中国は、「新質生産力」の名のもとにAI(人工知能)、ロボットなどに力を入れている。27~28年に自給自足化を目標としているが、素材や製造装置では圧倒的に海外へ依存している。その意味では、半導体の自給自足化は遠い先の話だ。
問題は、成熟半導体ですら自給自足できない段階で、AI半導体の完全自給自足は飛躍した目標である。成熟半導体の自給自足に失敗している要因は、「製造装置依存」「材料依存」「設計力不足」の三重苦の結果である。この段階で、AI半導体の完全自給を目指すのは飛躍的過ぎ、失敗する確率の方が極めて高いと指摘されている。
『日本経済新聞 電子版』(12月6日付)は、「中国AI半導体『自立自強』への道 材料や装置は苦戦」と題する記事を掲載した。
米国によるハイテク分野の対中輸出規制の影響で、中国は現在、半導体の国産化を急いでいる。国策銘柄との位置づけから株式市場では半導体関連への期待が高まっているが、各社の業績に目を向けると、国産化の道のりは分野によって進捗度に差が出ているのが実情だ。
(1)「中国当局は「自立自強」を加速する方針を打ち出し、米国に依存しないサプライチェーン(供給網)の構築を進める。国産人工知能(AI)半導体の本丸となる華為技術(ファーウェイ)は9月、2028年までにAI半導体4製品を投入するロードマップを公開した。中国新興AI・DeepSeek(ディープシーク)は8月にリリースした新型の大規模言語モデル(LLM)について、「次世代の国産チップ向けに設計」すると明言した。中国の信達証券は「中国のAI計算がソフト・ハード両面で国産化に向けて協調し始めていることを意味し、海外への依存を減らす効果がある」と期待する」
成熟半導体ですら自給できない段階で、AI半導体に巨額投資を行えば、成果が限定的となり「投資効率の悪化」が避けられない。国家資金が研究開発に集中することで、他の産業への投資が不足し、経済全体のバランスを崩すリスクが高まる。
AI半導体へウエイトを移しすぎると、成熟半導体の生産不足が続き、自動車・家電・産業機械など基盤産業が打撃を受ける恐れが強まる。結局、AI半導体に偏重することで「基盤産業の弱体化」と「ハイテク分野の過剰投資」が同時に進むという矛盾が起こる。このほか、中国のスパイ行為などが国際的に注目されることで、国家としての信頼性欠如が起っている。この結果、中国製AI半導体は国際市場で採用されにくいリスクを抱えるであろう。こうした事情によって、中国AI半導体は「国内限定技術」となり、輸出市場を失い外貨獲得が難しくなる危険性と隣あわせである。
(2)「中国版エヌビディアとも呼ばれる中科寒武紀科技(カンブリコン)の2025年1〜9月の売上高は前年同期比14.9倍の46億元、最終損益は16億元の黒字(前年同期は7億2400万元の赤字)となった。7〜9月期でみても売上高は14倍と、業績は飛躍的な伸びが続いている」
カンブリコンの業績は、飛躍的な伸びが続いている。ただ、国家としての信頼性低下から、国内限定製品に終るリスクを負っている。
(3)「材料分野はまだ国産化が進んでいるとはいいづらく、海外製に頼らざるをえない面が多い。日本が強みを持つ半導体の回路形成に使うフォトレジスト(感光材)の分野では、日本企業が対中輸出を停止したとする韓国メディアの報道もあった。木原稔官房長官は報道を受けて「変更は行っていない」と発言したものの、中国勢にとっては外部依存リスクが懸念される分野だ」
このパラグラフは、中国半導体の弱点を表わしている。半導体素材では、日本へ大きく依存しているからだ。
(4)「仏調査会社ヨールは、2027〜28年に中国の半導体製造は自給自足を達成すると見込む。製造装置の国産化については「進展しているものの限定的」とし、2030年に52%に達する可能性があるとしている。先端半導体の製造に不可欠な露光装置についても、非上場の上海微電子装備集団(SMEE)などが技術向上に取り組んでいるものの、AI半導体サプライチェーンのボトルネックになっている状況だ。中国半導体チェーンは一定の成果が見え始めてきたものの、なおも変化のまっただ中にある」
技術的な弱点を多く抱えているだけに、余りにも自給自足に拘っていると大きな失敗が起きる懸念を抱えている。


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