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南鳥島「宝の海」へ躍進

一挙に崩れる中国優位性

資源「武器化」は失敗へ

迫る中国の国際的な孤立

 

中国は10月、西側諸国に対して自国産レアアース(希土類)が0.1%未満でも含まれている場合、中国が管轄権を主張できると発表した。西側の製造業が、中国の許可なしには動けなくなるというほどの強烈さだ。中国にとって大きな賭になるが、「凶」と出ることは間違いない。

 

中国が、世界の先端工業製品の「支配権」を握るにも等しい発表だが、これには大きな落し穴がある。レアアースの囲い込みという「資源独占」は、決して成功しないのが経済の常識だ。一時的に成功したようにみえても、新たな鉱床が発見されれば、立ち所に地位が逆転する。資源独占は、こういう脆弱性を抱えている。知識の塊である特許とは、異質な存在である。特許の少ない中国が、資源独占で対抗しようという切羽詰まった構図でもある。成功するはずがない。

 

中国は現在、レアアース採掘の70%、分離・精製の90%、磁石製造の93%と圧倒的なシェアを握っている。天下無敵にみえるが、中国の確保している鉱床はすべて陸上である。この場合、鉱石採掘段階で採掘量の22倍の水と巨大エネルギーを必要とする。つまり、すさまじい環境破壊を覚悟しなければならない分野である。

 

この「常識」が100%覆されるのは、日本による南鳥島レアアース開発である。海底6000メートルの深海から、中国陸上鉱床の20倍以上という高品位(0.5%含有)のレアアース泥が1600万トン(製品換算)も存在することが確認されている。日本は、26年1月から試掘を開始する。28年から商業生産に入る見込みだ。年産100万トンの能力を備えるもので、中国の年産27万トン(24年)をはるかに上回る量だ。

 

日本が、一挙に中国の生産量を上回って断トツの世界一の座を掴めるのは、前述のレアアース品位が中国陸上鉱山の20倍もあることだ。つまり、南鳥島で採取するレアアース泥の品位は20倍もある。日中で同じ作業を1回行なっても、製品のレアアース量が20倍も違うという意味である。

 

日本は、採取したレアアース泥を陸上鉱山のように水で洗い流す必要はない。すでに微粒子レベルでレアアースを含んでおり、粉砕や化学前処理が不要である。これによって、遠心分離や比重選鉱などは、AI(人工知能)によって物理的な機械処理で高濃度化が可能になる。つまり、AI(人工知能)とロボットが、すべての工程を処理できるのだ。世界最新の精錬過程によってレアアースが製品化される。

 

南鳥島「宝の海」日本躍進

前述の通り、日本が年産100万トンのレアアース生産体制が確立したとき、中国はどのように対応するのか、である。南鳥島のレアアースの特色は、生産コストが格段に安いことだ。レアアース泥1トンの採掘コストは2万円とされている。精錬コストは不明だが、AIやロボットが分類していくので人件費が掛らないという点も大きなメリットである。

 

陸上のレアアース採掘現場は、地上に大きな穴を掘りながら採掘していく。鉱石は、大型ダンプで運び出して選鉱し精錬過程へ送る。このように、手間の掛る作業である。南鳥島のレアアースでは、選鉱過程まで自動化されて人間の作業が不要である。この事実を知るだけでも、その違いが理解できるであろう。これだけでない。南鳥島のレアアースは、大きな品質面の優位性が知られている。

 

南鳥島のレアアース泥は、「重レアアースが豊富」という点で、陸上鉱山よりも優れている。重レアアースとは、高付加価値のレアアースという意味だ。次のような特質を持っている。

 

1)用途が先端的 電気自動車のモーター、風力発電、医療機器、軍事技術など、精密で高性能な分野に使われる。

2)供給が限られている 産出地域が限られ、分離精製も難しいため、希少性が高い。

3)価格が高い 例えば、ジスプロシウムやテルビウムは、ネオジムなどの軽レアアースよりも市場価格が高い。

 

以上のように、南鳥島のレアアースは、「低コスト」で「高付加価値」というごとく、願ってもない好条件を備えている。この結果、日本のレアアースが生産量と高品質の絶対的な2要件を備えることで、世界覇権を握ることは自明といえよう。

 

かつて、世界最大のレアアース生産国であった米国は、環境保護を理由にして他国へ精錬施設を移譲することで、自らそのトップの座を降りた経緯がある。現在、中国のレアアースの輸出制限に慌てており、豪州で米豪共同のレアアース生産を始めることになった。

 

米豪政府が、今後6か月以内に30億ドル(約4500億円)を共同投資する。プロジェクト規模は、総額85億ドル(約1兆2800億円)の重要鉱物生産で、すでに稼働準備済みである。これによって、26年中に操業を開始し総額約530億ドル(約8兆円)規模の生産を目指すとしている。肝心の技術は、日本が提供する。豪州アルバニージー首相は、「日本が参加するプロジェクトがある」と明言しており、加工技術や精錬工程への貢献が含まれているとみられる。

 

日本は、南鳥島のレアアース開発と並んで、米豪共同レアアース開発事業の技術提供という役割を担うことになった。

 

一挙に崩れる中国優位性

日本のレアアースにおける存在が、世界中で認知されたとき、中国はどのような対応を取るのか。実に、興味深いのだ。これまでのレアアース優位性が一挙に崩れるからだ。

 

中国のレアアース優位は、「精製能力」と「価格競争力」によるものである。日本が南鳥島のレアアースによって、高品位レアアースを大量に安価で供給し始めると、中国の戦略的優位は崩壊する。中国が、自国産レアアースを0.1%未満含む「製品の原材料・製造工程・流通経路を月次で中国政府に報告する」という追跡可能性義務は、空文化される。中国は一転、辞を低くして「購入を働きかける」立場へ追詰められるのだ。(つづく)

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