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米国が、ベネズエラ大統領マドゥロ氏を追放したことを受け、中国は再び米国の「裏庭」としての色彩を強める中南米地域において、自国の野心に関する重大な戦略見直しを迫られている。一方、中国内部では米国の「西半球支配」の見返りに、台湾は中国が支配して当然という見方も出ている。これに対して米国は、台湾が中国の支配から米国の通商路を守る第1列島線における重要な海上の「門番」と見なす。バーター取引などあり得ないとしている。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月16日付)は、「マドゥロ氏追放で消えた中国の野望、中南米戦略見直しへ」と題する記事を掲載した。

 

マドゥロ氏は、豊富な石油資源を持つベネズエラの反米指導者であり、ベネズエラが「全天候型」パートナーシップという希少な地位を得てきた。これは中国外交における最高の栄誉であり、中南米で他に同じ地位を持つ国はない。中国は現在、短期的には同地域への新たな進出を目指していないと関係者らは述べた。代わりに、中国の政策立案担当者らの議論はあるトレードオフの可能性に移行している。それは西半球が米国のものであるならば、台湾海峡は中国のものだという考えだ。米国によるマドゥロ氏に対する軍事行動は、中国が「核心的利益」、すなわち台湾を支配下に置くことを優先する際に、中国の立場を後押しするものとなる。

 

(1)「中国の指導部は、トランプ米大統領が1年前にホワイトハウスに復帰して以来、中南米における自国の影響力が低下するのを既に目にしてきた。メキシコは最近、中国製電気自動車(EV)に50%の関税を課した。これは、2026年に予定される北米自由貿易協定の重要な見直しを前に、米国と歩調を合わせるためだ。またパナマは米国の勢力圏に戻り、中国の習近平国家主席が掲げる「一帯一路」構想から撤退する一方で、パナマ運河近くの基地に米軍が交代で駐留することを認めている。23年に台湾と断交したホンジュラスでさえ揺らいでいる。同国のエビ産業は、中国で約束されていた高付加価値の市場を開拓できず、ほぼ壊滅状態に陥っており、国内経済に大きな負担をもたらしている。トランプ氏の後押しを受けたナスリ・アスフラ次期大統領は、台湾との外交関係回復という選挙公約を実現する構えを見せている」

 

中南米では、トランプ2期政権発足以来、米国寄りの政策へ変更している国が増えている。メキシコ・パナマ・ホンジュラスである。

 

(2)「米国は既に、中国が大きな利権を持つベネズエラの油田について、支配構造を再編する動きを見せている。ホワイトハウスに近い政策アナリストらは、米国がベネズエラにおける中国のインフラを米国主導の事業に置き換える可能性があるとの考えを示した。アナリストらによると、トランプ政権は実質的にベネズエラ新政権に対し、同国の石油を米国企業が開発・採掘する独占的な権利と引き換えに、米国がベネズエラの債務再編を支援する機会を提供する可能性がある。この動きは事実上、中国を排除することになる」


米国は、ベネズエラの債務再編を支援する可能性がありその際、中国が排除される。

 

(3)「中国の目標は今や防御的なものとなっている、と内部協議に詳しい関係者らは指摘した。つまり、ベネズエラの埋蔵石油への関与の余地を完全に失わないようにすることだ。関係者らによると、この戦略的後退は中国が台湾海峡に関して米国に期待していることかもしれない。また中国当局者が検討している他の懐柔策は、中国が数十億ドル規模の米長期債を購入する合意の可能性があるという。中国の指導部は、西半球を重視するトランプ氏の「米国第一主義」が、中国が自国の周辺地域に対する支配力を強化するきっかけとなるのか、それともベネズエラでの作戦が世界での米国の影響力再拡大の第一章にすぎないのかを見極めようとしている、と関係者らは述べた」

 

中国は、ベネズエラでの戦略後退が、台湾海峡に関して米国の譲歩を期待する理由になっている。ベネズエラと台湾のバーター取引である。一方では、ベネズエラでの作戦が世界での米国の影響力再拡大の第一歩かと注目している。

 

(4)「米シンクタンク、スティムソン・センターで中国プログラム担当ディレクターを務める孫韻(ユン・スン)氏は、「トランプ氏がハードパワーを行使する意志を示していることは、米国の決意が現実であり、中国もそれを真剣に受け止めなければならないことを証明している」。トランプ政権が策定した25年の「国家安全保障戦略(NSS)」は、米国の利益に関するより明確な道筋を示した。昨年12月に公表されたこの文書は、台湾を世界経済に不可欠な歯車と位置付けている。紛争抑止のため「軍事的な圧倒的優位の維持」を優先することを明記しており、台湾を、中国の支配から米国の通商路を守る第1列島線における重要な海上の「門番」と見なしている」

 

米国は、台湾を第1列島線における重要な海上の要衝と位置づける。ベネズエラとのバーター取引はあり得ない。