米国トランプ大統領はドライで、経済的利益を得るためには「何でもする」という噂が強い。その一環として、「台湾問題で中国と取引」するとの懸念が出ていた。これは、日本経済新聞がこの種の報道を何回か行なったことで強まった面もある。台湾放棄は、米国覇権の基盤を売り渡すも同然の危険な政策である。米国が、覇権をめぐって中国と対抗している渦中で、そういう無定見な政策を行なうはずがない。本欄はこういう視点で、この問題を捉えてきた。
『日本経済新聞 電子版』(10月26日付)は、「米国務長官『台湾見捨て中国と貿易協定ない』 レアアースで取引否定」と題する記事を掲載した。
ルビオ米国務長官は25日、中国との貿易交渉で同国のレアアース(希土類)輸出規制緩和と米国の台湾政策修正を交換条件にするとの観測を否定した。「台湾を見捨てる代わりに貿易上の優遇措置を得る協定が結ばれることはない」と明言した。
(1)「訪問先のカタールの首都ドーハで記者団に語った。台湾当局者から30日に予定する米中首脳会談の貿易交渉で合意するため、台湾問題が交渉材料になるとの懸念があると問われて答えた。ルビオ氏は、「なぜそうした懸念がなぜ生じるのか理解できない」と述べた。「台湾には多くの懸念事項があり、置かれた状況からすれば当然だが(米中首脳の)対話は両国の規模と重要性ゆえに外交的関与を維持する必要性に加え、主に貿易分野に焦点を当てている」と説明した」
ルビオ氏が、国務長官としてだけではなく暫定的な大統領国家安全保障顧問として、政権中枢でいっそう広範な役割を担っている。今回のロシアへの経済制裁強化は、ルビオ氏がトランプ氏を動かした結果とみられている。ルビオ氏は、「反共」闘志でもある。米国がレアアースを欲しくて、「台湾を売った」となれば、米国と同盟を結ぶことがいかに危険かというたとえ話になるほどだろう。米同盟国は、米国が覇権国であるから同盟を結んでいるもの。その根幹である安保がぐらつけば、同盟の意味は消えるのだ。
(2)「トランプ米大統領は30日、韓国で中国の習近平国家主席と会談する予定だ。台湾問題を取り上げると表明しており、台湾を含む安全保障問題と貿易で「ディール(取引)」するとの見方が浮上していた。24日に記者団から台湾に関する米国の政策変更に前向きかと問われ、トランプ氏は「いまはその件については話したくない。複雑な状況をつくり出したくない」と否定しなかった。中国が台湾への軍事威圧に出る可能性を聞かれ「そうしないことを望む。動けば彼らにとって非常に危険だ」と警告した」
中国の台湾侵攻は事実上、困難になっているとの見方が強まっている。台湾の地勢的な面での難攻不落と並んで、中国経済の衰退傾向の強まりである。こういう状況を逐一把握している米国が、敵に塩を送るようなことをするはずがないからだ。
(3)「米中両政府は25日、5度目となる閣僚級協議をマレーシアで始めた。トランプ氏は中国によるレアアース輸出規制に強く反発する一方、中国側も米国による中国への輸出規制を批判する。安全保障上の懸念がある製品を含み、両国が妥協点を見いだすのは容易ではない。トランプ氏は26日、アジア訪問で最初に立ち寄るマレーシアに到着した。東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議に出席するほか、現地で参加国首脳との2国間会談に臨む。ルビオ氏は、ASEAN関連首脳会議について「このフォーラムは極めて重要だ」と述べた。「インド太平洋地域の関係者から『米国はこの地域に本当に関与するのか』とよく聞かれるが、大統領が現地を訪問することがその証左になる」と主張した」
トランプ氏は、ルビオ氏への信頼度を高めている。米国内での孤立派の存在は無視できないが、米国覇権を危うくするような台湾政策を採用するとは考えられない。


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