米国が、ロシアのウクライナ侵攻を止めるべく、経済制裁を強化した。米国内の資産が凍結され、取引できなくなるという極めて大きい制裁である。米国が、侵略戦争を中止させる「本気度」を内外に明らかにした。
米財務省は22日、ロシアの石油最大手ロスネフチと2位のルクオイルのほかに、前記2社が株式の50%以上を所有する事業体もすべて対象になる。英政府によると、ロスネフチはロシアの石油生産全体の半分ほどを担っている。発表から1日以内に、インドの石油精製業者はロシアからの石油流入を削減する措置をとり、中国の国有石油会社は少なくとも一時的にロシア産石油の購入を停止した。早くも、効果が出てきた。
制裁目的は、ロシアの戦費調達につながるエネルギー収入を制限するのが狙いだ。ベッセント米財務長官は「今こそ殺りくを止め、即時停戦を行うべき時だ」と声明を出し、さらなる追加制裁を示唆した。そのうえで「同盟国にもこの制裁措置に参加し、順守するよう呼びかける」と表明した。英政府は15日、ロスネフチとルクオイルを制裁対象に加えると発表した。主要7カ国(G7)に対して制裁に加わるよう呼び掛けていた。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月24日付)は、「トランプ氏、プーチン氏への忍耐は限界に」と題する記事を掲載した。
トランプ氏は、スコット・ベッセント財務長官と会談し、ロシアの石油産業に対する一連の制裁措置を準備するよう指示した。これは第2次トランプ政権下で米国がロシアに対して初めて直接措置を講じることを意味する。トランプ氏は後に「時が来たと感じた。われわれは長い間待っていた」と記者団に語った。
(1)「トランプ氏は数カ月前からそうした行動をちらつかせていたが、ウクライナ戦争についてプーチン氏と交渉できると信じ続けていたため、毎回立ち消えになっていた。この姿勢は米国や欧州の政策立案者たちをいら立たせていた。複数の当局者によると、トランプ氏の忍耐はついに限界に達した。プーチン氏が自分を振り回しているとの結論に至り、ロシアによるウクライナ攻撃の映像を目にし続けたためだ」
トランプ氏の「堪忍袋の緒が切れた」という感じだ。ロシアの残忍なウクライナ攻撃の映像を見る度に、胸を痛めていたという。トランプ氏は、ロシアを米国へ引き寄せるという外交戦略を持っているだけに「荒療治」を避けて、和平を実現したかったに違いない。そういう「幻想」は、プーチン氏の高等戦術で打ち砕かれた。
(2)「米当局者によると、ロシアの石油産業に対する米国の制裁パッケージは、トランプ氏が行動を決断した場合に備えて数カ月前から起草し準備していた。あるホワイトハウス高官は、トランプ氏は戦争を終わらせる時が来たと明確にしており、紛争の平和的解決を引き続き求めていくと述べた。プーチン氏との亀裂は、6月の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で表面化し始めた。この時トランプ氏はプーチン氏の戦争終結拒否を「見当違い」と発言した。政府高官によると、翌7月の両者の電話会談は以前よりもはるかに短く、通常の会話の際の温かみに欠けていた」
トランプ氏は、6月ころからプーチン氏との違和感を強め始めたという。最終決断するまでに4ヶ月もかかった。
(3)「トランプ氏は、プーチン氏への圧力を強める他の手段も持っているが、これまでのところ使っていない。こうした手段には、長距離トマホーク巡航ミサイルのウクライナへの供与、制裁対象のロシア石油大手と取引する企業への新たな二次制裁の実施、欧州連合(EU)の制裁を支えるためロシアの違法石油タンカーの大規模ないわゆる影の船団を新たな制裁の標的にすることなどがある」
米国が、ロシアへ「引導」を言い渡すのは、ウクライナへ長距離トマホーク巡航ミサイルを引き渡す時だ。プーチン氏は、これが実施されると自らの国内の権威はガタ落ちだけに、恫喝を始めている。
(4)「第1次トランプ政権でウクライナ担当特使を務めたカート・ボルカー氏は「トランプ氏はプーチン氏との取引を今も本当に望んでいるため、一部の選択肢をテーブルから外している」とし、「これはトランプ氏が、プーチン氏がまだ自分の計画に従わないことにいら立っているだけだということを示している」と述べた。ボルカー氏は、プーチン氏に真剣な譲歩を約束させるには「制裁よりもはるかに多くのこと」が必要であり、ウクライナへのトマホーク供与が重要な次のステップになると述べた」
ウクライナが、トマホークを手に入れたとき、ロシアは真剣な譲歩を約束せざるを得なくなると観測されている。
(5)「それでも、ロシアの脆弱(ぜいじゃく)な戦時経済が石油・ガス収入にどれほど依存しているかを踏まえると、ロスネフチとルクオイルに対する最新の制裁は経済的なゲームチェンジャーになる可能性があると複数の政府当局者は述べた。発表から1日以内に、インドの石油精製業者はロシアからの石油流入を削減する措置をとり、中国の国有石油会社は少なくとも一時的にロシア産石油の購入を停止した」
今回の経済制裁強化によって、インドも中国も即時にロシア産石油の購入を停止した。「二次制裁」を警戒したからだ。


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