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中国の与えた「レアアース・ショック」戦術が、西側諸国のレアアース産業の復活を促している。中国は、「眠れる巨人を目覚めさせた」といわれるほど、皮肉にも西側諸国のレアアース自立への動きを促進させる役割を果している。幸いなことに、日本の南鳥島海底6000メートールに堆積するレアアース泥が、中国陸上レアアース鉱山の平均品位の20倍以上の高品位と分って日本はもちろん、米国もこの「余慶」に預かれると安堵している。米国は、日本と長期購入契約を結びたいというほどの熱の入れ方だ。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月29日付)は、「米国で最も熱い投資先:レアアース企業」と題する記事を掲載した。

 

中国が4月にレアアース(希土類)の輸出制限に乗り出し、自動車工場の生産停止やレアアース価格急騰を引き起こして以来、レアアース企業に民間部門と政府からの資金が流入している。今やこうした企業は、技術専門家を雇い、工場を拡張し、戦略的買収を行う資金を手に入れ、ハイテク製造に必要な材料の中国以外からの供給体制の構築を急いでいる。

 

(1)「金属専門の投資会社オリオン・リソース・パートナーズは23日、米国とその同盟国向けの重要鉱物確保を目指すとして、米政府資金などを活用した18億ドルの投資コンソーシアム設立を発表した。トランプ氏とオーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は20日、重要鉱物とレアアースのプロジェクトに共同出資する合意書に署名した。この発表に関連し、米輸出入銀行は7件の豪鉱物プロジェクトに総額22億ドルを融資する意向を表明し、ホワイトハウスは西オーストラリア州の先進的ガリウム精製施設に国防総省が投資すると発表した。ガリウムは半導体製造に必要な鉱物だ」

 

不思議なことに、南鳥島のレアアースについては一部専門家を除いて話題になることもない。日本政府が、中国を刺戟しないように情報を抑えている結果である。底流では、大きなうねりが起こっているが、「南鳥島情報」はだれも注目していない。日米政府の一部でしか共有されていないのだ。

 

南鳥島周辺には、世界最大級の「中・重希土類」を含むレアアース泥が存在している。中国が、独占してきた資源構造を根本から覆すので、日本政府は試験採掘を進めつつも、技術流出や外国勢力の干渉を警戒して情報を慎重に扱っている。これが、「南鳥島はどこ?」という事態となっている。「情報統制」するほど、中味が濃いのだ。

 

(2)「米銀大手JPモルガン・チェースは今月、レアアース企業など国家安全保障上重要な企業に100億ドルを投資すると発表した。これは同行が始めた戦略的産業に特化する1兆5000億ドルのイニシアチブの一環となる。同行は27日、最初の投資先として、中国が供給の大部分を握る重要な防衛用途の鉱物アンチモンを生産するアイダホ州の鉱山会社、パーペチュア・リソーシズに7500万ドルを投資すると明らかにした」

 

JPモルガン・チェースは、レアアース企業など国家安全保障上重要な企業に100億ドルを投資すると発表した。米金融界が、競ってレアアース企業など国家安全保障上重要な企業に投資している。

 

(3)「個人投資家や機関投資家も、独自に数十億ドルの資金をつぎ込んでいる。米国最大のレアアース企業、MPマテリアルズの株価は今年約4倍に上昇し、時価総額は約120億ドルに達した。豪レアアース大手、ライナス・レアアースは8月に投資家から約5億ドルを調達した。ライナスの株価は今年3倍に上昇した。西側の重要鉱物企業は長年、資金調達に苦労してきた。世界中に安価な鉱物を大量供給してきた中国の政府系鉱物企業に比べ、弱い立場にあったためだ」

 

MPマテリアルズは、南鳥島のレアアースと技術的に深く結びついている。米国政府が、MPマテリアルズへ出資するなど強い絆を築いたので、南鳥島のレアアース情報にも接している。

 

(4)「中国が、今年導入した制限措置(10月に突然レアアース輸出規制を強化したことなど)は、この状況を根本的に変えた。中国のレアアース支配は、貿易紛争における理論上の方策ではなく、米国を傷つけたい時にいつでも使える強力な武器になることが明らかとなった。これを受け、米国はこの産業を長期的に構築するための手段を講じることにした。一例を挙げると、中国の過剰生産が引き起こす価格暴落から守るため、米政府はMPマテリアルズにレアアースの最低価格を適用することで合意した」

 

中国の過剰生産が引き起こす価格暴落から守るため、米政府は、MPマテリアルズにレアアースの最低価格を適用することで合意している。この面で、日本政府にも協調を呼びかけている。

 

(5)「レアアース処理技術を手がけるカナダ企業ユーコア・レアメタルズは、米ルイジアナ州に初の商業規模の工場を建設するため、国防総省から1800万ドルの資金拠出を受けた。同工場ではレアアースを多くの産業で使用される酸化物に変換する。ユーコアの株価は年初来で700%超上昇した。「マンハッタン計画のようなものだと考えている。これを成し遂げるには迅速な動きが必要だ」。ユニコアのパット・ライアン最高経営責任者(CEO)はこう述べた。同氏は来年の工場稼働を見込んでいる」

 

レアアース開発は、米国が戦時中に原爆開発に取組んだ「マンハッタン計画」のような扱いになっているという。米国が、南鳥島のレアアース開発に関心を持つ裏には、こういう事情が潜んでいる。日米政府が、南鳥島のレアアースについて沈黙を貫いている理由はここにある。