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公明党の連立離脱表明を受け、次期首相指名選挙の行方が急速に不透明感を増している。立憲民主党、日本維新の会、国民民主党の3党がまとまれば自民党の高市早苗総裁の首相就任を阻み、政権交代が起きる可能性が出てきたためだ。20日か21日で調整が進む臨時国会召集をにらみ、各党の思惑が交錯している。高市氏は、政治とカネ問題解決が首相就任の最大条件になった。

 

『ブルームバーグ』(10月12日付)は、「連立崩壊の影響とは、首相の座を目指す高市氏の前途は多難」と題する記事を掲載した。

 

日本の政界は、かつてない局面に突入した。与党・自民党の連立政権から公明党が離脱し、26年にわたって政権の安定を支えてきた枠組みに終止符が打たれた。これを受け、自民党初の女性総裁として10月初旬に選出された高市早苗氏が、重大な岐路に立たされている。日本初の女性首相として歴史を塗り替える可能性もあれば、戦後で最も脆弱な政権となるリスクもあり、首相就任自体を逃す可能性すらある。

 

(1)「公明党は10日、突如として連立離脱を表明した。決裂の引き金となったのは、自民党による政治資金スキャンダルへの対応を巡る不満だった。公明党は自民党が国民の信頼回復に十分な措置を講じていないと批判。さらに、高市早苗総裁が、スキャンダルに関与した議員をこれ以上処分しないと明言したことで、状況は一段と悪化した。分裂直前の緊迫した会談では、公明党の斉藤鉄夫代表が高市氏に対し、企業・団体献金の規制強化の提案を支持するかどうかを問いただした。高市氏が判断の猶予を求めると、斉藤氏はその場で連立離脱を宣言。四半世紀続いた連立政権は、こうして幕を閉じた」

 

高市氏は、「保守回帰」というムードに乗ったが、肝心の「政治とカネ」問題では無頓着であった。党内の有力人脈に全面的に頼る「主体性のなさ」が災いした。繊細な神経を持つべきである。

 

(2)「高市氏が、再協議を望んだにもかかわらず、公明党の斉藤代表は交渉継続を拒否。今後の選挙で自民党候補を支援せず、高市氏の首相就任にも協力しない姿勢を示した。ただ、個別の政策に関しては協力の余地を残している。これにより、自民党は効果的な政権運営という点で厳しい課題に直面している。自公連立はすでに衆参両院で過半数を失っており、今や国会ははるかに不安定な場となった。高市氏にとっても、法案の成立や予算案の承認、改革の推進は一段と困難になる。自民党が衆議院で過半数を確保するには、複数の野党の協力が不可欠だ。衆議院は参議院での否決を覆せる強い権限を持つため、同院での多数確保は極めて重要となる」

 

自民党は、日本政治の骨格を形成している。ここが、グラグラしていることは、日本政治の漂流を意味する。高市氏は、個人のメンツを捨てて、日本政治の骨格を守るにはどうするか。早急に「政治とカネ」問題に決着を付けることだ。見切り発車もやむを得ない

 

(3)「現在、自民党は衆議院で過半数に37議席、参議院で25議席が不足しており、公明党の協力が得られない中では、日本維新の会と国民民主党の両党の支援がなければ国会運営が立ち行かない状況だ。維新は衆議院に35議席、参議院に19議席を保有。国民民主は衆議院に27議席、参議院に25議席を持っている。野党勢力が分裂していることから、国会での首相指名選挙では自民党総裁である高市氏が優位に立つとみられている。首相に選出されるには絶対過半数は必要ない。いずれの候補も過半数に届かない場合は、上位2人による決選投票となる。この仕組みの下では、最大勢力である自民党の候補が勝利する可能性が高い」

 

核のない多党制政治は、烏合の衆になりかねない。こういう混乱を回避するには、自民党が覚醒することだ。自民党には、これまで政権を担ってきた責務がある。ここで「核なき」多党制に巻き込まれれば、日本の将来は彷徨して大きなコストを払わされる。

 

(4)「ただし、政界の勢力図が流動的である今、高市氏が確実に勝てるとは限らない。国民民主党の玉木雄一郎代表が「台風の目」になる可能性もある。国民民主党は比較的小規模な政党だが、公明党が連立を離脱する前から、最大野党の立憲民主党が玉木氏を支持する可能性を示唆していた。玉木氏は、公明党に政策面での共通点を既にアピールしている。さらに、立憲民主と国民民主はかつて同じ政党に属していた経緯があり、その歴史的背景も両党の連携を現実的な選択肢とする要因となり得る」

 

「つぎはぎだらけ」の数あわせによる政権奪取工作は後々、混乱の種を作るようなものである。日本は、細川内閣(1993~94年)以降でそういう手痛い経験を積んでいる。この歴史を振り返ると、自民党が政治とカネでクリーンになることが、日本を救う唯一の道であることは明白だ。

 

 (5)「日本は今、政治的空白の中で国民の生活費高騰への不満が高まるという、極めて厳しい局面にある。インフレ対策として減税を行うべきかを巡る議論が過熱しているが、人気の高いこの政策は政府財政にさらなる圧力をかけることになる。仮に高市氏が首相に就任しても、分裂した国会では経済対策の実行が難航する可能性が高い。追加の財政支出には補正予算が必要であり、これは国会の承認を要する。外交面では、状況はかつてないほど切迫している。中国、ロシア、北朝鮮といった挑発的な国に囲まれ、日本の安全保障環境は戦後最も不安定だとされる」

 

政権基盤は、強固でなければならない。高市氏に政治とカネで決断を下せば可能になる。見送れば、高市氏の首相就任は遠くなるだろう。