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再生エネルギーは、地球温暖化対策の切り札の一方で、思わぬ負の影響拡大が問題視されている。EV(電気自動車)トラックの重量増加が、道路や橋の損傷を早めている。太陽光発電普及は、農地を「占領」して食糧生産に支障をもたらしている。水力発電増は、ダム建設で下流の漁業へ打撃を与えているのだ。このように、再エネ礼賛論には厳しい現実が突きつけられている。省エネこそが、最大の対策という結論になろう。

 

『日本経済新聞 電子版』(1月11日付)は、「EV普及で道路に傷み、発電所建設で減る食料生産 再エネの負の影響」と題する記事を掲載した。

 

地球温暖化を防ぐために再生可能エネルギーの普及が世界で進むが、思わぬ負の影響が広がる恐れが出ている。重い電気自動車(EV)が増えて道路や橋が傷んだり、発電所の建設で農業や漁業に被害が出たりする可能性を複数の科学研究が指摘する。温暖化ガスの削減をめざすだけでなく、再生エネの利用増加が社会や経済にもたらす様々な「副作用」にも目を配る必要がありそうだ。

 

(1)「大量の電池を積んで走るEVのトラックが増えると、その重さで道路や橋が激しく傷む――。米ニューヨーク大学などが2025年に発表した研究は、温暖化対策の有力な手段であるEVの負の影響に光を当てた。学術誌「トランスポート・ポリシー」に論文を掲載した。ニューヨーク市内を走るEVのトラックが道路などに与える損傷を、コンピューターを使ったシミュレーション(模擬実験)で推定した。同市は現在でもディーゼルエンジンを使う大型トラックの走行で道路や橋が傷み、年に約400万ドル(約6億円)をかけて修理している」

 

重い電池を装備するEVが、道路や橋を損傷させる。車両税を上げて補修費にあてるのは当然であろう。

 

(2)「EVのトラックは、ディーゼル車に比べて約900〜1300キログラム重く、走行時に道路などを傷めやすい。研究チームはEVのトラックが今後普及すれば、ニューヨーク市の道路や橋を修理するのにかかる費用は50年までに9〜12%増えると予測した。特に各地の川にかかる橋や交通量が多いマンハッタンで修理費がかさむ。ニューヨーク大のカーン・オズベイ教授は「EVの増加に伴い(道路などの)都市のインフラは新たな要求に直面する」と警鐘を鳴らす。重いEVのトラックを運転する許可を得る際に支払う税額や通行時の料金を増やすなどして、道路や橋の修理費用に充てるべきだと話す」

 

道路や橋の修理費用は、「受益者負担の原則」によってEV所有者が支払うべきである。

 

(3)「再生エネの太陽光や風力を使う発電は、温暖化ガスの二酸化炭素(CO2)を排出しないが、施設の設置により農地が失われる恐れがある。米コーネル大学などは中国で進む再生エネの整備が、食料の生産減少を招く可能性があると24年の研究で指摘した。学術誌「コミュニケーションズ・アース・アンド・エンバイロメント」に論文を掲載した。中国南部で送電を担う電力会社、中国南方電網の60年までの計画を分析した。同社は中国政府の方針に基づき、同年までに温暖化ガスの排出を実質的にゼロにする方針だ。研究では九州の総面積に匹敵する約4万平方キロメートルの土地に太陽光パネルや風車を設置する必要があると分かった。用地の9割を農地や草地が占める見通しだ」

 

中国南方電網は、60年までに温暖化ガスゼロ計画を打出した。それには、太陽光パネルや風車を設置する必要があり、用地の9割を農地や草地が占めるという。大変は代償を伴う。

 

(4)「中国南方電網が、目指す再生エネ施設の建設は漁業も脅かす。コーネル大などの分析によると、中国南部の河川に大型ダム20基分に相当する約32ギガ(ギガは10億)ワットの水力発電所を増設する必要がある。ダムの建設で魚の餌になるプランクトンに欠かせない栄養塩が河川に運ばれにくくなるなどして、下流で漁獲量が減る恐れがある。同社がダムを建設する予定地の約8割はカンボジアやミャンマーなどの他国を流れる河川の上流だ。カンボジアなどでは川の魚が主要なたんぱく源の一つで、ダムの建設で漁獲量が減れば国際紛争の火種にもなりかねない。コーネル大のステファノ・ガレリ准教授は、「脱炭素をめざす計画を作る際には、漁業への影響も考慮することが重要だ」と話す」

 

中国南部の河川に大型ダム20基分を建設すると、魚の餌になるプランクトンに欠かせない栄養塩が河川に運ばれにくくなって、下流での漁業に大きな影響が出る。

 

(5)「再生エネの利用を促す主な目的は、温暖化の被害から人類を救うことだ。だが京都大学は再生エネの使用が増えると、経済格差が広がるとする研究を25年に発表した。科学誌「セル・リポーツ・サステナビリティー」に論文を掲載した。化石燃料よりも発電コストが高い再生エネが普及すると、電気代や食料の値段が上がる。京大の藤森真一郎教授は、その影響で「人々の実質的な所得が数%分減る」と予測する。特にアフリカやアジアなどの経済的に恵まれない人々が大きな影響を受け、富裕層などとの経済格差が広がる可能性がある。所得に占める電気代や食費の割合が高いためだ」

 

再生エネが普及すると、化石燃料より発電コストが高いので、電気代や食料の値段が上がる。その影響で、実質的な所得が数%分減ると予測されている。ただ、この試算は大規模発電を前提にしているが、個別家庭での太陽光発電であれば、コストは低下するはずだ。