中国は、EV(電気自動車)産業への政府助成を打ち切る姿勢を鮮明に打ち出した。今月決まった「第15次五カ年計画(2026-30年)」で、EVは過去10年余りで初めて戦略的な新興産業のリストから除外されたからだ。中国指導部が、EVについて成熟産業になり、もはや従来と同じ規模の資金支援を必要とせず、発展を市場の力に委ねられると考えている証拠だと、アナリストらはみている。現実は、財政悪化でEVへ補助金を支給する余裕がなくなったとも言える。シェア0.1%の弱小EV企業93社を支える余力がないのだろう。
『ロイター』(10月30日付)は、「中国のEV産業、市場競争で一段と強く 政府支援打ち切り」と題する記事を掲載した。
EVは、習近平国家主席さえ苦言を呈する中国に広がる過当競争の象徴とみなされている。ただ、アナリストらは、戦略的新興産業のリストから外れたからといって、EVに対する政府の好意が失われたわけではないと指摘する。むしろ、中国が世界的な貿易摩擦や安全保障上の緊張を踏まえて「自立自強」のために他の技術分野に資源を投入する戦略的な決断の表れだという。
(1)「EVとプラグインハイブリッド車、燃料電池車が該当する「新エネルギー車(NEV)」は過去3回の五カ年計画で戦略的新興産業に分類され、各メーカーのEV生産促進や消費者の需要喚起に向けて数十億ドル規模の補助金が投入されてきた。それによって中国は現在、EVのサプライチェーン(供給網)を掌握するとともに、BYD(比亜迪)という世界をリードするメーカーも誕生。中国のNEV市場は世界最大で、昨年7月の時点で国内自動車販売の50%余りをNEVが占めた。成長ペースは政策担当者が当初設定した目標に10年早く到達したほどだ。しかし急成長と政府助成により、中国では各メーカーが総需要を超える車を生産してしまった。実需に基づくよりも、政府の政策に影響される生産目標の達成に向かっていったからだと、ロイターはこれまでに報じている」
新エネルギー車が、国内自動車販売の50%余りを占めている。これで、補助金を打ち切っても大丈夫という見方だ。この裏では、非効率な赤字企業が死屍累々である。無駄な補助金を使ったものである。
(2)「ジェイトー・ダイナミクスの分析では、中国で事業展開している自動車メーカー169社のうち、市場シェア0.1%未満の企業は93社に上る。中国の対外経済貿易大学WTO研究院のトュー・シンカン教授は、「国家的見地に立つと(NEVに)過剰な関心を払う必要はなくなっている。さもないと過剰生産設備を助長しかねない」と言う。同教授は、NEVが五カ年計画の戦略的新興産業から外れたとはいえ、関係省庁は今後、将来の業界の道筋を定めるためにより個別的な計画を発表すると予想している」
自動車メーカー169社のうち、市場シェア0.1%未満の企業は93社に上る。これら企業は、補助金打ち切りですべて倒産だ。従業員も解雇される。これまでの設備投資も無駄になる。これが、計画経済の実態だ。
(3)「ある中国の政策アドバイザーは、EVが戦略的新興産業に分類されなくなっても、重要性は変らないと強調。輸出だけを見ても自動車セクター全体の収益源になっているし、産業チェーンの強化や中国の国際的な指導力を高めることにも役立っているとの見方を示した。「政府の方針転換を受け、EV業界は市場での競争を通じて自らの未来が決まる現実に向き合わなければならない。今年前半、中国の上場自動車メーカー17社のうち、黒字は11社だった。中国乗用車協会(CPCA)の崔東樹事務局長は、今回の五カ年計画からは、政策担当者がEV業界の支援をやめるために従来の全般的アプローチではなく、より的を絞った施策を打ち出そうとの意向がうかがえると説明」
補助金頼りの経営が、いかに無駄をつくるか。中国の自動車政策が証明した。計画経済は無駄を生む「マシーン」である。
(4)「EVメーカーには、より技術革新的な製品の生産を重視し、低品質車の生産抑制を図るよう圧力がかかるだろうとみている。カウンターポイントのアナリスト、シャオチェン・ワン氏は、各メーカーは中国市場で地歩を得る上で、十分に傑出した中核的な強みを構築する必要が出てくると指摘する。「例えばBYDやリープモーター(零跑汽車)といったブランドはサプライチェーンを統合する能力の強化を通じてコスト面の優位性を高め、より費用対効果の大きい製品を投入してきた。一方、小米科技(シャオミ)や、華為技術(ファーウェイ)(HWT.UL)主導で設立された技術連携組織HIMAに参加している各社は、そのブランド力と情報技術面の優位性で消費者を引きつけている」という」
EVメーカーは、補助金打ち切りでより技術革新的な製品の生産を重視し、低品質車の生産抑制を図るよう圧力がかかるだろうという。市場機能が生かされていれば、こういう無駄は起こりようがない。中国経済の「壮大な無駄」が、補助金政策で生み出されている。


コメント
その中で程々の信頼性のある自動車を作れるメーカーは、どれ程有るのでしょうか?
買う人がいるから作れたんでしょうが、メンテナンスを含めた信頼性を考えると恐ろしい話です。
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