あじさいのたまご
   

自公両党首脳が10日午後、自民党の政治資金問題で最後の調整を行なう。公明党内部では、連立離脱論も強く予断を許さない状況だ。自民党は、選挙で公明党の協力を受けている。仮に、自公連立が「破談」となり、公明党が選挙協力を打ち切れば、自民党の議席2割が消えるという試算も出てきた。自民党にとっては、まさに「剣が峰」となろう。

 

『日本経済新聞 電子版』(10月10日付)は、「公明党の選挙協力なければ自民2割落選 衆議院選挙の小選挙区で試算」と題する記事を掲載した。

 

自民、公明両党の連立政権を継続させる協議が収拾しない。公明党は自民党に「政治とカネ」の問題へのけじめを求める。両党の溝は深いが、連立の解消に容易に踏み出せないのは四半世紀におよぶ国政選挙での協力関係を捨てきれないためだ。

 

(1)「公明党は支持母体、創価学会の組織票を持つ。衆院選は大半の小選挙区で候補者を立てず、創価学会の会員らに自民党候補への投票を呼びかける。公明党が擁立する小選挙区は逆に自民党から支援を受ける。会員の高齢化などに伴い集票力に陰りがみられる。それでも1小選挙区あたりの「公明票」は2万票前後とされる。自民党と野党が接戦の場合、公明票が入り自民党が競り勝つ例は多い。2024年衆院選の結果をもとに公明票の力をシミュレーションした。共同通信による出口調査で、小選挙区ごとの政党支持率がわかる。有効投票数に公明党の支持率をかけ、公明票を試算した」

 

公明票は、1小選挙区あたり2万票前後とされる。自民党と野党が接戦の場合、公明票が入り自民党が競り勝つ例が多い。自民党候補が当落線上にある場合、公明票が頼りだ。

 

(2)「例えば北海道6区は、21万人あまりが投票し、出口調査で回答者の5%が公明党支持と答えた。公明票はおよそ1万票になる。この全体が自民党候補に投票したと仮定する。実際の結果は、自民党の東国幹氏が10万票ほど、立憲民主党の西川将人氏が9.4万票をそれぞれ獲得した。公明党が協力しなかったら東氏の得票が1万票減り、西川氏が上回る結果となる」

 

北海道6区は、自民党候補は公明票によって「救われた」好例である。

 

(3)「24年衆院選で全国289小選挙区のうち、自民党は132で勝利した。シミュレーション上、公明票が離れた場合、2割の25区で自民党候補が2位候補の票数を下回る。このうち20区は立民の候補が自民党を追い抜く。公明票が野党に流れれば、逆転の例はさらに増える」

 

24年衆院選で全国289小選挙区の場合、公明票が自民候補支持を取り止めれば、2割の25区で自民党候補が落選する。代わって、立民候補が当選するという逆転現象が起こる。

 

(4)「公明党が、連立を離脱し選挙協力を取りやめるシナリオでは、比例代表の獲得議席数が変わらないとすると自民党166議席、立民168議席となる。自立が比較第1党を争う展開になる。協力の解消は公明党にも打撃になるとみられる。公明党は24年衆院選で11小選挙区に候補を擁立し、4勝しかできなかった。連立を離脱すれば、この4選挙区にも自民党は候補を立てると予想される。公明党の小選挙区勝利は絶望的になる」

 

公明党が、連立を離脱し選挙協力を取りやめると、自民党166議席、立民168議席となる。この試算では、比例代表の獲得議席数が変わらないという前提だ。公明党が連立を離脱すれば、自民党の小選挙区勝利は絶望的になる。

 

(5)「公明党は、小選挙区で自民を支援する見返りに、比例で自民党支持者が公明党に投票するよう相互の協力を呼びかけてきた。自民党支持層の一部は比例で公明党に投票してきた。比例で、公明党に投じる自民党支持層の票がなくなるシミュレーションもした。公明党の比例の議席が減るほどの影響はなかった。ただ、選挙運動を自公が合同ですることによる活動上のメリットの低下は避けられない」

 

比例で、公明党に投じる自民党支持層の票がなくなる場合、公明党比例の議席が減るほどの影響はなかった。

 

(6)「自民党内には公明票の力をかつてほど感じないという見方もある。公明党からは「『げたの雪』といわれ我慢してきた。自民党の政治資金問題でわりを食った」という声が出る。自公それぞれの損得勘定も連立協議の進展にからむ。公明党の赤羽一嘉中央幹事会会長は9日、連立を離脱した場合でも選挙協力は「基本的には人物本位だ」と記者団に語った。自公が、選挙協力をやめた実例は地方政治のレベルで過去にあった。17年に自公は東京都の都政の運営で対立し、夏の都議選で公明党が小池百合子知事の率いる都民ファーストの会についた。自民党は惨敗を喫した」

 

自公両党内には、互いに相手党への不満を抱えている。これを理由に連立を解消すれば、双方に大きな影響が出ることはまちがいない。どこで折り合うのか。あるいは離脱か。自公連立は、最大の危機を迎えている。