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中国外務省は、対日批判が「主要業務」になった観があるほど、外相を筆頭にして動き回っている。だが、深刻な国内経済事情を抱えて、中国の日系企業が撤退するのでは恐れているのも事実だ。薄氷の思いで対日批判を行っていることが分った。

 

中国外務省の劉勁松アジア局長と言えば、訪中した日本外務省の金井正彰アジア大洋州局長と協議した後、ポケットに手を入れて金井局長を見送る姿が報道された。いかにも、「勝者」を演じ冷然とした格好に大きな反響を呼んだ。その劉氏が、金井氏との協議直後に日系企業の拠点を訪問して激励したという。この何とも「締まらない」振舞に、中国の置かれている厳しい経済状況が浮き彫りになっている。口では、強気を言っても裏では、日系企業に「すがっている」情景だ。

 

『日本経済新聞 電子版』(11月30日付)は、「中国局長、日系企業の拠点視察 日中協議直後『安心して事業を』と伝達」と題する記事を掲載した。

 

中国外務省の劉勁松アジア局長が11月に日系大手メーカーの遼寧省大連市にある拠点を視察していたことが分かった。日本外務省幹部と北京で協議した直後のタイミングで、企業側に「中国で安心して事業活動をしてほしい」という趣旨を伝えたという。複数の関係者が明らかにした。

 

(1)「日中関係は、高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁をきっかけに悪化している。中国側には現時点で、政治分野の日中対立を中国国内の生産販売活動に飛び火させたくないとの思惑があるとみられる。劉氏は11月18日、訪中した日本外務省の金井正彰アジア大洋州局長と北京市内の中国外務省で協議した。首相の国会答弁やそれへの中国の薛剣・駐大阪総領事のSNS投稿を巡って双方が立場を言い合い、応酬した。劉氏が協議後、ポケットに手を入れながら金井氏を見送る様子がSNSに拡散したことも話題になった」

 

中国は、表面的には強気に振る舞っても、内実は日系企業が撤退するようなことがあれば雇用に響くので一大事である。こういう使い分けによって、中国は実損の出ないように工夫しているのだ。

 

(2)「関係者によると、劉氏が日系大手メーカーの大連市内の拠点を訪れたのはこの直後だった。企業側の責任者から中国事業の現状について聞き取り、視察を終える際には互いに抱擁して友好ムードを演出したという。中国経済は深刻な内需不足に直面し、外資企業による投資も低迷する。ロイター通信によると中国の李強(リー・チャン)首相は11月5日、上海市で開かれた「中国国際輸入博覧会」で中国への投資促進を呼びかけた。経団連の筒井義信会長は同28日、都内で中国の呉江浩駐日大使と会い、日中の経済やビジネス面での交流の重要性を確認した。継続的な対話でも一致した。関係者によると中国側が面会を求めた」

 

劉氏は、金井氏との協議直後に、日系企業の拠点施設を訪問している。日中友好ムードを演出したのだ。これは、大変な「気配り」である。日系企業に「累が及ばない」ことを伝えたかったのであろう。中国国家統計局が、30日発表した11月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.2。景況拡大・縮小の分かれ目となる50が、8カ月連続で下回っている。サービス業も冷え込み、非製造業PMIは約3年ぶりに50を割り込んだ。こういう「寒風吹きすさぶ」中で、細心の注意を払って日本批判を繰り広げているのだ。

 

(3)「エンターテインメント業界では日中対立の影響が広がる。バンダイナムコホールディングス(HD)は28日から3日間にわたり中国・上海市でイベントを開く予定だったが、29日に中止を発表した。同日には人気アイドルグループ「ももいろクローバーZ」が出演する予定だった。バンナムHDは「やむを得ない事情」と理由を説明した。28日には歌手の浜崎あゆみさんが29日に開催する予定だったコンサートが中止となった。日中対立が今後、製造業にも波及するかどうかは予断を許さない」

 

中国政府は、一般大衆向けには日本のイベント開催を次々と中止へ追込んで、「強い中国」を演出している。日系企業には、外務省高官がわざわざ出向き、ハグまでするという大サービスをしている。中国には、こういう二面があることを図らずも示した。