米政府の輸入関税コストは、主に米国の企業と消費者が負担していることがこれまでの分析で判明した。トランプ大統領の主張とは正反対で、インフレ退治を目指す米連邦準備理事会(FRB)にとって悩ましい事態をもたらしている。トランプ氏が、保護関税措置の対価を支払うのは外国であり、外国の輸出業者は米国という世界最大の消費市場で足場を失いたくないので自らがコストを吸収することになると「予言」したのは有名な話だ。このトランプ予言は、取消される時期を迎えている。
『ブルームバーグ』(10月14日付)は、「トランプ関税の55%を米消費者が負担、物価上昇見通し-ゴールドマン」と題する記事を掲載した。
トランプ米大統領による関税措置のコストの半分以上を、米国民が負担する見通しだと、ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストは指摘した。企業による値上げが進む見込みだという。
(1)「米消費者は、年末までに関税コストの55%を負担する可能性が高く、米企業の負担分は22%にとどまると、ゴールドマンは予想。国外の輸出業者は価格を引き下げて関税分の18%を吸収し、残り5%は回避されるとしている。価格転嫁には時間がかかるため、「現時点では米企業のコスト負担分がより大きいとみられる」とゴールドマンのエルシー・ペン、デービッド・メリクル両エコノミストは12日付けの顧客向けリポートに記述。「最近発効した、また今後発効する関税が、今年初めに導入された関税と同様の影響を価格に及ぼす場合、最終的には米国の消費者が関税コストの55%を負担することになる」と続けた」
関税コストの引上げは、次のように負担が分散される。
消費者 55%
米企業 22%
国外企業 18%
残り 5%(回避)
出所:ゴールドマン・サックス
これまでは、国内業者が値上げに慎重であったが、それも限界に来たので年末までに大幅な引上げが行なわれると予測している。
(2)「米関税措置は今年これまでに、個人消費支出(PCE)コア価格指数を0.44ポイント押し上げており、12月までには同指数を3%に押し上げる見通しだと、同エコノミストらは分析した。トランプ大統領は、貿易赤字の縮小と米国内製造業の促進を目的に、関税措置や貿易制限を相次いで打ち出し、世界貿易の構図を一変させた。トランプ氏や政権当局者は、関税を負担するのは貿易相手国だと主張してきたが、実際には米輸入業者が税関・国境警備局(CBP)に関税を支払っている。企業がコストを転嫁すれば、消費者は物価上昇に直面することになる。一方、国外企業は市場シェアを維持するために価格を引き下げ、関税分を自ら吸収している」
12月までに個人消費支出(PCE)コア価格指数が、3%押上げられるという推計(現在は0.44ポイント)である。これは、10~12月に目立った物価上昇を予告するものだ。
(3)「トランプ氏は8月、ゴールドマンが市場と消費者物価が受ける関税の影響を「読み違えた」と自身のSNSで主張し、批判の矛先をデービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)に向けていた。トランプ氏はなぜゴールドマンに不満を抱いているのか、具体的に触れなかったが、同社のエコノミストらは当時のリポートで、トランプ関税が及ぼす消費者物価への影響について、顕在化は始まったばかりだと指摘していた。ゴールドマンの今回のリポートには、トランプ氏が中国に対して100%の追加関税を課し、すべての重要ソフトウエアに対中輸出規制を導入すると最近示唆した動きは含まれていない。「対中関税率に変更が生じるとは想定していないが、ここ数日の動向は大きなリスクを示唆している」と両エコノミストは記した」
米国で新車の平均価格が9月、初めて5万ドル(約760万円)を突破した。高価格帯の電気自動車(EV)や高級車の販売急増が押し上げた。自動車購入情報サイトを運営するケリー・ブルーブックが13日に公表した調査結果によると、9月の新車平均購入価格は前年同月比3.6%上昇の5万80ドルだった。最大7500ドルのEV向け税額控除廃止前の駆け込み需要でEV販売が過去最高を記録したことが背景にある。


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