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ロシアのドミトリエフ大統領特別代表(外国投資・経済協力担当)は16日、ロシアと米国の国境線があるベーリング海峡にトンネル建設案をX(旧ツイッター)で提案した。両国の大統領の姓から「プーチントランプ」トンネルと称し、両国の団結の象徴となると主張した。トランプ米大統領は17日、ドミトリエフ氏の提案について「面白い。考える必要がある」と表明した。

 

ロシアのウクライナ侵攻をめぐって、米ロ首脳はこれから停戦問題を議論するという時期に、米ロを結ぶベーリング海峡横断鉄道トンネル建設案が、ロシアから提案された狙いはなにか。先ず、その意図に関心を呼ぶ。しかもトンネル名称が、プーチンートランプとしている。トランプ氏の名称がつくだけに、ウクライナ問題で米国を懐柔する狙いもありそうだ。

 

『ロイター』(10月19日付)は、「米ロ結ぶ『プーチントランプ』トンネルをベーリング海峡に、ロシア特使が提案」と題する記事を掲載した。

 

ロシア政府系ファンドの責任者で国際経済投資協力を担当するキリル・ドミトリエフ特使は、ロシア極東と米アラスカ州を結ぶベーリング海峡横断鉄道トンネルの建設を提案した。トンネルの名称は「プーチントランプ」トンネル。米ロの「団結の象徴」になるとし、米起業家のイーロン・マスク氏が設立したトンネル掘削会社の参画を呼びかけた。

 

(1)「ドミトリエフ氏は政府系ファンドのロシア直接投資基金(RDIF)の総裁を務め、プーチン大統領が特使に任命。プーチン氏が16日にトランプ米大統領と電話会談を行った後にトンネル建設構想を発表した。ロシアと「国際パートナー」が総額80億ドルを投じ、全長112キロのトンネルを8年未満で建設するとしている。ベーリング海峡はロシア極東のチュクチ自治管区と米国のアラスカ州との間にあり、最も狭い地点の幅は82キロ。同海峡を通してロシアと米国を結ぶ構想は少なくとも150年前から存在していた」

 

ロシア極東と米アラスカ州を結ぶ全長112キロの鉄道トンネル建設案である。総額80億ドル、8年以内の完成を目指すとされる。冷戦期にも、「ケネディフルシチョフ橋」構想が浮上したことがあり、今回の提案はその延長線上にあると指摘されている。

 

技術的には可能とされている。ベーリング海峡の水深は比較的浅く、ディアミード諸島を中継点にすれば距離も短縮できる。しかし、経済的・政治的な障壁は非常に高いものがある。建設費は過去の試算では1050億ドルとも言われてきた。今回の80億ドル案はかなり楽観的である。外交的には、米ロ関係が依然として緊張状態にあることや、費用対効果が不透明である。ただ、北極圏の資源開発や物流の利点が最近、大きな関心を高めている。

 

(2)「ドミトリエフ氏は、冷戦時代にベーリング海峡に「ケネディフルシチョフ」橋を建設する計画が浮上したことがあるとした上で、当時の想定ルートのスケッチと、今回の「プーチントランプ」トンネルの想定ルートが記された図を示し、「ロシアと米国を結ぶときが来た」と表明。実現すれば米国の大手エネルギー企業がロシアの北極圏プロジェクトに参画できると示唆した。また、マスク氏のトンネル掘削会社「ザ・ボーリング・カンパニー(The Boring Company)」が建設に関わることもできるとし、マスク氏宛てにXに「共に未来を築こう」と投稿した」

 

ベーリング海峡を横断する構想は、実は150年以上前から存在していたという。必要性があったことは事実である。この構想の裏には、ロシアの北極圏資源開発戦略が深く関わっている。ロシアは、北極海沿岸に豊富な石油・天然ガス資源を抱えており、ヤマルLNGなどのプロジェクトを通じて国際的な輸出ルートの確保を目指している。

 

ロシアは、欧米の制裁下でも北極圏開発を進めている。米国とトンネルによって直接接続が可能になれば、大きな経済的メリットを受けられる。これには、ロシアのウクライナ侵攻停止が大前提になる。かつ、米ロ外交の復活によって、米国がロシアを引き寄せ中国へ共同戦線を張るという思惑が実現できるか。米国は、地政学的視点からこのベーリング海峡鉄道トンネル建設案を検討しなければならない。