現代自動車の営業利益の半分以上が、米国市場から生み出されている。それだけに、トランプ大統領 から高い評価を得るべき、トランプ氏の就任式には100万ドル(約1億5300万円)を寄付したほどだ。誠心誠意、尽くしているのだが、現代自にとって次から次へと問題が起こっている。トランプ詣での効果は出ていないのだ。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月9日付)は、「現代自、トランプ氏から冷たい仕打ち 懐柔工作実らず」と題する記事を掲載した。
韓国の現代自動車グループの鄭義宣(チョン・ウィソン)会長(54)は、米国との結び付きを深める一連の積極的な動きでトランプ米政権を懐柔できると期待していた。これまでのところ、それは痛ましい誤算のように見える。
(1)「9月にジョージア州にある同社の工場で実施された移民当局の強制捜査では、300人以上の韓国人ホワイトカラー労働者が手錠と足かせを掛けられた。これは、世界第3位の自動車メーカーがドナルド・トランプ大統領を懐柔しようと繰り返し試みたものの、ほとんど成果を上げられなかった1年間の集大成だった。代わりに現代自動車は、混沌とした状態に陥ることが多い米政権の経済・移民政策の実施方法を正確に予測しようとすることの落とし穴を示す、特に注目度の高い企業例の一つとなった」
トランプ政権は予測不可能とされているが、現代自はトランプ大統領を懐柔しようと種々の試みを行なった。結果は、すべて「裏目」に出ている。いかに予測が困難かを示す実例となった。
(2)「鄭氏はここ数年、祖父が創業した現代自動車を米国の消費者により深く浸透させようとしてきた。かつて10年保証と低価格で評判を築いていた現代自動車とその姉妹会社の起亜は、デザイン、技術、品質の各賞を次々と獲得した。今では現代自動車の営業利益の半分以上が米国から生み出されている。この勢いを維持するため、鄭氏はトランプ氏が2024年11月に2期目の当選を果たした後、同氏を取り込むための企業の定石に従った。現代自動車はトランプ氏の就任式に100万ドル(約1億5300万円)を寄付した。数週間後、同社の高級セダンにちなんで名付けられたPGAトーナメントのプロアマ戦で、ドナルド・トランプ・ジュニア氏とその娘をトーリーパインズゴルフコースに招待した」
現代自動車はトランプ氏の就任式に100万ドル(約1億5300万円)を寄付した。数週間後、今度はトランプ・ジュニア氏とその娘をトーリーパインズゴルフコースに招待した。至れり尽くせりである。
(3)「関税導入を前に、現代自動車は3月、トランプ氏の2期目が終了するまでに実現する約210億ドルの対米投資を約束した。この投資により、鄭氏と同社幹部はホワイトハウスを訪問する機会を得た。トランプ氏はソーシャルメディアでこの投資を、自身の関税が「非常に強力に機能している」証拠と称賛した。しかし数日後にトランプ氏が世界の自動車輸出に25%の関税を課すと発表した際、現代自動車も例外ではなかった。現代自動車はこれにひるむことなく、米政府での好意を勝ち取るためにさらなる措置を講じた。4月には人気SUV(スポーツタイプ多目的車)の生産をメキシコにある起亜の工場からアラバマ州の既存工場に移すと発表し、米国内での部品調達比率を高めることも約束した」
現代自動車は関税導入前の3月、トランプ氏の2期目が終了するまでに実現する予定で、約210億ドルの対米投資を約束した。これによって、ホワイトハウスを訪問する機会を得た。しかし数日後、トランプ氏が世界の自動車輸出に25%の関税を課すと発表したのだ。現代自にとっては、空振りに終った。
(4)「韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が8月25日にホワイトハウスでトランプ氏と会談した数時間後、鄭氏も同席する中で、現代自動車はさらに50億ドルの対米投資を実施すると発表した。それから数日以内に、9月4日にジョージア州の現代自動車の施設で行われた移民摘発の捜索令状に署名がなされた。逮捕劇は、鄭氏の米国での最重要プロジェクトである76億ドル規模の製造複合施設「メタプラント」で展開された。これは米国史上、単一地点における最大規模の一斉摘発だった。約450人が拘束され、うち300人以上が韓国人だった」
8月25日、現代自動車はさらに50億ドルの対米投資を実施すると発表した。それから数日以内に、ジョージア州の現代自動車の施設で行われた移民摘発の捜索令状に署名がなされた。約450人が拘束され、うち300人以上が韓国人だった。トランプ氏は、現代自へ何らの配慮も行なわなかったのだ。
(5)「米大統領選のわずか数日後、鄭氏はスペイン生まれのホセ・ムニョス氏を現代自動車の最高経営責任者(CEO)に起用した。韓国人以外が同社のCEOに就くのはこれが初めてだった。この人事は「パスポートより実績」の時代を切り開きたいという鄭氏の意欲を明確に示すものだった。日産自動車でカルロス・ゴーン氏の右腕を務め、現代自動車の米国事業を担当していたムニョス氏には世界的な知名度があった。この人事はまた、現代自動車のビジネスにとって米国の重要性が高まっていることも反映していた」
鄭氏は、スペイン生まれのホセ・ムニョス氏を現代自動車の最高経営責任者(CEO)に起用した。米国市場を重視する姿勢が痛いほど伝わって来る。


コメント
コメントする