中国によるレアアース(希土類)材料への新たな規制は、ほぼ前例のない輸出管理措置となり、世界経済を混乱させる可能性がある。中国政府は、貿易交渉での影響力を高め、トランプ米政権に対応を迫る圧力を強めている。中国商務省が9日に発表した今回の規制は、半導体サプライチェーン(供給網)を脅かすことから、米中貿易摩擦の激化と見なされている。半導体は経済の生命線であり、携帯電話、コンピューターのほか、人工知能(AI)モデルの訓練に必要なデータセンターを動かしている。この規制は、自動車、太陽光パネル、半導体製造装置などにも影響を及ぼし、他国が自国産業を支援する能力を制限する。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月10日付)は、「中国のレアアース規制強化、貿易協議と世界経済を脅かす」と題する記事を掲載した。
新規則の下では、中国から調達した特定のレアアース材料が製品価値の0.1%以上を占める商品を販売する世界の企業は、中国政府の許可を得なければならない。業界専門家は、テクノロジー企業が自社の半導体、それらを製造するのに必要な装置、その他の部品が0.1%の基準値を下回っていることを証明するのは極めて困難との見方を示した。
(1)「先ごろホワイトハウスでのAI政策顧問の役職を離れ、シンクタンクの米国イノベーション財団のシニアフェローとなったディーン・ボール氏は「これらのレアアース鉱物とそれを精製する技術こそが現代文明の基盤だ」と指摘。AIへの設備投資が経済にとっていかに重要かを考えると、この規則が積極的に実施されれば米国の景気後退を引き起こす可能性があると付け加えた」
トランプ氏が、中国へ100%関税を追加すると発表した理由は、中国のレアアース輸出規制が極めて厳しいことへの反応である。中国は、実現不可能なレアアース輸出規制を持ち出した背景には、中国経済の行き詰まり打開という「賭け」が隠されている。「外交は内政を反映する」という道筋があるからだ。
(2)「米国をはじめとする各国はデータセンターに数千億ドルを投じており、AIを経済の主要なエンジンとしている。中国がAIを掌握すれば、AI競争で追い付き、世界秩序を覆す可能性がある、と専門家は述べた。シンクタンクのシルバーアド・ポリシー・アクセラレーターの共同創設者であるドミトリー・アルペロビッチ氏は「これは経済的な核戦争に等しい――米国のAI産業を破壊する意図がある」と指摘。新規制導入について、今後数週間以内にドナルド・トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が韓国で貿易協議継続に向けた会談を行う可能性がある中での「脅迫戦術」と呼び、中国がこの規則を完全に実施することはないと考えていると語った」
今回の中国によるレアアース輸出規制は、米国にとって「経済的な核戦争に等しい」脅迫戦術としている。トランプ氏が対中100%関税を持ち出したのは、中国案が余りにも非常識であることへの米国の怒りを示している。
(3)「トランプ氏は閣議で、スコット・ベッセント財務長官とハワード・ラトニック商務長官が対応策を検討すると述べた。「われわれは中国から大量のレアアースを輸入しているが、それをやめざるを得なくなるかもしれない」とした。ホワイトハウス当局者は、この規則は米国への事前通知なしに発表され、世界の技術サプライチェーンを支配しようとする取り組みのようだと述べた」
トランプ氏は、怒りが沸点に達している。中国が、米国への事前通知なしに発表したからだ。中国も相当、切羽詰まった経済状況へ追い込まれている証拠だ。
(4)「中国は今年に入ってからこれまで貿易協議で優位性を得るためにレアアースを利用してきた。4月の輸出規制はサプライチェーンに衝撃を与え、6月に発表された貿易休戦につながった。元米政権当局者と専門家は、米国が「関税措置の追加」「中国への欧米製半導体製造装置の供給停止」「国内のレアアース生産能力拡大の加速」といった対応を取る可能性があると示唆した。一部のアナリストはトランプ氏が強硬な反撃に出ると予想している」
米国が、「中国へ強硬な反撃に出ると予想している」としている。100%関税復活が、その第一弾となった。
(5)「中国政府の意思決定プロセスに詳しい関係者によると、今回の決定は中国のテック企業を標的とした最近の米国の輸出制限措置への報復として位置づけられているが、実際には計算されたパワープレーだ。中国は、合意を急いでいると見なしているトランプ氏に対する影響力を強化し、関税と技術規制に関する譲歩を引き出そうとしているという。テック企業を代表するロビー会社モニュメント・アドボカシーのジョセフ・ホーファー最高AI責任者は、「これは米国のAI企業にとって真の脆弱性だ」と指摘した」
中国は、トランプ氏から関税と技術規制に関する譲歩を引き出そうとしているとしている。中国も背に腹はかえられない「弱み」を抱えているのだ。


コメント
コメントする