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オランダASMLが、築いた露光型1.4ナノ半導体製造装置の分野へ、キャノン(製造装置)・大日本印刷(素材)がインプリント方式で進出を果した。ASMLのEUV露光装置は、最先端半導体量産に不可欠。世界で唯一の供給者であり、価格は1台約300億円もする。世界の半導体工場は、ASMLの装置を前提に設計されており、世界市場の約9割をASMLが握っている。キャノン・大日本印刷は、この分野へ進出することで、日本半導体製造装置にとって大きな一歩となった。

 

『日本経済新聞 電子版』(12月9日付)は、「1.4ナノ半導体、電力10分の1で製造 DNPとキヤノンが27年実用化」と題する記事を掲載した。

 

大日本印刷(DNP)は、先端半導体を消費電力10分の1で生産する技術を開発した。キヤノンが手がける新手法の製造装置向けに、次世代の1.4ナノ(ナノは10億分の1)メートル品に対応する中核部材を2027年に量産する。人工知能(AI)半導体の製造コストが大幅に下がる可能性がある。

 

(1)「現状、最先端の半導体を量産するには世界でオランダのASMLホールディングだけが生産する極端紫外線(EUV)露光装置が必要だ。ウエハー(基板)上に回路を描く「露光工程」は半導体の製造コスト全体の35割を占める。回路が微細になるほど光を照射する回数が増え電力を使う。EUV装置はⅠ台300億円程度と半導体メーカーの投資負担は重い」

 

オランダのASMLが、独占状態の最先端半導体製造装置分野へ、キャノンと大日本印刷が協力して進出することに成功した。ASMLは、ウエハー(基板)上に回路を描く「露光工程」の製造装置だ。

 

(2)「これに対し、キヤノンの「ナノインプリント」製造装置は、ウエハーにハンコを押すように回路をつくる。DNPは1.4ナノ世代まで使える微細なハンコに相当する回路原版「テンプレート」を開発した。これまでは2ナノなどの先端半導体には対応できなかった。テンプレートをつくる際には露光技術を使う。今回、材料の選定や条件設定を見直し、半導体の回路の密度を2倍にする「ダブルパターニング」と呼ばれる技術も使った」

 

キヤノンの「ナノインプリント」製造装置は、ウエハーにハンコを押すように回路をつくる。大日本印刷は、ハンコに相当する回路原版「テンプレート」を開発した。この両社の技術が合体してASMLへ対抗する製品となった。

 

(3)「ナノインプリント装置は、キヤノンが23年に販売を始めた。強い光源を使って回路図を転写するEUVと比べ、電力消費が小さい。本体は1台数十億円と見られ、EUVより導入費は大幅に下がる。ただ、テンプレートを直接接触させて回路を描くため、不純物がはさまれば欠陥になりやすい。処理速度の向上なども課題で、メモリー大手のキオクシアホールディングスなどが検証用に導入したのみで、量産ラインでの採用には至っていない」

 

キャノンのナノインプリント装置は、電力消費が少ないと言う特性を持つ。本体は1台数十億円と見られ、ASMLの300億円からみれば5分の1程度だ。

 

(4)「1.4ナノ品はAIデータセンターや自動運転に使われ、頭脳を担う。台湾積体電路製造(TSMC)が28年、韓国サムスン電子は27年の量産開始を目指しており、ナノインプリント方式にも関心を示しているもようだ。各社の既存の半導体工場は露光装置の導入を前提に設計されており、ナノインプリントが選ばれるハードルは高い。工場の新設などの際に組み込まれるためには、高い経済性と実用性を示す必要がある」

 

既存の半導体工場は、ASML社装置を前提に設計されているほど。キャノン製装置が採用されるには大幅なコスト削減が前提になる。

 

(5)「露光装置は、かつてキヤノンとニコン2社で過半の世界シェアを押さえていた。だが、ASMLが微細化競争に勝利し、現在は世界市場の9割を占める。今後、ナノインプリントの市場が広がれば、日本勢の巻き返しが期待でき、DNPのような材料メーカーの新規参入も見込める。富士フイルムホールディングスは回路を描く際にウエハーに塗布する材料で参入を表明している。キヤノンは、ナノインプリント装置を24年に米テキサス州や米インテルなどの半導体企業が参加する官民組織「テキサス・インスティチュート・フォー・エレクトロニクス」向けに初出荷した。EUV露光装置と市場を分け合う構図をつくれるかが焦点になる」

 

キャノン製装置が、ASML製装置と並んで採用されるには、未だ相当の時間が掛るとみられる。だが、難攻不落とされたASML社装置へ一歩、足を踏み入れたことは大きな進歩である。