あじさいのたまご
   

長期安定であった安倍晋三政権への郷愁から、高市氏の自民党総裁へ期待する声が強い。一方では、アベノミクスと現在の日本経済では、状況が180度変っているという冷静な指摘もある。当時はデフレ状況にあった。現在は、明らかにインフレに見舞われている。消費者物価の高騰が、賃上げを上まわる状態が恒常化しているからだ。政局不安の根因は、ここにある。

 

ここで、アベノミクスによる国債依存の積極政策を行なったらどうなるか。円安によって国内物価は、一段の上昇に見舞われる。国民生活が、混乱に落とし入れられるのは必至だ。高市氏は、「第二のサッチャー」を目指しているが、サッチャーは厳しい財政規律主義であった。この面も学んで欲しいのだ。

 

『ロイター』(10月7日付)は、「高市氏は『鉄の女』にあらず、自民党右傾化に政局混乱の予感」と題する記事を掲載した。

 

 高市早苗氏は、日本に強硬な保守主義的主張を打ち出す一歩手前まで来た。同氏は4日、自民党の総裁に選出された。約1週間後には日本初の女性首相に国会で選出される可能性が高い。彼女は、しばしば自身をサッチャー元英首相になぞらえる。しかし、彼女に「鉄の女」の経済政策を期待する人は、ひどく失望するだろう。

 

(1)「サッチャー氏は、高金利を支持する財政規律主義者だった。対照的に、高市氏は5人の党総裁候補の中で唯一、物価高への対応として、政治の師である安倍晋三元首相の超緩和的金融・財政政策への回帰を主張している。日銀の金融政策に関しては昨年、「金利を今、上げるのはあほやと思う」と発言した。ただ党総裁選出後は、経済政策は政府と日銀が足並みを揃え、協力し合ってやっていかなければならないと述べている」

 

安倍晋三氏が、本当に高市氏を自らの後継者とみていたかは疑問である。安倍氏は、高市氏が1回目の自民党総裁選に出馬した後、「私の義務は終った」という発言が伝えられていたからだ。高市氏は戦略上、有利とみて「安倍晋三」後継者と言っている節もある。安倍氏の経済政策を盲目的に取り上げているのは、安倍氏の評価を落とす危険性すらあるのだ。

 

(2)「市場は高市氏のこれまでの発言を、より真剣に受け止めている。週明け6日の東京株式市場で日経平均は、大規模な景気刺激策への期待から4.7%も上昇し、円相場は1.7%下落して1ドル=150円を超えた。日本国債は、日銀の利上げが先送りされるとの見方から上昇(利回りは低下)した。安倍氏のレガシーの純粋な後継者という主張にも疑問が残る。安倍政権は、高齢化に伴う労働力不足に対処するため、実質的な移民受け入れ促進策を打ち出した。一方、高市氏は「全く異なる文化や背景を持つ人々を受け入れる政策」の再考を主張している」

 

外為市場は、円安一色である。これで、国民生活はさらに苦しくなる。アベノミクスは、極端な円高是正を目指したが、異常円安は想定外であった。安倍政権は、実質的な移民受け入れ促進策を打ち出していた。アベノミクスは、高市氏と多くの点で異なる。

 

(3)「高市氏が直面するのは、 サッチャー氏や安倍氏と異なり与党が多数派でない国会だ。自民党の右傾化は旧友や新たなライバルとの衝突を引き起こし、政局の混乱や政策の不一致を予感させる。連立相手の公明党はすでに、高市氏の移民排斥と受け取られる暴言を重要な関係を危うくするいくつかの問題のひとつだと警告している。高市氏の強権的な政治が立法府の行き詰まりを助長すれば、強力な官僚機構は既存の権限を推し進めることができ、ウェルスマネジメント業界強化の取り組みは比較的影響を受けずにすむだろう」

 

安倍氏には、柔軟性があった。高市氏のような「麻生派」丸投げの党運営をしなかった。

 

(4)「とはいえ、高市氏は、日本経済の軌道を根本的に変えるのに十分なほど、バラバラな派閥をまとめることに成功するかもしれない。同氏が総裁選前の方針を貫くとすれば、急激な円安や債務増加など、多くの問題を引き起こすだろう。こうした変化が残すレガシーは、彼女独自のものとなる」

 

麻生派が、自民党を一本にまとめられるかは疑問だ。今は、脱派閥で協力すべき時期である。高市氏は、石破政権の基盤が弱かったことを反面教師にしているが、行き過ぎは逆効果となろう。