中国は、大量のミサイルや無人機を同時に発射する「飽和攻撃」を得意とする物量作戦だ。これに対して台湾は、イスラエル型アイアンドーム採用(防御力90%)を採用すると同時に、AI(人工知能)によるリアルタイム識別と、無人機・無人艇による自律迎撃を組み合わせて反撃する。こうしたきめ細かい防衛網で、中国の攻撃の波を分散・吸収する能力を高める方針を固める。中国の軍事的威嚇を跳ね返す戦略を発表した。
『日本経済新聞 電子版』(10月10日付)は、「新防空システム『台湾の盾』構想 頼政権表明、イスラエル参考に」と題する記事を掲載した
台湾で10日、双十節(建国記念日に相当)の式典が開かれた。頼清徳(ライ・チンドォー)政権は「台湾の盾」と呼ぶ新たな防空システム構想を発表した。中国のミサイル攻撃などの脅威に対応するのが狙い。イスラエルのミサイル防衛システム「アイアンドーム」を参考に人工知能(AI)を活用するという。
(1)「台湾総統の双十節での演説は、今後1年間の施政方針に相当するとみられている。頼氏は中国の軍事的威嚇に懸念を示し「平和は実力によって実現しなくてはならない」と訴えた。「台湾の盾の開発を加速し、多層防御、高度な警戒態勢、効果的な迎撃能力を備えた防空システムを構築する」と表明した。台湾の防空システムは自前で開発した高度70キロメートルを飛ぶ弾道ミサイルを迎撃できる「強弓」や米国製の地上から迎え撃つ地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)などを組み合わせて大きく3層構造になっている」
アイアンドームは、イスラエルが2011年に運用を開始した短距離ミサイル迎撃システムである。90%以上の迎撃成功率を誇るが、100%の迎撃能力ではない。この「取りこぼし部分」は、AIによって補足するという「パーフェクト防衛」を目指している。台湾は、最先端半導体製造国であるから、中国を凌ぐAIによって中国軍の攻撃をかわす戦術であろう。
AIを活用するのは、リアルタイムで脅威を識別し、限られた資源で最大の防衛効果を得る点で有効である。台湾の国防白書でも、AIや無人機を活用した「非対称戦略」が強調されている。
台湾が、アイアンドームの思想とAIを組み合わせた複合防衛体制を構築すれば、中国にとって台湾攻略は次のような点から格段に難しくなるとされている。
1)飽和攻撃への対抗力強化
中国は大量のミサイルや無人機を同時に発射する「飽和攻撃」を得意とする。台湾は、AIによるリアルタイムの識別と、無人機・無人艇による自律迎撃を組み合わせることで、攻撃の波を分散・吸収する能力を高めている。
2)非対称戦略の深化
台湾は「小型・機動性・自爆型」の兵器を大量に配備し、コストを抑えつつ高い防衛効果を発揮する非対称戦略を採用している。これは、中国の高価な兵器体系に対して、少数精鋭で対抗する知恵の戦術とされている。
3)攻撃と偵察の一体化
台湾の無人機は、偵察と攻撃を一体化した作戦を遂行できるよう進化しており、敵の動きをリアルタイムで把握し、即座に反撃する能力が向上している。
(2)「『台湾の盾』は、米国の新しい軍事技術やAIを取り入れながらミサイルや無人機、戦闘機などの複合的な脅威に対処できる体系に組み替えるとみられる。頼氏はトランプ米政権との関係を立て直すと説明した。「米国の対台湾貿易赤字の解消に努める」と強調し、トランプ政権に秋波を送った。「台湾と米国の産業協力を深化させる」と話した。台湾のハイテク工場などの米国進出を後押しする考えを示したとみられる。「関税交渉に積極的に取り組み、合理的な関税率の実現をめざす」とも語った。トランプ政権は台湾に20%の関税を暫定的に課している。日本や韓国よりも高く、台湾の経済界では不満がくすぶっている。
台湾防衛の最大の後ろ盾は、米国である。それだけに対米経済関係では、最大の注意を払って摩擦防止に努めなければならない。トランプ政権は、台湾に20%の関税を暫定的に課している。日本や韓国よりも高く、台湾の経済界では不満がくすぶっているが、我慢するほかない。
(3)「中国に対しては、「武力や威圧による台湾海峡の現状変更を断念し、ともにインド太平洋地域の平和と安定を守るように期待する」と呼びかけた。1年前は「中国は台湾を代表する権利がない」と対中強硬姿勢を鮮明にしていた。秋に見込まれる米中首脳会談を前に、中国を刺激しないように抑制した可能性がある」
台湾が、台湾海峡という「天然の要塞」を背景にして、きめ細かい防衛網を敷いている。これに対して中国は、空母で立ち向かう戦術が何とも時代遅れにみえるのだ。最後は、AIの技術レベルが勝敗のカギを握る。台湾は、世界最高の先端半導体技術を持っている以上、これに挑む中国の半導体技術水準が問われるであろう。


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