斜陽化の広東省成長率
BYD成長も食い潰す
AIやロボットも限界
30年代1.7%成長へ
中国経済は今後、どのような方向を歩むのか。世界中が注目している。肝心の中国政府自体が、確たる方針の下で進んでいるとはみえないからだ。権威主義政権を維持するには、絶えず経済成長率を高めなければ国民の信頼を失うという「脅迫観念」に苛まされている。これが、景気即効性の大きいインフラ投資や設備投資を強行させてきた理由である。だが、ここに大きな落とし穴が控えている。個人消費を犠牲にするという罠にはまったのだ。現在の中国経済が、方向感覚を失っているのは、この罠によるものである。
投資優先による消費軽視の経済が、中国では改革開放(1978年)以降、実に50年弱も続いている。これが、もたらした投資と消費の壮大なギャップは、簡単に埋まるものではない。ましてや、習近平政権は15次5カ年計画(2026~30年)でもこれを継続の方針だ。言葉の上では、国民生活の充実などと言ってはいるが、「新質生産力」(AIやロボットなど)の育成を前面に掲げている。人口高齢化にともなう社会福祉重視などは「付け足し」にすぎないのだ。
習近平氏が、自らの権力基盤を守るには、是が非でも経済成長率を引上げるほかない。それは、権威主義政治を維持するには絶対不可欠の手段である。まさに、中国共産党は「矛盾の再生産」の上に成り立っているひ弱な政権である。
中国経済の矛盾を一目で理解するには、中国最大の省である広東省の経済状況を観察することがもっとも手短な方法である。広東省の域内経済(GRP)は、中国GDPの10.4%(2024年)を占めており、過去36年間1位を占めきた。省内には、広州市や深セン市を擁する。自動車の広州に対して、ハイテクの深センという組み合わせだ。こうして、中国経済のエンジンが、広東省であると言って差し支えない状況にある。
一方、不動産バブルの原点も広東省である。中国恒大集団は、派手な不動産ビジネスを展開したが、資金繰りが続かずに「自滅」する形となった。恒大のほかに、碧桂園や万科企業という中国不動産業界を牛耳った企業も広東省が出自。今や「気息奄々」状態へ追い込まれている。バブルの発祥地だけに、その後の落ち込みは他省を上回る深手を負っている。これが、広東省経済に大きな後遺症を残しているのだ。25年上半期の東莞市(伝統産業の主産地)では、住宅価格が前年同期比58.8%も急落したほどである。
これをみれば分る通り、広東省は「二つの顔」を持っている。製造業と不動産の「二頭馬車」で、中国経済を牽引してきた。だが、不動産は自滅した形であり、その後遺症によって広東省経済に深い傷跡を残している。こうして、広東省は完全に中国経済の「縮図」になった。広東省経済を分析すれば、中国の未来も解けるのである。
斜陽化の広東省成長率
ここで、広東省の域内経済(GRP)成長率と中国全体のGDP成長率の推移を見ておきたい。(表省略)
中国GDPと広東省GRPの成長率を比較すると、2015~19年までは広東省が上回っている。だが、21年以降は中国GDPが上回って逆転した。理由は、不動産バブルが広東省GRPを押上げ、21年以降は不動産バブル崩壊が逆転させたことだ。広東省経済は、不動産バブルの「光と影」を100%反映している。バブル崩壊の影響が今後、強く出るであろうことを予測させるに十分だ。
次は、製造業へ視点を移しておきたい。
製造業付加価値は、先進製造業と伝統産業(非先進型)に分けると、24年で先進製造業は約56.7%を占めている。業種は、電子・電機、自動車、ロボット、集積回路、スマホ、新エネ車などだ。先進製造業の比率が6割弱にも達したことは、広東省が全国でも最も早く「製造業の高度化」に成功しつつある地域であることを示している。
広東省のハイテク企業は、約7万5000社を数えており、1兆元(約21兆円)規模の産業クラスターが9つも形成されている。有名企業名を挙げると、ファーウェイ(華為技術)やZTE(中興通訊)の通信機器、BYD(比亜迪)やOPPO
(歩歩高)のEV、DJI(大疆創新)のドローンなどだ。いずれも、深センの技術革新と広州の製造基盤が合わさり、世界市場に向けて先端製品を輸出している。
伝統産業の付加価値は、24年で製造業の43.3%である。業種は、繊維、家具、玩具、一般家電(扇風機など)、食品加工、建材など。地元経済の雇用維持に大きな役割を果している。有名企業は、繊維・アパレルのYISHION(以純)や南海繊維集団、陶磁器の冠珠陶瓷(GUANZHU Ceramics)、家具の紅蘋果家具(Red
Apple)などだ。いずれも,輸出でブランド名が知られている。
BYD成長も食い潰す
以上で、広東省製造業の先進製造業と伝統製造業の大まかな分類と輸出状況をみてきた。問題は、広東省がファーウェイやBYDという世界的に有名な企業を抱えながら、最近の広東省GRP伸び率が全国平均を下回っている点だ。つまり、先進製造業がどれだけ成長力を付けても、広東省GRPを押上げられずに深い溝に落込んでいる現実を知ることが極めて重要である。
習近平氏は、「新質生産力」と称して15次5カ年計画で、ロボットやAI(人工知能)の開発に力を注ぐことで、中国経済を浮揚させられると信じている。だが、広東省経済をみれば分るように、中国は不動産バブル崩壊という大津波によって飲み込まれているのだ。この津波跡の「ドロ沼」を片付けない限り、中国経済は浮揚できないことを広東省経済がものの見事に証明している。習氏は、この現実を直視しなければならないのだ。(つづく)
この続きは有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』に登録するとお読みいただけます。ご登録月は初月無料です。
https://www.mag2.com/m/0001684526


コメント
>中国経済の矛盾を一目で理解するには中国最大の省である広東省の経済状況を観察
することがもっとも手短な方法である。
>広東省は完全に中国経済の「縮図」になった。
バブル前、前川リポートで、経済構造を輸出主導から内需主導へ転換する提言があった。
アメリカから言われる前から、日本自身が経済の問題点、改善点を把握できていた。
やっと、中国は5か年計画で消費主導型に転換と。言うほど内需拡大は簡単ではない。
広東省の経済状況がどう変わっていくか、定点観測ですね。
コメントする