米国企業のリストラが相次いでいる。民間統計によると、今年１〜９月に企業が表明した人員削減数は前年同期比５割増の約９５万人に拡大した。大企業は人工知能（ＡＩ）による効率化を先取りする形で人員を削減し、「雇用なき成長」に向け動き出している。

日本でも、ＡＩによるリストラが現実のものとなりつつある。２０２５年は「ＡＩリストラ元年」と呼ばれるほど、企業が本音を語り始めた。生成ＡＩの普及によって最大１２０万人規模のリストラが発生するとの予測も出ている。特に影響を受けるのは、定型業務を担うホワイトカラー職種だ。事務、データ入力、コールセンターなどがＡＩに代替されつつある。

『日本経済新聞　電子版』（１１月４日付）は、「米企業９５万人削減、迫る『ＡＩリストラ』の現実　雇用なき成長探る」と題する記事を掲載した。

米調査会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスによると、米企業・組織の人員削減は１〜９月に９４万６４２６人と前年同期比で５５%増えた。表明時点の速報値で米政府効率化省（ＤＯＧＥ）による政府系機関の削減も大きいが、ＤＯＧＥ関連を除いても約1割増えた。新型コロナウイルス感染拡大期の２０年以来の高水準となった。

（１）「目下最大の焦点になっているのはＡＩだ。チャレンジャーの統計では、ＡＩを直接要因とした企業は全体の４%にとどまるが、業務効率化を見越した合理化が始まっている。特にＡＩの代替の影響が大きいと言われるホワイトカラーで削減の動きが目立つ。コンサルティング大手のアクセンチュアは、米国を含め世界で約１３００億円規模のリストラ計画を発表し、ＡＩ導入に伴う社員の再教育や事業見直しに着手した。コンサル大手のPwCも米国で１５００人を削減すると報じられた」

米国では、コンサルタント大手で人員削減が始まった。日本はどうか。２０２５年現在、日本でもＡＩによるリストラが進行しているにもかかわらず、大卒採用では、目立った影響が出ていない。ただ、事務職など定型業務の新規採用は抑制傾向にある。企業は依然として「ポテンシャル採用」としての新卒枠を維持している。特に総合職や営業職、技術職などは継続的に採用されている。これら職種は、ＡＩで代替しにくい「人間的な判断力」や「対人スキル」が重視されている結果だ。求人広告全体は減少傾向にあり、事務系職種では前年同月比で約１６％のマイナスというデータもある。

（２）「２５年７〜９月期で相次ぎ最高益をたたき出したテック企業でもリストラが相次ぐ。データセンターのインフラ投資がかさみ、ＡＩによるプログラミングの自動化が進む中、米マイクロソフトは５月と７月に計１万５０００人の削減を発表した。米アマゾン・ドット・コムは事務職やエンジニアを中心に１万４０００人の削減を発表した。コンサル大手のカルチャー・パートナーズ最高戦略責任者のジェシカ・クリーゲル氏は「今回増えている人員削減は景気に関わらず起きている点が異例だ。ＡＩがリストラを正当化する新たな理由になっている」と指摘する」

米国では、テック企業がリストラを進めている。ＡＩによるプログラミングの自動化が進んでいるからだ。

（３）「ＡＩが失業につながる直接的な因果関係はまだ薄いが、企業は半ば格好の理由として活用し始めている部分がある。アマゾンのアンディ・ジャシー最高経営責任者（ＣＥＯ）は、6月にＡＩの効率化により「従業員が減っていく」と宣言した。調査会社カンファレンス・ボードのロビン・エリクソン氏は、「広範な業種で削減が進む背景は、企業でＡＩが導入される今こそリストラのチャンスだと捉えているからだ。今なら人員を削減しても気づかれないと考えている」と分析した」

企業は、早手回しにＡＩリストラに乗り出している。業績好調下であれば、リストラが目立たないであろうという思惑からだ。

（４）「米連邦準備理事会（ＦＲＢ）のパウエル議長は、２９日の記者会見で「新規失業保険申請件数に影響はまだ表れていない。雇用市場の低迷が加速している様子は見られない」と述べた。一方で、「多くの企業が新規採用を控えるか人員を削減すると発表し、ＡＩについて言及している。雇用創出に影響を与える可能性は十分にある」と懸念を示した」

ＦＲＢも、ＡＩリストラに身構えている。現状では、雇用市場へ影響を与えていないが、その可能性に警戒している。米国経済に新たに登場した問題である。