トランプ米大統領に逆風が吹き始めた。立て続けに、国内選挙で民主党候補に敗れたからだ。「山高ければ谷深し」の喩えのように、無党派が反共和党へ向っている。理由は、消費者物価の高騰である。トランプ米大統領は14日、220品目を超す食料品を対象に相互関税を撤廃するための大統領令に署名した。原産国を問わずコーヒーや牛肉、バナナなど多くの食料品に相互関税がかからないようにし、価格高騰に対処する。
『日本経済新聞 電子版』(11月16日付)は、「失速し始めたトランプ2.0 外交・内政とも誤算、離れる無党派」と題する記事を掲載した。
トランプ米政権の発足から10ヶ月。投資減税や移民対策などで当初は成果を出したものの、足元では対中外交や物価対策で苦戦が目立つ。中間選挙や大統領選で重要な無党派層の支持率が低下し、関税の一部引き下げなど過激な政策の修正に動き始めた。
(1)「トランプ政権幹部は、「深刻に受け止めているのはニューヨーク市長選ではなくバージニア知事選」と指摘。同州では民主党が4年ぶりに知事の座を共和党から奪還した。勝敗を決めたのは無党派層。2021年の前回選挙では、無党派の54%が共和党候補に投票した。今回は一転して59%が民主党候補に票を投じ、共和党候補(40%)に19ポイントもの大差をつけた。
「死に体」であった民主党が、トランプ氏の「敵失」で復活してきた。無党派が、民主党支持に回ったからだ。理由は、物価高である。物価が、政党支持率を左右するという「原則」を立証している。
(2)「米国は無党派が4割。中間選挙や大統領選も無党派層が左右するが、トランプ大統領への支持率は急低下する。米ギャラップの調査によると、無党派層の支持率は政権発足直後の46%から33%へと低下した。失速の理由は何か。無党派が重視するのは、思想信条ではなく国内景気。ミシガン大の消費者態度指数をみると、無党派のデータは1月の68.3から11月には45.0へと大幅に悪化した。トランプ政権はスタート半年で大型の減税・歳出法を成立させ、日本などと関税交渉もまとめ上げた。それでも無党派の支持率と景況感が悪化するのは、生活コストの改善が進まないことにある」
米国では、無党派が4割とされる。この層が、自らの生活感覚に合わせて支持政党を決めている。物価が、重要なメルクマールである。日本も同じだ。
(3)「国務省元高官は、「トランプ政権の弱体化をみて、中国もロシアも米国に譲歩するのをやめてしまった」と憂慮する。トランプ政権は中国製品の関税率を一時145%まで引き上げて圧力をかけた。中国側はレアアースの供給カットで対抗。トランプ氏の支持率に陰りがみえると、10月末の首脳会談で貿易不均衡の解消につながる譲歩策を一切出すのをやめた。「就任初日の停戦合意」を主張したウクライナ和平も膠着状態にある。トランプ氏は10月、ロシアのプーチン大統領に再会談を持ちかけたが、ロシア側が譲歩を拒んで首脳会談自体をキャンセルせざるを得なくなった。中国もロシアも、トランプ政権を焦らせるほど新たな譲歩が引き出せるとみる。支持率が低下するトランプ政権は短期的な成果を求めざるを得ず、外交カードを狭めて失策を重ねるリスクがある」
中ロが、トランプ支持率の下落をみて米国への譲歩を取り止めたとしている。これは、いささか言い過ぎであろう。中国もロシアも長期の外交戦略に従って動いている。ならば、米国の物価動向が、中ロの外交政策を左右するという「珍説」になる。
(4)「排他的な移民政策を敷くMAGA(米国を再び偉大に)路線も転換の兆しがある。トランプ氏は11日のテレビ番組で「米国には特定の才能が不足しており、国内に入れなければならない」と合法移民を認めるような発言した。米国景気の下支え役はハイテク分野の設備投資。建設と運営には海外の人材が欠かせない。「優秀な移民が必要? 耳を疑ったね。グローバリストの入れ知恵だ」。トランプ氏の発言にかみつくのはMAGA派のスティーブ・バノン元首席戦略官。MAGA派を代表するマージョリー・テイラー・グリーン下院議員も移民対策などでトランプ氏を批判し、怒ったトランプ氏は同議員の支援を取り消すと表明した」
排他的移民政策は、MAGAを熱狂させたが、弊害も大きくなって来た。人材不足である。本来、移民国家の米国が、移民排除とは大きな矛盾である。MAGAの人たちも、移民の子孫である。既得権益主義の限界である。
(5)「無党派を意識して現実路線に立ち返れば、今度は岩盤支持層の離反につながるジレンマがある。26年11月の中間選挙まで1年。高値圏の株価が頼みの綱だが、トランプ体制は失速と迷走の2つのリスクを抱え始めた」
トランプ氏は、国民に向けて得意の「ディール」を行わなければならなくなった。物価を引下げるには、関税が障害になる。最高裁の判決が年内に予想される。相互関税が違憲となれば、トランプ支持率は大きな影響を受ける。どう手を打つか、だ。


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