テイカカズラ
   


基礎研究無視の報い

革新技術と覇権国家

浮上する日本の存在

中国ブロック化危機

 

中国は、高市首相による「台湾発言」の撤回を求め、執拗なまでの威圧をかけ続けている。最近は、中国軍機による自衛隊機へレーダー照射する危険行為にまでエスカレートさせた。なぜ、ここまで暴走しているのか。原因は,国内経済の長期不況に伴う国民の不満を「反日」によって発散させることにある。独裁者が、よく行う手慣れた手法である。本来ならば、国内で官製デモを組織させたいところだが、それは差し控えている。国民の不満が即刻、共産党批判デモへと点火するリスクを恐れているからだ。

 

習近平国家主席は、こういうジレンマを抱えながら日本非難を続けさせている。中国経済は、内需不振をカバーすべくダンピング輸出による「近隣窮乏化政策」へ走っているほどだ。また、レアアース(希土類)による「独占状態」をテコにして、西側諸国の製造業を脅かすことで、ダンピング輸出を支援する戦術を展開している。表面的にみると、中国経済は輸出が順調であることから、技術的に優れているという「誤診」まで生んでいる。

 

英誌『エコノミスト』(25年11月29日号)は、中国経済を次のように絶賛している。「今後の技術革新は、中国のような権威主義的な独裁体制や過剰な補助金提供によってのみ可能であり、民主主義国には追随できない。だが、中国の民間企業による創意工夫や規制当局の機敏な対応も重要な要素だ。こういった点では、残念ながら西側は誤った方向に進んでいる」

 

この見方は、極めて皮相的である。中国が、過剰生産による価格低落でダンピング輸出していることは、既存技術による大量生産の結果にすぎない。現に、企業収益は悪化しているのだ。生産性は低下しており、GDPの上昇に寄与していないことが、何よりの証明であろう。技術革新とは、従来にない生産方法の開発や新製品を生み出すことにある。中国は、この二つのいずれも実現したわけでない。既存技術の模倣と過剰生産が、工業製品の世界的生産シェアを高めているに過ぎないのだ。創造性とは無縁である。

 

基礎研究無視の報い

中国が、既存技術による過剰生産に陥り、価格の低落に苦しんでいるのは、本当の意味での技術革新が起っていない結果だ。補助金によって支えられた経済ゆえに、生産者価格はすでに3年以上のマイナス局面にある。ここからの脱出には、新製品開発や新たな製造技術の開発以外に道はない。それには、基礎研究を充実させることが最善の方法である。中国は、これを軽視して応用研究のみを重視してきた。中国企業は、互いに模倣合戦に陥っている。基礎研究なしに、イノベーション(革新)は生まれないのだ。

 

中国の研究開発費に占める基礎研究の比率は2018年現在、5.%にとどまっていた。基礎研究の比率は、日米の15%程度(21年)と比べて、3分の1程度という低水準である。中国は、15次5カ年計画(2026~30年)において、基礎研究比率を押し上げる方針である。ただ、基礎研究費が増えたからと言って、すぐに独創的な結果が出る訳でない。基礎研究の積み重ねが成果を生むのだ。中国は、この分りきった事実を行わず、目先の利益を追ってきた。それが、現在の過剰生産を生んだ背景にある。

 

中国は、2035年までの「科学技術強国」実現を国家戦略に掲げている。これらの分野は「高質量発展(質の高い発展)」を支える「新質生産力(新しい質の生産力)」の中核と位置づけられている。中国のイノベーションは、国家が示した重点分野に企業・人材・資金を集中させる「挙国体制型」が特徴だ。こうして、既存技術を新領域に応用し、世の中に広く浸透させる社会実装型を得意としている。

 

15次5カ年計画では、「基礎研究と独創的イノベーション能力を著しく強化」し、「異例の措置」を講じ、ゼロから新技術を生み出す力を高める、としている。このようにマジックのごときことが、科学の世界で短時間に起こるであろうか。実は、次期通信網6Gとして国際標準化を視野に収めたNTTの「IWON=アイオン」が現在、100年から200年に一度起こるほど希有な革命的技術の登場と評価されている。2028~30年に国際標準化の見通しだ。これが、中国のイノベーションを阻む大きな要因となるはずだ。

 

IWONは、光と電気の融合である「光電融合」と呼ばれ、通信革命と言える内容だ。この結果、2030年以降は世界の通信網が一変する。現在、中国が国家主導の下で進めている人型ロボットとAIの融合も、西側諸国へ輸出する場合はIWONの介在で機能する時代が迫っている。中国が、IWON規格に則ったものでなければ輸出が不可能となるのだ。もう一つ、中国製品には「バックドア」リスクがある。西側諸国は当然、中国先端製品の輸入を忌避する事態となろう。

 

中国は、通信革命であるIWONを採用するのか不明である。また、バックドア問題が中国の国家的信用度を引下げていることも暗い影を落としている。バックドアは、技術の軍民共用という国家安全保障重視のもたらした落し穴だ。これを清算できるのかも不明である。習氏の描く「中華民族の夢」は、通信革命の登場によって厳しい「限界状況」を迎えるだろう。IWONは、「いかがわしい」中国先端製品を排除する可能性を持つのだ。(つづく)

 

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