a0070_000030_m
   


賢者は争わず対策先行

中国「要の駒」を失う

間違った推測が横行へ

日本技術で低費用生産

 

中国が再び、日本へレアアース(希土類)輸出規制を発動してきた。前回(2010年)に続いて今回が二度目となる。同じカードを二度も切ってきたことで、日本への影響度はそれだけ少なくなっている。中国は、日本を「屈服」させる切り札として使っているが、これ以外の手段のないことを証明するものだ。

 

中国はすでに昨年、米国へレアアース輸出禁止を突きつけている。それだけに,米国には最もナーバスな問題となっている。そこへ今度は、日本をやり玉にしてきた。こうなると、西側諸国が等しく中国のレアアース「空襲」を受けるリスクが高まったわけで、互いに「明日は我が身」という事態となった。これは、中国にとっては思わざる事態であろう。主要7カ国(G7)などの財務相が1月12日、ワシントンで会合を開き、中国産レアアース(希土類)への依存を減らす方法を協議するまでになった。

 

このG7財務相会合には、豪州、メキシコ、韓国、インドの財務相も参加した。豪州、メキシコ、インドはレアアース産出国側である。いわば、レアアースの消費国と産出国が一堂に会したことになる。これは、世界のレアアース供給に大きな意味を持つ。中国は、レアアース世界生産の7割を占める圧倒的な支配力である。だが、残り3割は西側諸国で融通し合えば、中国の威圧を切り抜けられる可能性を持っている。ここが、今回の財務相会合の狙い目である。

 

日本にとって極めて好都合なのは、G7財政相会合の場で日本の開発したレアアース精錬技術の化学的精錬法が、世界へ周知させる舞台を整えられたことだ。化学的精錬法とは、高度化した湿式精錬や溶媒抽出法により、環境負荷を抑えられるようになったことだ。いわば、夢の技術を実現したもので、中国の物理的精錬法を上回るものとして広く認識されている。

 

西側諸国が、こうした日本技術の「革新性」を理解すれば、環境対策費で採算不能として見捨てられてきた小規模鉱山が、経済性を持って復活することになる。中国には、予想もしていなかった事態へ展開する可能性が出てきた。大きな戸惑いを感じるはずだ。

 

賢者は争わず対策先行

読者はお気づきであろうか。日本政府が、中国の対日レアアース輸出規制に対して「冷静」に構えている事実は、何を意味しているかという点である。日本は、南鳥島のレアアース採掘が27年以降に本格化すること。この製錬法が、前述の化学精錬法であって中国の採用している物理型とは構造が異なるという技術的優位性。さらに、ラピダスが開発中の世界最初の「フィジカルAI」が、南鳥島のレアアース採掘現場や化学的精錬に採用されることで、飛躍的生産性向上が期待できという点である。

 

こうした展望を持つ日本が、中国とレアアース輸出規制をめぐって「ドンパチ」を繰り広げたところで無益な話である。「賢者は語らず」こそ、日本の強みを示している。一方の中国は、二度目にも同じカードを切って日本へ戦いを挑んでいる。これは、中国の苦境ぶりを余すところなく示している。

 

中国が、日本に対して取っている行動は、経済の行き詰まった国家がとる典型的なものだ。中国のような権威主義国家は、経済停滞によって国内不満が高まると、しばしば次のような行動を取る。ナショナリズムを刺激すべく、制裁や禁輸で「強さ」を演出するのである。

 

中国は、高市首相の「台湾発言」の真意を、十分に認識していたはずである。日米安全保障条約を結んでいる日本が、米国と別行動を取るなら、それはもはや「同盟」と呼ばれない空洞化を招く。日本の安全保障は、米国へ依存しているのが現実だ。こういう視点に立てば、安保政策において日米一体化は当然。本来、別々の行動を期待する方が無理である。

 

中国は、日本へレアアース輸出規制をすれば、日本が中国の主張を受入れる。そう考えるとすれば、それは日本の安全保障体制を覆す危険な道に通じる。日本が、レアアース欲しさに国家の基本である安全保障を売り渡すことになるからだ。こうした、非現実的な妄想で日本へレアアース輸出規制をしていることが、必然的に日本のレアアース対抗策を生み出して不思議はないであろう。

 

日本は、すでに政府備蓄制度を通じて、レアアースを含む重要鉱物資源の安定供給体制を整備している。特に、中小企業に対する支援の観点からも、この備蓄が極めて重要なセーフティネットとなっている。日本政府が、今回の中国のレアアース輸出規制に対して冷静に対応している背景はこれだ。具体的には、次のような内容である。

 

JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)が、国家備蓄として約60日〜90日分(3ヶ月前後)を確保している。対象は、ネオジム・ジスプロシウム・テルビウムなどである。 民間備蓄(大企業)では、トヨタ・日立・住友金属鉱山などの大手企業は、独自に数ヶ月分の備蓄を保有している。特にモーター・磁石・光学機器などの製造ラインを止めないための戦略的備蓄がされている。 問題は、中小企業で政府備蓄による支援が不可欠である。EU(欧州連合)は、重要鉱物の備蓄制度がなく日本の制度を取り入れる意向だ。

 

中国「要の駒」を失う

日本は、今回の中国によるレアアース輸出規制によって、G7を中心にした「レアアース同盟」が結成される僥倖に恵まれた。逆に言えば、中国にとっては日本へ逆転のチャンスを与えることになった。将棋で言えば、「要の駒」を日本に奪われたのである。日本を「虐めた」ことが、西側諸国を結束させた。それが、レアアースを融通し合うシステムと価格安定化への取り組みへの一歩を踏み始めさせたことだ。この中心に座るのが、実は日本である。

 

一般的には、「資源貧困国」とされる日本が、科学力によってこの状態を覆すという見事な反発力をみせている。これは、これまでの歴史にはなかったことであろう。まず、南鳥島のレアアース採掘は、海底6000メートルというかつての常識から言えば想像外の事業である。鉱山と言えば陸上である。南鳥島は海底資源である。これまでの常識が通用しない世界である。日本の基礎研究力が、この難題へ挑戦している。(つづく)

   この続きは有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』に登録するとお読みいただけます。ご登録月は初月無料です。

https://www.mag2.com/m/0001684526