米海軍の電子攻撃機が、ベネズエラ作戦において極めて重要な役割を果たした。特に注目されているのは、敵の防空網を一瞬の間「攪乱」する能力だ。中ロの防空網は、この米軍の電子攻撃で機能を狂わされてしまった。ベネズエラ大統領マドゥロ氏の邸宅は、ベネズエラ最大の軍事基地内の真ん中にあったという。それでも、米軍に拘束されたのだから、電子戦の威力の凄さに脱帽するほかない。
日本経済新聞 電子版』(1月9日付)は、「米軍の電子攻撃機『グラウラー』、ベネズエラ作戦で要に 専門家分析」と題する記事を掲載した。
米軍が南米ベネズエラで実施した軍事作戦で、通称グラウラーと呼ばれる電子攻撃機「EA-18G」が大きな役割を果たしたとの見方が専門家に広がっている。米軍がほぼ無傷のまま敵の防空網をかいくぐり、一国の指導者を生け捕りにできた背景には、電子攻撃の威力があった可能性がある。
(1)「米軍は奇襲攻撃をしかけ、作戦開始から5時間弱でベネズエラの首都カラカスからマドゥロ大統領を連れ去った。ルビオ米国務長官は、マドゥロ氏の邸宅が「国内最大の軍事基地内の真ん中」にあったと振り返る。何が起きていたのか。作戦から5日が経過し、軍事専門家の分析が進んでいる。英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のトーマス・ウィズィントン氏はグラウラーが作戦成功の主な要因というのが「非常に信頼できる評価」と語る。グラウラーはレーダーや通信ネットワークを電磁波などで妨害する。敵のレーダーを検知して破壊する対レーダーミサイルも搭載する」
ベネズエラは、中ロの優秀な防空網を備えていたが、電子戦やサイバー攻撃、ステルス機による浸透には脆弱な面があるという。特に、指揮通信系統が集中管理されている場合、そこを破壊されると全体の機能が麻痺するリスクがある。今回は、この盲点を突かれた形だ。防空網は技術的に強力でも、運用や柔軟性、実戦経験の面で課題を抱えていたのだ。米軍は、これまでいくつかの電子戦を経験している。その経験値では、ベネズエラは「敵」でなかったのであろう。
(2)「グラウラーが相手の防空網を乱して、他の戦闘機やヘリコプターが攻撃を受けるのを回避させる役割を果たしたとみられる。米国防専門誌、「ミリタリー・ウォッチ」によるとグラウラーと比較可能な能力を持つのは中国軍のみだ。米軍制服組トップのケイン統合参謀本部議長は「ベネズエラの防空網の無力化」は様々な技術や妨害手段を織り交ぜて実現したと説明する。相手レーダーがとらえにくい米軍の主力ステルス戦闘機F35も投入した」
米軍は、世界一の軍事力を誇る手前、ミスは許されないという拘束劇であった。
(3)「トランプ大統領は記者会見で、詳細を避けながら「(米国の)特定の専門技術によってカラカスの電気をほぼ消灯させた」とも言及した。ウィズィントン氏は「重要インフラを標的にサイバー攻撃をしかけ電力供給を不安定化させた」ことを指すと分析する。軍事作戦には米中央情報局(CIA)などの情報機関に加えて、米国家地球空間情報局(NGA)が関与したのも明らかになっている。NGAは軍事活動を支援するため画像・地図データを活用する」
米軍が、圧倒的に実戦経験を積んでいるのは間違いない。湾岸戦争、コソボ紛争、イラク戦争、シリア空爆、そして最近のベネズエラ作戦に至るまで、実戦での電子戦運用を繰り返し洗練させてきた。これから言えば、ベネズエラが劣勢であったのだろう。
(4)「第1次トランプ政権で米国家安全保障会議(NSC)の高官だったカースティン・フォンテンローズ氏は、米軍がベネズエラ側から検知されず、交戦を最小限にできたのは「持続的な情報収集・監視・偵察と電子攻撃、そして非常に短時間に圧縮した作戦のタイムライン」と指摘する。防空網の乱れの一瞬の隙に、米陸軍の精鋭部隊デルタフォースや「ナイトストーカーズ」と呼ばれる第160特殊作戦航空連隊がマドゥロ氏の邸宅に降り立ち、拘束に動いた。米メディアによると米中央情報局(CIA)は2025年夏ごろからベネズエラに潜入していた。極秘裏に内通者が大きな役割を果たした可能性も否定できない」
米軍は、防空網を攪乱させた一瞬の隙に、特殊部隊をベネズエラ最大基地の中へ降り立たせた。これは、曲芸的な作戦だ。
(5)「英シンクタンクの国際戦略研究所(IISS)によると、ベネズエラは12基のロシア製防空システムを保有していた。フォンテンローズ氏は、イランが展開している防空システムと似ていると指摘する。トランプ氏はイラン再攻撃を辞さない姿勢を示す。ケイン氏は「我々の任務は戦闘能力を統合し、世界中のいかなる敵に対しても、圧倒的戦力を発揮できるようにすることだ」と強調する」
イラン防空網は、ベネズエラと同じだという。イランにとっては、ベネズエラの一件は他人ごとでなくなった。


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