだ。しかし、債務比率が高過ぎる中国では、デフレの見通しによって、多額の債務を抱える企業の収益性(と多額の債務を抱える地方政府のバランスシート)が悪化することが、経済の直面する最も深刻な脅威となりかねない」

 

中国の過剰生産による「内巻競争」は、過剰債務を抱える企業にとって致命傷になった。債務返済が不可能になるからだ。デフレ下での内巻競争は、互いを傷付けあう無益な「殺生」に等しい行為だ。

 

(5)「固定資産投資の減少だけを見れば、内巻を抑制する取り組みが機能している兆候が出ていると言えるだろう。だが、中国政府は既に動揺し始めている。今週、新たな刺激策のニュースが伝えられた。国有銀行からの5000億元(約10兆3000億円)に上る直接融資だ。これは主に地方政府が実施する公共事業などのプロジェクトに、約2兆元の投資を呼び込む可能性がある。経済のバランス回復の希望を少しでも残すには、こうした投資に歯止めをかける必要があるが、中国政府はまたしても補助金を出そうとしている」

 

中国経済が、バランスを取戻すにはインフラ投資を減らして消費を回復させることにつきる。習氏は、こういう正統論を無視して補助金付きのインフラ投資を強行しようとしている。現代の「万里の長城」を築く積もりであろう。後世に、自己の名前を残すことになるからだ。