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政権維持が唯一の目的

経済は長期低迷不可避

解放軍は本格戦争回避

日本が西側諸国の中核

 

現在の中国経済は、不動産バブル崩壊後で手に負えない事態に直面している。習近平中国国家主席は、これまで「新質生産力」とされるEV(電気自動車)、電池、太陽光パネルなどで、不動産バブル崩壊後の穴埋めができると楽観してきた。これが今、中国経済にとって取り返しの付かない事態を招いている。不動産バブル崩壊が、地価暴落をもたらした結果、地方政府の土地売却収入を減らして歳入欠陥を生んでいるのだ。

 

中国財政は、地方政府の独自財源が少なく土地売却収入に多く依存するシステムである。それだけに、長期化する不動産不況が地方政府の財源難をもたらし、さらに債務へ頼る度合いを高めている。土地売却収入を担保にした返済予定の債務に加えて、現在の財源不足を補う新規債務によって、債務残高は雪だるま式に増えている。中国経済は、地方から崩れる構図になった。もはや、一刻の猶予もならない事態である。

 

25年1~10月の地方政府による土地売却収入は、2兆5000億元弱にとどまる。通年でも3兆元程度だ。もっとも多かった21年は、8兆7000億元を超えていた。25年は、実に3分の1へ低下する。これだけ、地方財源が急減する計算になる。赤字拡大だ。

 

こうした状況下で、高市首相による台湾関連発言が出てきた。習氏は、この発言に対して単なる外交的反発ではなく、次のような目的に利用する形で「日本批判」を展開している。

 

1)中国の経済的苦境は、上記の通り構造的である。これに伴う長期の国内不満は、日本批判によって転嫁させるのが最適である。上海で、日本人アーチストが舞台出演中にも関わらず強引に打ち切らせたように、民衆へ反日を焚きつけている。こういう官製による「日本排斥」は、中国政府が長期の反日スケジュールを立てている証拠とみるべきだ。

 

2)台湾問題は中国の内政問題であり、日本が干渉してきたとして「日本侵略論」を展開している。北京政府は現在、台湾統治権を持っていないことから、台湾への軍事作戦は国際法で「侵略行為」とみなされる。これを覆い隠すべく「日本侵略論」にすり替えているのだ。自らの侵略戦争を正統化した、実に巧妙な戦術である。

 

習氏は、以上の視点に立っているが、いずれも短期的に解決できる問題ではない。特に、日中間には、価値観が異なる地政学的対立要因を含んでいる。今回、中国側の日本批判によって、これが明確にされた。地政学という長期対立リスクが、高まっているとみるほかない。

 

政権維持が唯一の目的

日中対立は、正確に言えば習近平氏の「独裁体制」と日本との対立と言い換えた方が適切である。習氏の独裁体制は、次のような構造になっている。習氏が、中国共産党組織を集団合議制から「習近平1人体制」へと換骨奪胎した結果だ。中国共産党の最高指導部は、7人の政治局中央委員から構成されている。従来は、「1人1票」で平等であった。習氏が国家主席に就任以来、習氏がトップで、他の委員は「子分」という形に格下げされている。合議制から主従関係に変ったのだ。

 

中国最高指導部は、習氏一人の思いのままに動く異常組織に変質した。これが、中国を「危険で脆弱な構造」に変えた理由だ。「3中全会」と言われる中央委員200人による全体会議は現在、中国の中長期経済計画が事実上、習氏一人のさじ加減で決まるという変質ぶりである。委員会で知恵を集めて合議するものではなくなった。25年は「4中全会」となったが15次五カ年経済計画(2026~30年)では、不動産問題がたった1行で片付けられるほど軽い扱いである。余りにも、杜撰と言うほかない。

 

習氏は、国家主席に就任後、「国家安全保障」を最高の政策指針に据えている。あらゆる問題が、共産党安泰の視点で貫かれている。産業政策も、補助金を付けて育成する方針を貫く。現に、EV・電池・太陽光パネルの産業は、国家安全保障という視点で育成された。中国製品が、世界中を埋め尽くすことで、中国の国家安全保障に繋がるという認識である。

 

ここで思い当たるのは、中国EVに「スパイ装置」が据え付けられているという西側諸国の警戒である。イスラエルと英国では、EVにバックドアを発見したという。ノルウエーでも中国製EVバスにバックドアが付けられていたことが発覚した。中国の国家安全保障目的遂行では、スパイ行為が合法化されるという驚くべき国家である。

 

中国では、不動産開発産業は国家安全保障とは無縁な存在である。国内産業であり、輸出は先ず考えられないからだ。こうした習氏の目からみれば、不動産開発事業は保護して育成する対象でないのだ。習氏が、不動産バブル崩壊後遺症という重大問題を見逃している背景であろう。

 

前述のように、地方政府による25年土地売却益は、21年比で6兆2000億元(約124兆円)も減少した。この低下現象は、今後も続き減少幅は拡大して行く見通しである。習氏には、この事実を重視していることが窺えないことから、中国経済は時間の経過と共に「キリモミ状態」へ落込む危険性が高まるであろう。2030年代の平均潜在成長率が、1.7%まで低下するという2019年の予測(中国国務院と世界銀行の共同試算)に現実味を増すのだ。

 

経済は長期低迷不可避

中国経済は、習近平氏の認識の如何にかかわらず今後、長い低迷「軌道」に入り込んだと言って間違いない。不動産バブル崩壊による地価下落が、地方政府の財政赤字を構造的に増やし続けることによって、過剰債務が経済への負担を増すからだ。こうなると、国民の不満は増え続けるはずである。習氏は、この不満をどのようにして抑え、外へ向けさせるのか。「仮想敵」をつくってその国を集中的に批判し、「愛国心」をくすぐる手法が最適なはずである。その仮想敵が今、日本になったのである。(つづく)


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