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IWONは日本特有の発想

中国は既存技術体系で沈没

ラピダスIOWNと連合へ

国際標準化技術で世界覇権

 

日本経済は、1990年代以降を自虐的に「失われた30年」と呼ばれるが、研究開発の面では着々と歩を進めていた。この間、2025年までのノーベル科学賞授賞者数は23名、米国に次いで世界2位である。ノーベル賞受賞者の研究業績は、研究発表から30年ほど経ってから、社会での功績が実証されたという裏づけによって授賞に結びついている。その意味では過去の研究だが、社会を裨益してきたという点では、何物にも代えがたい世界の金字塔である。

 

この金字塔に新たに加わるのが、NTTが開発した光電融合(光と電気の融合)による「IWON:アイオン」(次世代通信網6G)である。まだ、ノーベル科学賞の栄誉には浴していないが、そのインパクトは世界の通信技術を一変させるだけでなく、遠隔医療・自動運転・スマート農業など従来の「情報の伝送」の域を超えた、「意味の伝達手段」になる科学における革命的意義を持っている。

 

人類は、蒸気機関から電気モーターへシフトしたが、通信もこれまでの電気通信から光通信へ転換することで、通信は前記のように意味の伝達手段へ発展する。IWONは、2028年頃に国際標準化され、30年以降に世界的な普及期を迎える。日本生まれの通信技術が、世界の市民生活へ大きな影響を与えるのだ。日本経済に、大きな利益をもたらすことは言うまでもない。

 

今は、「デジタル小作人」と卑下するが、特許料収入などによって確実に「デジタル地主」へ昇格する。それだけでなく、IWON関連機材の輸出も多額に上る。日本経済は、ようやく上げ潮に乗る環境になった。

 

IWONは、光と電気が融合して新たな通信領域である。今年の大阪・関西万博では、オープニングのセレモニーにおいて158ヶ国1万人による「第九」合唱が行われた。それぞれの国から放送されたが、寸分のずれもなく、あたかも一つの会場で合唱している実感がそのまま伝えられた。158ヶ国が、それぞれ遠く離れた距離にもかかわらず、ハーモニーが崩れなかったのは、光電融合による次の特質に支えられた結果だ。

 

1)電力効率は100倍

2)伝送容量は125倍

3)通信遅延は200分の1へ短縮

 

合唱のハーモニーが乱れなかったのは、2)と3)の特質に支えられた結果である。これら機能は、遠隔医療・自動運転・スマート農業に欠かせないものである。通信が、これまでの「情報の伝送」から、「意味の伝達手段」へと大きく変貌することを、大阪万博の実証モニターがわれわれに知らしめたのである。

 

IWONは日本特有の発想

IWONは、その技術開発系譜を追うと日本の西沢潤一博士(故人)の研究が先駆である。西沢氏は、「光でつなぐ社会」という構想で、1964年に「集束型グラスファイバーによる光通信」を特許申請したが、日本の特許庁がその意味を理解できずに却下した。だが、英国のチャールズ・カオ博士が1966年、光ファイバーによる長距離通信の可能性を理論的に提唱した。これが後にノーベル物理学賞(2009年)につながった。西沢氏が、英語で論文を発表していれば、2年も早かっただけにノーベル賞授賞者になっていたはずだ。

 

西沢氏はノーベル物理学を逸したが、その研究姿勢は日本の産業界へ引き継がれた。1976年には、世界で初めて最先端の光ファイバーの量産化を実現した。1980年にはさらに進化「極低損失」を実現し、世界のトップに躍り出た。IWONの光ファイバーには、こういう恵まれた条件が寄与した。IWON誕生の裏には、西沢氏の先覚的理論と最先端光ファイバーを量産する、日本産業界という「産婆役」が控えていたのである。

 

こうして、IWONの開発思想には、西澤氏の卓見が生かされている。西沢氏は1970年代から、電気信号による限界を見越し、光による情報伝送・処理の時代が来ることを予見していた。IWONの中核技術である「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」は、まさにこの思想を社会実装する試みだ。「端から端まで、光だけで構成された次世代ネットワーク」という意味である。IWONは、これを実装化する技術体系をつくり上げたのである。

 

中国は既存技術体系で沈没

Gにおいて、IWONのライバル視されるのが中国である。最近、中国メディアは「中国は現在6G技術実験の第1段階を終え、300を超える重要な技術を掌握している」と報じた。問題は、現在の5G技術の延長にあることで、何らのイノベーションもないことだ。すでに、6G技術はIWONによる光電融合へシフトしている。中国は、通信技術の「孤島」に取り残されており、時代遅れは明らか。日本の「勝利」を認めるほかない状況である。中国には、まだ光電融合技術がないのだ。

 

日本優位という背景説明で、IWON「技術論」の沿革まで説明したのは、正直正銘「日本発」の社会変革の技術体系であることを強調したいためだ。IWONに代る技術が想定できないことから、この技術体系は長期にわたり世界中の変革モデルとして用いられるであろう。用途としては、先に示した遠隔医療・自動運転・スマート農業などは、最も理解しやすい事例である。さらに、スマートシティへの応用が可能である。

 

トヨタ自動車が、静岡県裾野市で実証都市「ウーブン・シティ」を25年9月に開業した。新たな製品やサービスを生み出すための実験の場であるが、産業界横断型の連携が進んでおり、単なる自動車実験都市ではない。「未来の暮らしの実証場」として設計されている。ここから、浮かび上がるのはトヨタ自動車の未来構想図である。トヨタは、すでにIWONを土台にした「モビリティ・テクノロジー企業」へと進化する準備に着手している。この動きは他産業へ波及するであろう。トヨタは、その先駆企業である。(つづく)

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