中国の輸出量が、過去5年間で急増したのに対し、輸入は横ばいで推移している。中国は工業製品の世界市場でシェアを大幅に拡大した。このことは、厄介な真実を明らかにしている。中国は他のすべての国・地域を犠牲にして、「近隣窮乏化」成長モデルを追求していることだ。国内では、補助金による過剰生産を続け、その捌け口を輸出でカバーしているのだ。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月9日付)は、「中国経済成長のカギは『近隣窮乏化』モデル」と題する記事を掲載した。
ゴールドマンは新たな予測で、この関係がマイナスに転じたと結論付けた。中国の成長を主導しているのは「製造業の競争力を一段と高め、輸出を増やすという指導部の決意と能力」だという。
(1)「より安価な中国製品が購買力を高める限りにおいては、これは他国にとってプラスだ。しかし、その恩恵に比べれば、各国の製造業が中国との競争によって受ける打撃の方が大きい。それでも中国の成長は、同国の国民にとって良いことであり、中国の輸出産業向けに原材料を輸出する一部の国にとっても良いことだ。しかし、ゴールドマンはそれが今後、欧州や東アジアの他の工業国やメキシコにとって、ますます大きな障害になると予想している」
世界経済は、各国の輸出入がバランス取れて初めて安定した成長が可能になる。中国のようなダンピング輸出による「独り勝ち」は、ルール違反である。
(2)「経済の基本原則には、2人の個人や2国が貿易をすれば双方が恩恵を受けるというものがある。第2次世界大戦後の数十年間にわたり、米国は世界一の輸出国および経済大国だった。米国は成長とともに輸入を増やし、貿易相手国を手助けした。貿易相手国は成長すると、米国が生産したものの購入を増やした。貿易の拡大はすべての国の専門性を高める後押しをした。これはさらなる競争、技術革新、選択肢の増加、そしてコスト削減につながった」
米国は、基軸通貨国として自国市場を開放してきた。それが、貿易大赤字を生んで、「トランプ関税」発動という事態を招いている。中国は、米国とは逆に輸出だけで 輸入を増やさないのだ。
(3)「中国は現在、世界第2の経済大国で世界最大の輸出国だが、その哲学はかなり異なる。中国が貿易の均衡や比較優位の原則を信じたことは一度もない。西側諸国から重要な技術を取り入れたものの、長期的な目標は常に自給自足だった。中国の最高指導者である習近平氏は2020年、このアプローチを「双循環」と呼んで、体系化した。これによって「国際的な工業網の(中国への)依存度が高まる」一方で、中国の生産の「独立性」と「自立性」が確保されると述べた」
習氏は、身勝手な経済目標を立てている。中国は、生産の「独立性」と「自立性」を確保できれば、それで満足としている。狙いは、世界覇権である。世界中を中国のダンピング輸出で覆い尽くすというもの。現実にはあり得ないことだ。
(4)「中国が、航空機や半導体といった高付加価値の製造業へと生産分野を広げる中でも、習氏は玩具や衣料品などの低付加価値の生産を放棄してはならないと命令した。政府は国外に投資する中国企業に対し、「iPhone(アイフォーン)」や電池の生産などに関して重要なノウハウの移転を思いとどまるよう求めた。習氏は、同国の経済モデルを投資・輸出・貯蓄を主体とするものから、個人消費と輸入を主体とするものに移行させるための財政改革を拒否した」
中国には、「比較生産費原理」という昔からの貿易ルールを無視している。高付加価値製品も低付加価値製品もすべて「守れ」と指示している。雇用不安の防止である。自国の「ゴミ」もすべて海外へまき散らせという戦略だ。越境通販が、この戦略を担っている。
(5)「中国の猛烈な輸出攻勢に歯止めをかける最も効果的な方法は、米国が同じような考えを持つパートナーと協力することだろう。例えば、中国製自動車に共通の制限を課しつつ、協力国とは相互に制限を低く抑えるといったことだ。これまでのところ、トランプ氏はこうした共同戦線に関心を示していない。ただ、同氏が交わしている2国間協定には、中国からの輸出に抵抗するためのインセンティブが含まれている。マレーシアが、国家安全保障を理由に米国が中国に課している輸出規制に相当する措置を取ることで合意したのは、その一例だ」
トランプ氏は今、TPP(環太平洋経済連携協定)を脱退したことを悔いているであろう。TPPで守られた正常貿易ルールが実現していれば、米国もこれほど苦しむことはなかったであろう。


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