ロシアは、ウクライナ和平をめぐって「のらりくらり」しながら時間稼ぎをしている。ウクライナの体力疲弊を待つ形だ。最終的には、ロシアの思い描く通りの決着へ持ち込もうという算段だ。ふらつくロシア経済は、ウクライナ侵攻4回目の冬を迎える。国民生活は疲弊しているが、未だ崖っ縁までには至っていない。これが、プーチンロシア大統領にわずかな「余裕」を与えている。
『ブルームバーグ』(11月27日付)は、「ウクライナ侵攻から4回目の冬、ロシア国民に痛み-経済的体力が試練に」と題する記事を掲載した。
プーチン大統領の下でロシアが開始したウクライナ侵攻から4回目の冬を迎え、ロシア国民は日常生活のあらゆる部分で影響の広がりを実感している。ロシア中部と南部の何十もの地域で、エネルギー施設や住宅がドローンとミサイルの攻撃を受けており、前線との近さを実感せざるを得ない。空襲警報のサイレンがほぼ毎晩鳴り続け、戦闘が迫っていると絶えず知らせる。
(1)「前線のはるかかなた、モスクワを含むロシア各地で、経済的痛みを人々は感じ始めた。家計は食費を切り詰め、鉄鋼・鉱業・エネルギー産業も苦境に陥り、成長エンジンに亀裂が幾つも生じつつある。大規模財政出動と記録的なエネルギー収入が支えるロシア経済のレジリエンス(体力)が試練にさらされている。苦しみはウクライナとは到底比べものにならず、プーチン氏に戦争終結を促す可能性は低い。それでも2022年2月の全面侵攻を決断した代償が、これまでになく大きいという現実を浮き彫りにする」
ロシアの今年の冬は、いつもの冬よりも厳しくなりそうだという。戦争の痛みが、あちこちで強くなっているからだ。家計は食費を切り詰め、鉄鋼・鉱業・エネルギー産業も苦境に陥っている。軍需産業は、武器を納品しても政府から代金が支払われない状態だ。この状態が、前記の鉄鋼・鉱業・エネルギー産業へ波及している。
(2)「トランプ米政権は停戦実現に向け、ロシアの石油・天然ガス収入の抑制を目指す圧力を強めている。ロシアが望む制裁緩和を盛り込んだ包括的和平案を巡り、米ロの交渉が水面下で続いているもようだ。米カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンターのアレクサンドル・ガブエフ氏は「全体の経済指標に基づけば、今この戦争をやめることがロシアの最善の利益になるだろう。けれども戦争を終わらせたいと考えるには、崖っぷちに立たされている認識が必要だ。ロシアはそこにまだ至っていない」と指摘した」
プーチン氏は、「時間を味方につけている」。粘り勝ちで、ウクライナを屈服させるという「我慢比べ」をしている。トランプ氏が、ウクライナへ強力な武器を与えて、ロシアの経済的消耗度を引上げれば、事態の打開へ繋がるであろう。だが、トランプ氏には別の思惑がある。ロシアを味方につけて対中国戦略を練っているからだ。
米国が、先に提出した和平案には、ロシアをG8へ復帰させるという項目さへあって仰天させた。トランプ氏が、ロシアを取込もうという戦術が含まれている。ウクライナの犠牲で、米国の対中戦略へロシアを組入れるというのだ。ロシアと米国の下打ち合せでは、ロシアがこれを望んだのであろう。ロシアの本心は、新興国のトップでなく先進国の一角に席を占めて「大国ロシア」の威容を国民に示したいのであろう。
このロシアの願望は、どこまで満たして行けばいいのか。その場合の欧州の反応はどうか。難しい方程式である。だが、なによりも侵略されたウクライナの悲劇の回復が第一でなければならないが、当のウクライナ政府の幹部は、大規模な汚職容疑で揺れている。戦争で国土が消えるかどうかという瀬戸際で、賄賂を懐に入れる輩がいるとは絶句する。そう言ってはいけないが、「タヌキとキツネの化かし合い」という局面である。
こうなると、最前線で命を的にさせられて戦っている両軍の兵士とその家族、犠牲になった兵士や家族が、最大の貧乏籤を引かされたことになる。最前線から遠く離れるほど、それぞれの「欲望」が渦巻いて、この戦争を利用しようとしている一団の人たちが控えているのだ。
ロシアの文豪トルストイは、若き日にクリミア戦争に従軍した経験が、反戦思想の原点となった。晩年には非暴力主義(トルストイ主義)を提唱し、ガンジーにも大きな影響を与えた。トルストイにとって戦争とは、人間の理性と愛を破壊する最大の暴力とみた。このトルストイが、次のような名言を残している。
「戦争は、最も卑劣な人間が、最も高貴な理想を語るときに始まる」。この言葉は、プーチン氏や習近平氏にそのまま当てはまる。プーチン氏は、「大ロシア帝国の復活」を。習氏は「中華民族再興」を語って、戦争を美化しているのだ。正義の戦争などは存在しない。邪悪だけが開戦動機である。


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