あじさいのたまご
   

韓国保守メディアが、日本に対する本音を覗かせている。日本のGDPが、間もなくインドに抜かれ世界5位となること。日本の平均一人当たり名目GDPが、韓国に抜かれたことをもって、「日本は大したことない」と言っているのだ。いずれも、異常円安がもたらした現象である。ゼロ金利が生んだ「異常円安」を捉えて、これが、日本の実力と切り捨てている。円相場は、これから「金利の復活」とともに円高へ向う。円高復活で、韓国メディアは、自らの見解を是正する時が来るであろう。

 

『中央日報』(11月3日付)は、「現実に方向を向けた高市首相の内心」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のキム・ドンホ論説委員である。

 

日本の新首相の高市早苗氏は代表的な右派政治家に挙げられる。靖国神社を参拝し、帝国主義の侵略の歴史を否定してきた。明治維新後にアジアと太平洋に進軍した日本の威勢、敗亡後に一時は世界2位の経済大国として繁栄した時代の自負心が、今でも日本の強硬右派の意識を支配する。


高市氏は「女性安倍」と呼ばれる。彼女は「夢でも安倍晋三元首相を見る」と言って後継者を自負する。安倍氏が自虐史観から抜け出して自尊感を取り戻そうという「美しい国」を前面に出したとすれば、高市氏は「強い日本」を掲げた。活力を失った経済を回復させ、平和憲法を改正して自衛隊を実質的な軍隊に変えようとする。反撃能力を明文化した安保3文書をより一層強化し、原子力潜水艦保有の議論も避けない。

 

(1)「高市氏は2022年、「途中で参拝をやめるなど中途半端なことをするから相手がつけ上がる」と発言した。「つけ上がる」という表現には過去に周辺国の上に君臨した優越意識が込められている。こうした態度は日本の歴史教育不在に起因する。敗亡後、日本は侵略の歴史を隠して歪曲した。その結果、今の世代は日本が軍事力と経済力で全盛期を謳歌した1926~89年の昭和天皇時代の栄光としてのみ記憶する。1954年生まれの安倍氏と61年生まれの高市氏はその絶頂期にいた世代だ」

 

日本が、未だに憲法改正を行なわないのは、太平洋戦争への深い心の傷がある結果だ。こうした事実を理解できないのは、日本を見る目が皮相的と言うほかない。日本経済は、決してこのままで終ることはない。韓国にない新たな技術が、牽引するはずだ。ノーベル科学賞受賞者26人を出した日本が、このまま朽ち果てることはない。

 

(2)「しかし、高市氏が直面している現実は容易でない。日本の経済規模は来年インドに抜かれて世界5位に落ちる見通しだ。1人あたりの国民所得はすでに韓国に追い越された。国家負債は国内総生産(GDP)比で234%にのぼる。半導体など核心産業の主導権も韓国と台湾に移った。帝国の郷愁だけが残っていて、力は以前のようではない」

 

名目値のGDPは、円相場によって規定される。かつての1ドル110円台が、現在は150円台である。3割安である。これが、日本経済の「サイズ」をすべて縮小させた。これをもって、日本を軽んじては見誤るであろう。日本は、ゼロ金利から「金利のある世界」へ戻ったのだ。日米金利差の縮小とともに、110円台へ戻る日は来る。そのとき、日本経済の「外観」は元へ戻るだろう。韓国は、再び日本のレベルから遠くへ去る。その時、韓国は日本の底力を見直すだろう。

 

(3)「高市氏は先月、トランプ米大統領に「日米の黄金時代を作り上げていきたい」と提案した。朝中ロの結束に対応するための必然的選択だ。韓国に対しても「重要な隣国であり、国際社会のさまざまな課題に対応するためにも必要なパートナー」と述べた。韓米日協力が揺らげば、日本の安保戦略も動力を失うという現実的な認識がある」

 

高市氏が、韓米日協力を唱えたのは「外交儀礼」である。新首相として、韓米日協力を唱えなければ儀礼に反するのだ。日本が、安保戦略で韓国と協力することは不可欠でなくなっている。日本は、インド太平洋戦略で豪州・フィリピン・印度と密接な関係にある。韓国は計算外だ。韓国は、インド太平洋戦略へ復帰しなければならない。

 

(4)「現実政治の柔軟さが彼女の内心まで変えたのだろうか。韓国が経済と安保で揺らげば、高市氏の目線はまた「つけ上がる」に戻るだろう。歴史的に韓日協力は対等な力の均衡の上でのみ可能だった。それが冷酷な国際政治の現実だ。高市氏が「強い日本」を掲げるように、韓国も「強い韓国」にならなければいけない」

 

韓国は、経済と安保で揺らぐことはないだろうか。現に、安保での日韓協力を切望しているのは、揺らいでいる証拠であろう。韓国は半島国家である。日本は海洋国家である。安全保障の視野も韓国とは異なる。日本は、太平洋全般へ広がるのだ。こういう違いを理解すれば、韓国は日本へ肩肘張ることなく、もっとリラックスすべきだ。親の仇を取るような言動は、慎むべきだろう。


(5)「韓国は、すでに低成長の底に深く入り込んでいる。成長率をまた3%以上に引き上げることができなければ韓国も日本のように「失われた30年」の道を歩むかしれない。それだけ軍事力と外交力の拡張も難しくなる。韓国の国力が、強まってこそ日本の強硬右派も韓国を軽視できない。国力が以前ほどでない日本に韓国が必要であるように、韓国も強くなってこそ真の協力の主体になることができる。「強い日本」を掲げる高市内閣の支持率は74%にのぼる。今は「強い韓国」をつくるというビジョンが、韓国政治にも強く求められる。それが真の韓日協力の出発点だ」

 

「国力が以前ほどでない日本に韓国が必要である」とは随分、日本を見下げたものだ。こういう言い方は禁句である。日本は、決してそう考えていないのだ。打つ手は打っている。韓国が再び、日本へ経済支援を求めるようなことを引き起さないように願いたい。