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中国の個人消費が、北京や上海という第一線都市で不振が続いている。中国共産党機関紙『人民日報』は、5日連続で経済を悲観するなと異例のキャンペーを行なうほどだ。雇用不安や失業者増加で、個人が財布の紐を一段と引締めているのだろう。米中関税摩擦が、対米輸出のブレーキとなって、中国経済を冷却化させている。

 

9月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.8。景況感の好調・不調の境目である50を6ヶ月連続で割った。米国との貿易摩擦によって、内需不振が長引き景況感全般を低迷させている。

 

PMIの内訳をみると、新規受注は前月より0.2ポイント上がったが49.7にとどまり、3ヶ月連続で50を下回った。長引く内需不足や米中貿易摩擦による先行き不安が響いた。海外からの新規受注を示す指数は0.6ポイント上昇したものの、47.8と50を割ったままだ。対米輸出の減少が輸出企業の収益を直撃している。こうして、企業収益が低迷しているので雇用不安は、起こっている。消費者が財布の紐を緩めるはずがないのだ。

 

『レコードチャイナ』(10月8日付)は、「北京の消費が断崖式下落、経済情勢を否定しないよう人民日報が呼び掛け―仏メディア」と題する記事を掲載した。

 

仏国際放送局『RFI』中国語版サイトは6日、「中国北京の消費が断崖式下落、人民日報は経済情勢を否定しないよう呼び掛け」との記事を掲載した。

 

(1)「記事はまず、中国の8月の社会消費財小売総額は前年同月比34%増、18月は前年同期比46%増となったが、北京市では断崖式下落が起きたと言及。北京市統計局のデータとして、「8月の社会消費財小売総額は前年同月から11.4%減少した」と記し、18月では前年同期比5.1%減だったと伝えた。同じ大都市の上海市は8月、前年同月から13%伸びたが、18月は37%増と全国の数値を下回っている」

 

一線都市の北京や上海の個人消費が不振である。企業活動が、大きく落込んでいることを反映したものだ。雇用不安が深刻化している結果であろう。これが、解決しない限り消費は増えないであろう。それには、米中関係の改善と「内巻競争」の打ち止めが不可欠である。前途遼遠である。

 

(2)「記事によると、中国メディア『第一財経』は5日、経済専門家の分析として、「中国の消費市場は七つの大きな構造的分化を示している。そのうちの一つが(北京や上海などの)一線都市の消費の成長スピードが他の都市を下回っていることだ」と報じた。一線都市の消費が弱っている理由として、住宅価格の下落やリストラの影響、消費分野における不合理な制限の多さ、常住人口の減少などが挙げられるという」

 

一線都市の消費が弱っている理由として次の点が上げられている。

1)住宅価格の下落=不動産バブル崩壊

2)リストラの影響=過剰生産による余波

3)消費分野における不合理な制限の多さ=農民戸籍の問題か

4)常住人口の減少=生活苦で地方都市へ逃避

 

(3)「そして記事は、楽観できない経済情勢を前に中国共産党機関紙『人民日報』が人々に自信を高めるよう呼び掛ける文章を5日連続で掲載したと述べた上で、文章には「転換の遅い一部伝統産業は苦しい時期にあるかもしれないが、状況が悪いからといって全体としての経済情勢を否定してはならない」と記されていたと伝えた」

 

人民日報は、読者へ「空元気」を付けているが、こういう中味のない記事を読者が信ずるであろうか。読者のほうが事態の深刻さを理解しており、冷笑しているであろう。

 

(4)「専門家は、こうした文章には安泰ムードを演出する狙いがあり、「中国経済を悲観的に語るな」という警告であると同時に、10月下旬の中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議(四中全会)を前に世論の流れを作る意味合いもあるとみているという」

 

プロパガンダは、これまで政治思想だけと思われたが、経済の楽観論宣撫も含まれていたのは、発見である。中国共産党が、いかに追い込まれているかを示している。