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米国は、自らの覇権維持に強い執着を持っている。自国経済に迫る「ナンバー2国家」の存在に過剰な警戒心をみせるのだ。1980年代後半、米国は異常なまでの日本叩きを行った。日本製TVや自動車をたたき壊すという「ショー」を行ったのだ。

 

現在の米国は、中国へ異常な警戒である。中国が、人口14億の国だけにその「潜在力」に不安を覚えるのであろう。この中国は、「張り子の虎」である。急速に軍事力を蓄えているが、今回の米軍によるベネズエラ急襲で、中国製防空網は無力であった。これは、中国の偽らざる実力が、露呈されたのだ。

 

米軍の装備は、実戦を通して検証された武器である。中国の装備は、実験室で性能をチェックした程度であり、実際の戦場に投入すると問題が多いとされる。米軍は、武器の欠陥を見いだすことを出発点とするが、中国は美しいデータを上部に提出することを出発点とする。この差は、極めて大きいのだ。つまり、準備過程が米中では全く異なるのである。

 

一事が万事で、「精巧」な米国と「粗雑」な中国では、レベルが異なる。それにもかかわらず、米国は「14億の人口」で中国を過大評価している結果、自虐論に陥り「ドンロー主義」を唱えるという事態になった。ドンロー主義とは、19世紀の「モンロー主義」にトランプ氏の名前「ドナルド」を組み合わせた造語である。モンロー主義(米孤立主義)の現代版と位置づけられている。

 

米国が、危惧する中国の中南米進出は、米国の膝元を脅かす力まで成長するのか。中国は、中南米の資源確保が目的である。同時に、台湾と国交を結ぶ国々を減らすという目的も含められている。中国は、国力衰退危機に直面している。米国を凌ぐような実力を持てる国になるとは、想像を超えた話であろう。米国は、自虐論に陥っているとみるほかない。中国を過大評価しているのだ。

 

ユーラシアグループが発表した26年「世界の10大リスク」では、第3位に「ドンロー主義(トランプ版モンロー主義)」を取り上げた。

 

米トランプ政権は、西半球への支配権を主張するために、モンロー主義の論理を復活させ、 再解釈している。19 世紀のモンロー主義が域外勢力によるアメリカ大陸への介入を警告したのに対し、ドンロー主義はその概念を広げている。西半球における中国、ロシア、イラン の影響力を抑え込むだけでなく、軍事的圧力、経済的強要、選別的な同盟構築、そして積極的に米国の優位性を主張しようとしている

 

(1)「そのパターンは2025年に明確化した。麻薬船とされる船舶への攻撃、コロンビアとメキシ コへの軍事行動の威嚇、コロンビア大統領やブラジル連邦最高裁判事への制裁、運河管理を めぐるパナマへの圧力、ニカラグアへの新たな制裁とキューバへの規制強化、不法移民の国 外退去協力と引き換えのエルサルバドルのナジブ・ブケレ政権との関係強化、ハビエル・ミ レイ大統領の政治的追い風となるようタイミングを合わせたアルゼンチンへの 200 億ドル の救済、そして米裁判所で麻薬密売の有罪判決を受けた前ホンジュラス大統領への恩赦で ある」

 

中南米は、米国に取って麻薬持ち込みなど厄介な存在だが、米国移民という大きなプールでもある。先進国がこれから労働力不足に直面する中で唯一、米国だけがこれを免れるという幸運な立場にあるのだ。いくら政治は反米でも、中ロへ移民したい人たちがいるはずもない。

 

(2)「中心となるのはベネズエラだ。高リスクの賭けはすでにトランプに大きな勝利をもたらし た。数カ月にわたる圧力のエスカレーション――制裁の拡大、ニコラス・マドゥロ大統領へ の5000万ドルの懸賞金、ここ数十年で最大規模となったカリブ海での海軍部隊展開、ベネ ズエラ領空の閉鎖、石油タンカーの臨検・拿捕、ベネズエラのタンカー航行の全面的な封鎖――の後、米特殊部隊が急襲に成功し、マドゥロは米国に連行され、刑事訴追された。ベネ ズエラには対応する能力がなく、地域内外のいかなる国も実質的な行動を取らなかった。ト ランプは、独裁者を排除し、彼を裁きにかけた功績を主張するだろう。しかも、彼が一貫し て掲げてきたレッドライン――地上部隊の持続的な派遣はしない――を破らずにそれを行 った」

 

ベネズエラへの一件は、米国の「予防戦争」の一種であろう。陸上兵力を送ることは先ずあるまい。それは、米国自体がドロ沼にはまることだ。「百罰一戒」の類いであろう。他の中南米「反米国」へ与えた衝撃は大きかった。中ロの受けた衝撃も同様だ。

 

(3)「困難なのはこの後だ。ベネズエラの 体制は大部分が無傷のままだ。内相ディオスダド・カベージョ、国防相ブラディミル・パド リノ・ロペス、副大統領デルシー・ロドリゲスとその兄であるホルヘ・ロドリゲス国民議会 議長――チャベス派の権力装置全体が、この急襲を生き延びたように見える。マドゥロの後 継者は体制内部の人物となり、正統性はすべて持つが銃は一つも持たない民主的野党では ないだろう。野党主導の民主的な政府への道は紛糾するだろう。現在この国を動かし、体制 の犯罪に加担している軍高官らとの恩赦交渉が必要になるが、彼らは改革よりも自らの生 存と利権を優先するだろう」

 

米国の目的は、反米政権への戒めを与えることであったとみられる。これで、外交的効果は十分であろう。世界一の米軍事力に敵う国はないからだ。ベネズエラ急襲は、「反米」国には悪夢となろう。