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中国は、外相が派手に日本批判を繰り広げている一方、駐日中国大使は日本経済界の幹部と自ら接触している。政治と経済は別という挨拶であろう。過去の反日と今回では、明らかに様相が異なっている。派手に動き回っているが、裏では実損が少ない「安全パイ」を探しているのだ。中国経済の落込みが、実力行使を控えさせている。こうなると、中国の振りかざす刀は、ますます「竹光」という印象を強める。

 

『日本経済新聞 電子版』(12月3日付)は、「中国が一見派手な対日報復、それでも東北など東日本が動じない理由」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙の中沢克二編集委員である。 

 

首相の高市早苗による「台湾有事」を巡る国会答弁以降、中国・習近平政権は、次から次へと日本への「制裁措置」を繰り出しているかのような印象がある。とはいえ、この1カ月近く、中国が自らの実体経済、製造業などにも大きな打撃になる両刃の剣を抜いた例があるだろうか。冷静に日本と中国で起きている事実だけを抜き出し、その性格を分析すべきだ。

 

(1)「中国が繰り出す一連の措置で、まず日本各地の経済に影響を与えそうなのが、中国と日本を結ぶ航空便の減便だ。最近、外国人観光客の注目度が高い東日本、東北地方を例にとる。仙台空港は、台湾と結ぶ直行便が毎日、複数ある。2011年の東日本大震災で台湾から多くの支援が寄せられ、宮城、山形、青森など東北各地の都市と台湾の各地が友好交流や姉妹都市の協定を結んだ。これが直行便増加の背景だ。現在は台北のほか、南部にある台湾第2の都市、高雄への路線もある。仙台周辺では元々、台湾からの観光客が多く、最近はタイなど東南アジア、米欧からも増えてきた。比率が低い中国本土からの観光客が減っても影響は限られる」。

 

東北は、もともと台湾の観光客で賑わってきた。最近は、タイなど東南アジア、米欧からも増えている。中国人減少の影響は軽微である。

 

(2)「中国による対日報復の影響が大きいと見られるのが、経済面で中国とのつながりが深いとされる関西地方だ。中国路線が集中する関西国際空港を12月に発着する中国方面便は、3割ほど減る見通し。外国人観光客に占める中国人の割合が比較的高い関西の観光地の場合、打撃は避けられない。一方、東京など東日本観光の起点である羽田空港では、中国側の都合による減便が、なお小規模にとどまっている。世界的に人気の高い羽田の発着枠を巡る競争は激しく、運航実績が下がって枠返上を要求された場合、再び取得するのは極めて困難だ。日中間の航空事情に詳しい日本在住の中国関係者は、「羽田の減便が少ないのは(中国)国有企業の経営に直接、影響させない苦心の策だ」と指摘する。国有が主流である中国の大手航空会社の長期的な利益に関係してくる以上、簡単には踏み切れない。大阪・関西万博という大イベントを終えた関西国際空港とは事情が異なる。東西格差である」

 

羽田空港は、中国航空会社の減便が小規模である。国有企業が多いだけに、その打撃を少なくするという計算が先立っている。関西地方は、中国人観光客の人気スポットであった。それだけに、習近平「命令」の影響を受けている。大阪万博終了も重なり、中国の影響が出ている地域だ。

 

(3)「現在も中国当局は、中国各地に進出し、投資している日本企業に裏で「大切にする」というサインを送り続けている。日本人が中国に入国する際、30日以内なら査証(ビザ)を免除する措置の取り消しにも現時点では踏み込んでいない。多くの日本の企業人が、ビザ免除を利用して中国入りし、ビジネス活性化に貢献している。取り消した場合、経済面の人的交流、対中投資も滞る。日中両国をまたぐ国際的なサプライチェーン(供給網)への影響も必至だ」

 

中国は、日本人向けのビザ免除措置を続けている。取り消した場合の打撃を計算しているからだ。

 

(4)「中国による対日報復、攻勢の大半は、答弁者である高市に的を絞った激しい「口撃」である。それは工夫を凝らしたペンと映像による宣伝戦にすぎない。その口撃には駐日中国大使の呉江浩も自ら参入している。11月30日付けの中国共産党機関紙、人民日報に掲載した高市答弁を批判する署名入りの文章である。ただ、その呉江浩でさえ、中国国内向けアピールと、日本での行動は必ずしも一致していない。同28日には、経団連会長の筒井義信と会い、対話継続で一致した。面会は中国側が求めたという。その後、超党派の日中友好議員連盟の幹部らとも接触している。日本の経済界、政界関係者らとの接触は、新たな動きである。そこには、中国経済の内情、寂しい懐具合も透けてみえる」

 

中国大使の呉江浩氏は、裏へ回れば日本の経済界、政界関係者らとの接触している。「二刀流」である。

 

(5)「不況下にある習政権の台所事情は、思った以上に厳しい。十分に計算し、中国経済が傷付かない範囲内で苦心しながら、一見、派手な宣伝戦を仕掛けている。対日制裁として取り得る措置にも、おのずと限界があるのだ。日本側は激しい口撃に乗せられてはいけない。とはいえ焦りは禁物。水鳥の羽音に驚いて過剰反応すれば、解決の道がかえって遠のく」

 

中国の繰り広げる「反日」は、過去のケースと異なっている。自らが招いた未曾有の不況で、足下がふらついている。これでは、日本への「威圧行為」も手加減せざるを得まい。口撃が主体だ。