中国が、台湾問題をめぐる高市首相発言に反発し、日本への圧力を強めている。日本への旅行や留学を「慎重に」と、嫌がらせを繰り広げている。ただ、中国国内での反日デモが組織されていない点が注目されている。日本が、2012年に尖閣諸島を国有化した際は、大々的な「官製デモ」を行った。デモ参加者には、日当が払われていたのだ。今回、「作為デモ」がみられないのは、国内不況から「政府批判デモ」へ点火する危険性を察知しているからだ。習指導部は、こうした弱みを抱えている。
『日本経済新聞 電子版』(11月19日付)は、「両刃の剣、反日デモ発動は難しく 上層部指示で高まる中国の圧に限度」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙の中沢克二編集委員である。
中国・習近平政権は、首相の高市早苗による「台湾有事」に絡む国会答弁に激しく反発し、次々と対抗措置を繰り出している。中国が批判のトーンを一気に上げたのは高市答弁から6日後だ。中国外務次官の孫衛東が駐中国日本大使の金杉憲治を呼び出して抗議した際、「上層部からの命令による呼び出し」を意味する「奉る」という漢字をあえて使った。
(1)「中国はまず日本の治安への不安を理由として中国国民に日本への渡航自粛、留学の慎重な検討を求めた。複数の中国大手旅行社は日本旅行の販売を停止。日本のアニメ映画などの中国上映も一部が延期に。日中間の交流行事も次々と中止、延期になった。過去の中国を考えれば、破壊活動を誘発する反日デモが中国内で起きても不思議ではない。13年前には、日本政府が沖縄県の尖閣諸島を国有化する手続きをとった4日後、北京で大規模な抗議デモが始まった。各地に広がったデモは「改革・開放」政策に大いに貢献したパナソニックなど日系企業の工場への暴力的な破壊につながった」
2012年の日本による尖閣諸島国有化では、手続きをとった4日後に、北京で大規模な抗議デモが始まった。今回は、高市発言から6日後に日本批判トーンを強めた。デモはないのだ。
(2)「高市答弁から10回以上たった今、中国で反日デモ勃発が伝えられていないのはなぜか。そこには中国の経済・社会的な事情の大変化が関係している。中国は経済規模で日本を超えて世界第2位になった後、2012年には全盛期を迎えようとしていた。北京五輪、上海万博を経て世界中から中国に投資が集まる好循環。心地よい時代だ。好況を背景に全国で住宅・不動産が売れに売れ、価格もみるみる上昇。数年で2倍、3倍になった。所得もどんどん上がる。ある種、自信にあふれた勢いある時代だった」
今回は、中国国内での反日デモが報じられていない。政府が「官製デモ」を発動していない結果だ。国内不況で「ゴマン」といる失業者が、「反政府デモ」を始めたら一大事である。
(3)「現在の中国の雰囲気は13年前とは一変している。景気低迷で住宅・不動産価格は下がり続け、「逆資産効果」が影響して国民は財布のひもを締めざるをえない。大学を卒業しても満足な職に就けるのはわずか。不満をため込んだ大量の若者らが街に滞留している。この状況下、当局側が、反日デモを容認する雰囲気を醸し出せば、瞬く間に全国へ広がり、収拾不能になりかねない。勢い余って不満の矛先が現政権に向かう恐れもある。まさに両刃の剣だ。「反日を名目にした反政権」という便乗運動は過去にもある。1919年の五・四運動などだ。現政権がそれを知らないはずはない」
中国経済の現状は、若者の失業率が18%と厳しい状況だ。この若者たちが、反政府デモを始めたら収拾がつかなくなる。
(4)「18日現在、中国による対抗措置には一定の歯止めがある。中国国内経済に直接、打撃を与えかねない具体的な措置には踏み込んでいない。強い権力を持つトップである習の体面を何が何でも守る一方、できるだけ実害が出ないよう良く考えられた「寸止め」の措置だ」
中国指導部は、自らが実害を被らない範囲で、日本批判を展開している。13年前の反日デモを始めた時のような経済状況にないからだ。
(5)「高市答弁を受けて、日本滞在歴が長い中国の駐大阪総領事、薛剣はX(旧ツイッター)に「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟が出来ているのか」と日本語による投稿をした。外交官としてあまりに非常識な恫喝的な言動だったため、自民党と日本維新の会が反発し、薛剣を国外退去処分とする「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」指定を含む毅然とした対応を求めている。注目すべきは、薛剣の投稿はX上から既に取り下げられた点だ。削除には中国側の姿勢がにじむ」
中国の駐大阪総領事である薛剣が、行ったXへの「暴走投稿」は削除されている。自ら非を認めた形だ。これでは、日本批判も迫力を欠く。
(6)「中国側が一部で示唆する通り、野田政権から安倍政権まで2年半にわたる日中「冬の時代」のように首脳会談ができない期間が長期化するのか。現時点でそこまでのエスカレートには至っていない。とはいえ解決のハードルはそれなりに高い」
中国は、次にどのような手を打つか。貿易に影響を与えるような事態になれば、日本も「反撃材料」を持っている。中国には、代替手段がないのだ。


コメント
いろいろあります。その一つをあげれば、半導体の素材です。これは、生産工程と極めて親和性が高く、日本製品を使い慣れると他社製品に切替えた場合、途端に歩留まり率が下がります。韓国のサムスンは、日本からの半導体輸出が滞って他社製品に切替え、歩留まり率が急落した例が出ています。
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