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ドイツと中国は過去20年間、経済面で理想的なパートナーだった。世界貿易の活況から両国とも大きな恩恵を受けていた。中国が、世界向けに消費財を製造するためにドイツが必要な機械を供給していた。だが今や、中国はドイツを必要としなくなり、ドイツは関係解消を望んでいる。中独関係が、逆転したのだ。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月22日付)は、「中国との『離別』 ドイツが望む理由」と題する記事を掲載した。

 

ドイツの企業と政治家はここ数十年で初めて、同国を工業大国に変えた無制限の自由貿易に疑問を呈している。製造企業は、製品をより安価で迅速に提供し、品質も向上している中国の競合企業からの保護を求めている。ドイツのメルツ首相は先月、政府が国内の鉄鋼メーカーを中国の競合企業から保護すると表明した。

 

(1)「ドイツの中国離れは、しばらく前から進行していた。中国メーカーは低い生産コストや人民元安、政府の補助金に支えられ、最近までドイツ企業が支配していた分野で、中国国内だけでなく欧州を含む他の市場でも、ますます優位に立つようになっている。しかし、そのタイミングはトランプ米大統領と大いに関係がある。化学品から自動車部品に至るまで、安価な中国製品の波が今年、米国の新たな関税障壁ではね返され、欧州に押し寄せ始めた。その結果、かつて経済的自由主義の象徴だったドイツが、関税や規制障壁、その他の保護主義的措置に傾倒しつつある」

 

中国は、トランプ関税で対米輸出が困難になった代替市場として、ドイツへ焦点を合わせて輸出ドライブを掛けている。ドイツは、こうして保護主義的措置へ傾いている。中国製品の排除である。

 

(2)「フランスのエマニュエル・マクロン大統領は最近の中国訪問後、仏紙レゼコーに対し「ドイツは動き始めており、自国にも影響を及ぼす不均衡を認識しつつある」と語った。「中国は欧州の産業・イノベーションモデルの中核を直撃している」。欧州で最も影響力のある自由貿易の声が弱まっていることは、米中間の大国間競争と、欧米で台頭するポピュリスト勢力が主導する反グローバル化の動きを背景に、世界経済がいかに分断されつつあるかを示している」

 

フランスのマクロン大統領も、ドイツの保護主義的措置に「賛意」をみせている。

 

(3)「ドイツの方針転換は、経済と政府の全ての分野にまだ浸透していない。中国との関わりが深い企業ほど、軌道修正は困難だ。一部の自動車メーカーや化学品メーカーは依然として中国に多額の投資を行っている。ドイツの政治家は、同盟国が中国との対峙(たいじ)と融和の間で揺れ動く中、その動向を注視している。だが進むべき方向性は明確になりつつある。まず企業から始まり、その後、国内の影響力のあるロビー団体に浸透し、最近では政府にも広がっている」

 

在中ドイツ企業は、中国の補助金に魅力を感じており、軌道修正が遅れている。だが、ドイツ政府は中国からの輸出急増に危機感を漲らせている。

 

(4)「口火を切ったのはドイツ産業連盟(BDI)だ。2019年、中国に友好的な立場を捨て、同国が「システム全体における競争相手」だとする報告書を発表した。今年に入ると、ドイツ経済の屋台骨を支える輸出志向の企業間取引企業から成るドイツ機械工業連盟(VDMA)が、中国の不公正な競争を非難した。VDMAは、欧州の法律を無視する中国の輸出企業に対する反ダンピング措置と制裁を求めている。ドイツ政府は来年発表予定の新たな経済安全保障戦略に加え、「中国との関係における経済、技術、安全保障政策上のリスク増大に対処するプロジェクト」に取り組んでいると、政府当局者は述べた」 

 

ドイツ産業連盟やドイツ機械工業連盟は、中国の不公正な競争を非難している。ドイツ政府は、来年発表予定の新たな経済安全保障戦略に加え、対中の経済、技術、安全保障政策上におけるリスク増大を指摘する予定だ。

 

(5)「中国が投資財の買い手から製造側へと脱却したスピードは目覚ましい。シンクタンクのロジウムが近く発表する報告書のデータによると、19年から24年の間に、ドイツは発電設備と機械の世界市場シェアで首位の座を中国に明け渡した。化学品と自動車におけるドイツの優位性は今や紙一重であり、電気機器市場では中国に大きく後れを取っている。ドイツは今年初めて、中国から輸入する資本財が中国への輸出を上回った」

 

中国は、改革開放時に日本企業の技術を強引に開放させた。それ以降、日本企業は対中へ警戒姿勢をみせてきた。ドイツ企業は、まんまと中国の術中に嵌まったのだ。

 

(6)「こうした動向は加速している。ドイツ経済研究所によると、25年第2四半期には中国からの手動変速機の輸入がほぼ3倍に増加した。ドイツ自動車メーカーの中国市場におけるシェアは、2年間で50%から3分の1に低下した。ドイツの対中輸出は19年以降に約25%減少した一方、輸入は急増した。ドイツ政府の統計によると、今年の対中貿易赤字(財・サービス)は過去最大の880億ユーロ(約16兆円)に達する見通しだ。これは深い傷痕を残している。産業部門は19年以降に雇用の5%近くを削減した。自動車部門は同期間に約13%の雇用を失った」

 

ドイツの対中輸出は、19年以降に約25%減少した一方、輸入が急増している。今年の対中貿易赤字(財・サービス)は、過去最大の880億ユーロ(約16兆円)に達する。ドイツは従来、中国市場がドル箱であった。いまやこの関係が逆転したのだ。中国のダンピング輸出の凄さが分るであろう。こうして中国は、ドイツの支持を失っていく。