韓国は、高齢者中心の短期雇用増によって、あたかも就業状態が改善しているような印象を与える。実態は、大学新卒者の就職までの期間が平均11.5ヶ月も掛っている。1年近くも就職浪人を余儀なくされているのだ。韓国は、終身雇用制である。退職者が出ない限り補充しないという極端に硬直した労働市場である。
『東亜日報』(1月19日付)は、「就業者数も就業率もマイナス 雇用市場から消えていく20代」と題する記事を掲載した。
昨年、20代の就業者数と就業率がともに減少した。就業者数は3年連続の減少で、就業率も5年ぶりにマイナスに転じるという「雇用ショック」が起きた。これは、20代の就業者数が人口減少以上のペースで落ち込んだことを意味する。若者雇用の寒波が現実のものとなっている。
(1)「昨年の経済成長率が1%にとどまり、労働市場に十分な温もりをもたらせなかったことは痛い。全体の就業率は改善したが、高齢者中心の雇用増による「錯覚効果」に過ぎなかった。経験者採用が主流となり、大学を卒業したばかりの若者が最初の職に就くまでに平均11.5か月を要するのが現実だ」
日本の大卒就職事情からみると、韓国は「暗黒世界」に映る。日韓の差は何か。韓国が年功序列・終身雇用制による結果、賃金総額が増加の一途を辿ることが、新規採用を消極的にさせている。ホワイトカラーとブルカラーを一緒にした雇用制度が、混乱の元である。転職の少ないブルカラーに有利な終身雇用制を、転職可能なホワイトカラーに適用するから問題が起るのだ。この混乱を解決しなければ、労働問題は解決しない。
(2)「雇用の多い中小企業を経て大企業へ移る「キャリアのはしご」が機能すれば、少なくとも大企業への過度な集中を抑え、採用市場のハードルを下げることができる。だが実際には、中小企業から大企業へ転職できるのは、転職者10人に1人程度にすぎない。このような状況だからこそ、就職をあきらめた「就ポギ族(就職放棄者)」、長期間にわたり求職活動をやめて休んでいる「長白青(長期失業青年)」、さらには「専業子女(就業せず親と同居する子ども)」といった言葉が生まれているのではないだろうか」
韓国の大企業と中小企業の賃金格差は、日本以上に拡大している。生涯賃金を考えれば、就職浪人しても大企業への就職が有利である。こうした大幅な賃金格差は、大企業が中小企業製品を買い叩いている結果だ。ここを是正できないのは、政策の貧困ゆえである。
(3)「昨年、20~30代の「何もせず休んでいた」人口は71万人に増えた。人口減少で若者雇用が改善するとの期待とは裏腹に、人工知能(AI)の普及などで採用構造が変わり、若者雇用の寒波は続いている。若者が雇用市場から長期離脱すれば、再参入の機会は遠のく。生涯にわたって稼げる総所得が減少し、経済的二極化のしわを一層深めることになる。若者向けの情け施しの政策として捉えるべき問題ではない。経済政策の最優先課題に、若者の雇用創出を据えるべきだ」
李政権は、「地域通貨」で経済テコ入れを目指している。地域通貨は、大不況下で地域限定の政策である。地域需要を他地域へ漏出させないという目的だ。国家単位の地域通貨など聞いたこともない話である。文政権もそうだったが、左派政権は奇想天外なことを始める。
(4)「若者雇用の問題は複合的だ。労働市場から押し出された若者を戻すには、まず経済が息を吹き返し、雇用市場が活力を取り戻さねばならない。大企業やサービス分野で質の高い雇用が増えるよう、投資促進とサービス産業規制の緩和が不可欠だ。大企業正規職に偏った労働政策は、大企業と中小企業の格差を拡大し、若者を排除する。労働時間短縮や定年延長を導入する際には、若者雇用への影響を検証し、副作用を最小限に抑える必要がある」
雇用制度の改革が、不可欠である。前政権は、このことに気付いており政策発動を始めていたが、途中で終ってしまった。左派政権は、労組(ブルーカラー)の意向を100%受入れているから手が打てないのだ。
(5)「仕事も所得もない若者への低利融資は、痛み止めにすぎない。AI導入で変化した雇用市場に合った教育・訓練と就職支援が求められる。労働市場から離脱し、休職状態にある若者の雇用、住居、負債、健康などの実態を把握し、支援する総合的な対策も求められる。若者が未来を描くためには、何より質の高い仕事が欠かせない」
こういう政策は、枝葉末節なことだ。本命は、終身雇用制度の改革にある。


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