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ドイツと中国の間で、外交的対立が生じている。中国は、半導体やレアアース(希土類)の欧州向け輸出を絞り、ロシアのウクライナ侵略を間接支援する。これをドイツのワーデフール外相が批判し、中国が発言の撤回を要求。侮辱と受け止めたドイツ政府は、対抗措置として26日に出発する予定だった外相の訪中を延期した。単なるボタンの掛け違いではない。中国からの経済自立を図る欧州の苦悩に満ちた序章の幕開けである。中国の振る舞いは、ドイツとして「見て見ぬふりできぬ」という強い決意を示したものでもある。

 

『日本経済新聞 電子版』(10月28日付)は、「中国に屈さぬドイツ、外相訪中棚上げ 苦悩の経済自立」と題する記事を掲載した。

 

ワーデフール氏の発言は、Nikkei LIVE「ドイツ外相に問うトランプ時代のアジア秩序」と題して10月14日にベルリンで公開収録し、20日に配信された。壇上にのぼったワーデフール氏は、外交・安全保障の政策通として知られる政治家である。訪中で何を議題にするのか。「ロシアを後押しする中国を見て見ぬふりはできない」。攻撃的な口調でこそなかったが、固い決意がのぞいた。

 

(1)「発言は、「口が滑った」のではない。国際秩序と法の支配は守られるべきだという信念からきている。これまでも中国の覇権主義を公然とけん制してきた。北ドイツの出身者らしい率直さも相まって、ときにドイツメディアの番記者も驚くほどの厳しい表現を並べる。中国は、よほど腹に据えかねたようだ。訪中直前になって、過去の発言を軌道修正するようドイツ政府に求めた。侮辱と受け止めたドイツは突っぱね、対抗策として訪中の棚上げを決めた。出発の2日前だ」

 

中国の傲慢さが、よく表れている。発言取消しに等しい要求を独政府へしたからだ。ドイツが、侮辱と受け止めたのは当然であろう。

 

(2)「訪中が凍結された背景には、中国が閣僚会合での議題を制限しようとしたこともある。ドイツは、王毅共産党政治局員兼外相との会談に加え、半導体の輸出制限について王文濤商務相、ロシア情勢を巡って別の中国高官との会談を要望した。中国は外相による「友好親善会談」は承諾したものの、貿易障壁やウクライナ侵略を議題にすることを拒んだ。ドイツ外相に同行する予定だった経済団体の関係者は通商摩擦を巡る事務レベル会合を試みたが、これも「不調に終わった」と独メディアのテーブル・ブリーフィングスは報じる。不都合なことに触れたくない中国は、争点をずらしてもドイツが折れると見くびっていた節がある。多くのドイツ企業が中国市場を頼るからだ」

 

ドイツが、外相の訪中を棚上げした裏には、中国が閣僚会合での議題を制限しようとしたこともあるという。中国が上から目線で臨んだことが裏目に出たのだ。

 

(3)「外相の訪中は夏前に決まり、今年秋から来年にかけてクリングバイル副首相兼財務相、メルツ首相らが北京入りする予定だった。中国側はドイツが実利外交に徹して対立を避け、独中蜜月に戻ると踏んでいた。ところが中国の予想を裏切り、ワーデフール氏は強気だった。当然だろう。単なる対話のために訪中すれば、「高圧外交」でドイツは屈すると踏んでいた中国のシナリオに従うことになってしまう。取材に応じた保守系与党のキリスト教民主同盟(CDU)の重鎮は「訪中延期は正しい決断」と口をそろえた」

 

ドイツでは、外相の訪中の他に今年秋から来年にかけて、クリングバイル副首相兼財務相、やメルツ首相らが北京入りする予定であった。中国は、これをドイツの「中国詣で」と誤解して高姿勢になった。ドイツが、怒るのは当然であろう。

 

(4)「(ドイツには)中国に屈しなければ、欧州の「経済自立」を探る欧州連合(EU)の後押しを得られるとの計算もあった。盟主ドイツは、「中国に弱みを握られている状況」より、強権体制に毅然と対峙する国家であってほしい。特にロシアの脅威にさらされるバルト3国やポーランドはそう考える。中国ビジネスに頼る企業からは「政治家は景気のことを考え、中国とうまくやってほしい」との声が漏れる。そうした声に耳を傾けすぎた結果、中国の影響力が欧州で膨らんだと悔いる政策当局者も増えている。いま何もしなければ中国への依存度を減らすデリスキング(リスク軽減)を掲げながら、成果をあげられなかった過去の政権の延長線上になりかねない」

 

ドイツは、欧州の「盟主」である。中国に対して毅然として対応して欲しいと願うのはEUの願いでもある。欧州は、中国への依存度を引下げねば、ウクライナを侵略するロシアを支援する中国を認めることになる。こういう強い姿勢が、中国へ向けられている。

 

(5)「中国と適切な距離を保ちながら戦略分野での自立を志す欧州と、経済を「人質」にとりながら欧州をコントロールしたい中国がせめぎ合う。目先の利益に群がる企業を人質にとり、政治に圧力をかける――。これは、冷戦期の東側陣営の軍事同盟ワルシャワ条約機構が使っていた手口でもある。国家プロジェクトを意識的に西側企業に割り振って手なずけ、そこから西側陣営をコントロールしようとした。経済力を増した中国がその戦略を駆使する。欧州企業が抜き差しならないところまで深入りしていることに欧州政治が危機感を持ち、ようやく是正に動く。対中政策の再精査である」

 

中国の経済を使った巧妙な外交姿勢は、欧州の弱体化へつながる。こういう危機感が、EUのTPP(環太平洋経済連携協定)接近に表れている。中国の「傲慢外交」は、ドイツの強い抵抗に遭遇した形だ。