海外投資家の間では、公明党による自民党との連立解消を受け、日本株・国債・日本円の「トリプル安」を懸念する声があがっている。高市早苗氏の総裁選勝利のサプライズから1週間足らず。再び予想外のシナリオを描き出した日本の政治情勢に海外勢も慌てている。
『日本経済新聞 電子版』(10月11日付)は、「公明党の連立離脱、慌てる海外勢 日本の『トリプル安』警戒」と題する記事を掲載した。
ここからはトリプル安かもしれない――。米系金融の運用部門幹部は公明党の連立離脱の一報を受けた後、急いでトレードのポジションを整理した。「強い女性リーダー」との期待が集まっていただけに、連休明けの日本株は売りが膨らみ、円安トレンドも止まらないとの声があがる。野党との調整を乗り切るため補正予算では一段と財政拡張的なものになる可能性が高く、日本国債も長い年限ほど売られるとの予想が多い。
(1)「このところ日本市場は世界マネーの関心をさらっていた。4日の自民党総裁選直前までは外資系証券会社は軒並み小泉進次郎農相が優勢との情報を発信していた。高市氏勝利という結果に虚をつかれ、焦って株高・円安ポジションに傾けたばかりだった。そこに公明党の連立離脱で「高市首相」が誕生しないシナリオが浮上した。「何が起こっているのか」――。公明党の連立離脱のニュースが駆け巡ったロンドン時間の10日朝、みずほ銀行欧州資金部の中島将行ストラテジストは海外投資家の問い合わせに追われた」
日本の金融市場は、このところ大揺れの連続だ。高市氏の自民党総裁就任で「株高・円安」を演じたが、今度は公明党離脱で自民党政権に赤信号である。
(2)「実は、海外勢はこのところの日本株の上昇を素直に喜んでいない。日本株高と円安が同時に進み、米ドルなど海外通貨からみれば「日本の価値」が上昇していないためだ。大手運用会社のロンドン拠点でマルチアセット運用を手掛ける担当者は9日夕に「為替をヘッジしていないので私のポートフォリオの日本株はマイナスだ」と苦笑いしていた。実際に9月末比のドルベースの東証株価指数(TOPIX)は横ばいで、9月以降に参入した投資家は利益を得られていない。高市氏の総裁選でのサプライズ勝利前から比較するとマイナスに沈む」
海外投資家は、日本株高と円安が同時に進み、米ドルなど海外通貨からみれば「日本の価値」が上昇していないためだ。さらに、野党政権が誕生する可能性まで出てきて、情報収集に躍起となっている。
(3)「『日本もフランスのようになってきた』。欧州投資家は目下、政治空白が続くフランスの状況を注視している。フランスはリーダーの相次ぐ交代で政治空白が生まれ、国債が格下げとなり、金利は上昇傾向にある。ロンドンを拠点とする英ケイガン・キャピタルの中川成久最高投資責任者(CIO)は立憲民主党、日本維新の会、国民民主党が首相指名選挙で候補者を一本化して政権交代を実現させた場合、「市場は国民民主が訴える消費税5%までの引き下げを織り込む。金利には上昇圧力がかかる」とみる。政治的な不透明感を抱きながら減税や財政支出へのポピュリスト的な支持が広がる世界的な流れに日本市場も加わる懸念が急浮上する」
野党政権が生まれた場合、日本市場は減税や財政支出へのポピュリスト的な支持が広がるのでないか。日本も、世界的な流れに加わるのでは、という警戒論が出ている。日本市場への見方は一変する。もう、ちやほやしなくなるだろう。
(4)「英国人の市場関係者は、「(英サッチャー元首相の)『鉄の女』ではなく、浮かび上がらない『鉛の風船』だな」と高市新総裁のもがく様子をこう皮肉った。鉛の風船は失敗を示す慣用句だ。英国でも支持率低下と財政余地が乏しくなっている英スターマー政権が11月下旬に予算案を公表する。先進国市場の多くが共鳴するように政治と財政問題を抱える。トランプ氏が対中政策で再び強硬化の姿勢を見せた米国ではダウ工業株30種平均が前日比で一時800ドル安となった。再び米中対立激化への懸念が市場に広がっている。世界の金融市場が一斉に緊張感を高める秋を迎えている」
英国では、高市氏への期待感が消えかかっている。「第二のサッチャー」と期待され始めたが、失速懸念である。高市氏が、「公明党嫌い」の麻生氏を政権のご意見番に据えた結果が、予期せぬ波紋を引き起している。


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