つい先頃まで、経営危機説が大々的に報じられた米国インテルが、2ナノ半導体量産化に成功したという情報が飛び出した。耳を疑うニュースである。それほどの「大技術」が着々と進んでいたならば、経営危機などと噂が飛ぶはずもない。米国政府が、経営サポートのために、大株主トップに名を連ねることもなかったであろう。
『東亜日報』(10月14日付)は、「インテル、世界初の2ナノ量産 TSMC・三星を一歩先行と題する記事を掲載した。
米半導体大手インテルが、世界で初めて2ナノメートル(nm、1nm=10億分の1メートル)級の「18A」工程の量産に入った。世界の半導体業界が次世代超微細工程の競争に突入する中、インテルが三星(サムスン)電子と台湾のTSMCを抑えて、2ナノ時代の幕を開けた。
(1)「インテルは9日(現地時間)、18A工程を適用した次世代AIノートパソコン向けプロセッサー「パンサー・レイク」の量産を開始したと発表した。パンサー・レイクは、米アリゾナ州オコティロ・キャンパス内の最新生産施設「Fab
52」で製造される。インテルは年内にパンサー・レイクの初製品を出荷し、来年1月から順次市場に供給する計画だ」
インテルによれば、次世代AIノートPC向けプロセッサー『パンサーレイク』の量産を開始するとしている。使用される「18A工程」は、実質的に1.8nm規模の微細回路幅を持ち、性能と電力効率を大幅に向上させる技術という。
(2)「18A工程は、約1.8nm規模の微細回路幅を実現した最先端技術で、回路が細かいほど半導体の演算効率が高まり、電力消費が抑えられる。インテルによると、18Aは従来世代比で1ワット当たりの性能を最大15%向上させ、チップ密度を30%改善したという。次世代工程である2nmはAI半導体などの高性能チップに適用され、今後の半導体主導権を左右するコア技術とされる」
確かにインテルは、1.8ナノ半導体製造に成功したのであろうが、問題は歩留まり率である。2025年夏時点での歩留まり率は、わずか5〜10%程度と報じられている。これは、製造されたチップのうち90%以上が不良品ということを意味し、採算ライン(70〜80%)には遠く及ばない状態だ。インテルのCFOも、「現時点の良率では利益を出すのは難しい」と認めており、2025年末までに改善を目指すとしている。こういう内情とすれば、この記事は「過大評価」という結果になろう。
インテルは、「量産初期段階であり、歩留まりは時間とともに改善する」としている。2026年までは、本格量産が難しいとの見方もあるほどだ。歩留まりが改善しなければ、採算割れでの出荷や顧客離れのリスクが高まる。サムスンが、同様の事情で苦戦している。
(3)「2nmの量産は、インテルが世界初。現在、三星電子とTSMCは3nm工程を量産中で、両社とも年内に2nmの量産を始める予定だ。インテルは2021年にファウンドリ事業への再参入を宣言して以来、18A(1.8nm)や14A(1.4nm)など超微細工程の開発に大規模な投資を続けてきた。業界では、今回の2nmの量産に続き、インテルが歩留まりと顧客確保力を実証できれば、TSMCや三星電子にとって脅威となるとの見方も出ている」
インテルが発表した2ナノ(18A)工程の量産は、技術的には世界初である。だが、業界では「安定した歩留まりとそれによる顧客確保を実証できることが鍵」としている。わずか5〜10%程度の歩留まり率では、商業的に成立する水準に達していないのだ。このレベルでは、TSMCやサムスンにとって脅威となるかどうか、不明である。つまり、「量産開始」=「安定供給」ではないという点が、報道の見出しと実態の間にある重要なギャップだ。


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