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今は中国が世界覇権握る

南鳥島のコストが最低位

日本100万トンで首位

中国の資源覇権確立過程

 

米中が、レアアース(希土類)の輸出をめぐり対立を深めている。10月に入って中国は、厳しい「レアアース輸出規制」を課したからだ。中国のレアアースが、わずかでも含まれている場合(0.1%)、世界のどこで製造された製品でも、中国が管轄権を主張できるというのだ。企業は、「製品の原材料・製造工程・流通経路を月次で中国政府に報告する義務を負う」としている。この企業とは、世界中で中国製レアアースを使用する企業すべてを含む。中国が、世界の「サプライチェーン管理」をするというのである。

 

中国は、これまで米国の相互関税に対して厳しく批判し、WTO(世界貿易機関)の自由貿易原則を守ると宣言してきた。その中国が、レアアース0.1%の含有で中国の管轄権を主張するのは、「過剰な域外適用」と見なされている。明らかに、自由貿易原則に反する行為である。世界各国が、反発するのは当然だ。

 

中国が、こういう「突飛」な規定を各国企業へ突きつけた理由は何か。中国経済が、米国の高関税によって苦境に立たされている事態を突破するため、米国を含む世界中へ刃を突きつけ規制を排除する狙いだ。中国の要求に対して、米国のほかにIMF(国際通貨基金)までが、危惧の声明を出している。

 

ベッセント米財務長官は10月15日、レアアース資源を武器化する中国に対抗するため、同盟国・友好国の協調態勢を構築したいとの考えを示した。「自由世界全体のサプライチェーン(供給網)と産業基盤にバズーカ砲を向けている」と非難したのだ。IMFのゲオルギエワ専務理事は17日、米国と中国がレアアースの輸出を規制しない合意に達することを期待しているとした。そのような制限がなされた場合、経済成長に「重大な影響」を与えると警告した。

 

今は中国が世界覇権握る

中国が、レアアース輸出で超強気の要求を突きつけた背景には、中国のレアアースの埋蔵量や生産の世界シェアが圧倒的に高い裏付けがあるからだ。中国は、レアアース採掘の70%、分離・精製の90%、磁石製造の93%と圧倒的なシェアを握っている。しかも、新規参入を阻止すべく価格も総じて低く抑えている。これは、欧米諸国が中国と競い合うことがいかに難しいかを浮き彫りにしている。中国は今後、長期にわたりレアアースの世界市場を支配し続ける強い意志をみせている。

 

だが、中国の見逃している重要な点は、今回のような「資源カルテル」が長期に続く保証がないという点だ。1970年代の二度にわたるオイル・ショックは、その生きた証拠である。供給管理による価格高騰は、新たな産油国を生み出す要因になる。米国も、石油ショック後に国内探査によって資源を再発見したのだ。戦後の米国は、国内需要の急増に対して供給が追いつかず、1947年には純輸入国に転落。 だが、2010年代以降はシェール革命で復活し、2020年に純輸出国へ転換した。生きた例が、ここにある。

 

レアアースは、名前から賦存国が限定されているイメージである。資源は、世界中に散在しているものの、採掘において環境破壊を引き起すので、主要国はレアアース開発を躊躇してきただけである。中国の場合は、それを甘受して開発した結果、世界最大のレアアース生産国になったのである。

 

実は、中国へレアアース製錬技術を教えた日本が、南鳥島海底6000メートルで一大レアアースの開発に取り組んでいる。採掘場所が「南海の孤島」であり、深海という悪条件でのレアアース泥掘削だ。情報社会の今日でも、ニュースにならない「見落とされた」存在である。だが、ノーベル科学賞授賞者を26人も輩出している日本だ。基礎研究に不足はなく、AI(人工知能)とロボットによって、着々と試掘に向っている。

 

26年1月から試験採掘が始まり、27年から操業開始の見込みである。そうなると、日本が世界最大のレアアース生産国になる。レアアース生産覇権国の交代だ。これによって、中国の「資源外交」を一挙に覆す可能性が出てきた。中国は、振り上げた拳の置き所に困る事態が想定されるのである。

 

南鳥島の深海で、レアアース泥を効率的かつ環境負荷を抑えて回収するための技術は、「閉鎖系二重管揚泥方式」と呼ばれる世界初の技術を採用する。レアアース泥を吸い上げる際に、環境破壊を抑制しつつ効率的に作業を進めるのは「神業」とされている。日本の技術陣が、これに挑戦しているのだ。

 

中国は、この技術に強い関心を持っている。中国が、「レアアース大国」日本の出現を阻止すべく、深海での掘削作業を中止させたいからだ。それには、「環境破壊」などの名目で国際的な批判を誘導し、日本の採掘事業を遅延・制限させる戦略を模索していると考えられる。このように、複雑な地政学的問題が絡んでいる。日本は、ISO国際標準に準拠した設計と環境モニタリング体制を構築し、国際的な承認を確保して万全を期している。中国の福島原発処理水排出にみせた執拗な反対が、南鳥島では起こさせない決意だ。

 

南鳥島のコストが最低位

南鳥島のレアアースは次のような規模である。現在の探索では、世界3位の約1600万トンのレアアース酸化物(REO)が埋蔵されている。探査は引き続き行なわれており、今後さらに増える可能性が示唆されている。

 

南鳥島のレアアース泥は、東京大学・加藤泰浩教授らの研究によると、中国の陸上鉱山の約20倍の濃度を持つ「超高濃度レアアース泥」とされている。この高品位が、深海6000メートルでの採掘コストを十分にカバーできると見込まれる理由だ。南鳥島のレアアース泥は、平均で0.5%のレアアース酸化物(REO)を含み、1トンの泥から約5kgのレアアースが抽出可能とされる。世界最高品位のレアアース泥とされる理由だ。(つづく)

 

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