国策半導体企業のラピダスは、春にもウエハーから切り出したチップを電子基板に実装する「後工程」の試作ラインを稼働する。経済安全保障の観点からも、後工程の重要性は増している。台湾のTSMCは、これまで後工程(パッケージング)を外部委託(OSAT企業)に出すモデルを基本としてきた。ラピダスは後工程を自社内に取り込み、北海道で一貫生産体制を構築する。これは、TSMCとは真逆の「垂直統合型」モデルだ。
ラピダスは、前工程(ウェハ製造)から後工程(パッケージング)までを一貫して全自動化する「スマートファブ」構想を立てている。ラピダスは、この前工程と後工程の全自動化によって、従来は設計から試作まで半年かかっていた生産工程を、一挙に1ヶ月以内に短縮するという。革命的な生産方法を目指している。
『日本経済新聞』(1月22日付)は、「北海道 ラピダス、春に後工程の試作ライン 最先端半導体、27年度量産へ進展」と題する記事を掲載した。
ラピダスは、2027年度後半に北海道千歳市で最先端半導体の量産を目指すが、26年は将来を占う大きな一年になる。
(1)「ラピダスの小池淳義社長は25年12月、都内で開かれた展示会「セミコン・ジャパン」で、人工知能(AI)半導体向けの配線層「RDLインターポーザー」を披露した。最先端チップを載せる基板の「重要部分が完成した」と語った。配線層は600ミリメートル角のガラス製パネル上でつくった。比較の対象になる直径300ミリメートルの丸形ウエハーよりも大きい。1枚から取れるチップの数が増えるため、安価に効率良く生産できるようになるという」
ラピダスは、あらゆる面で発想の転換を行っている。パネルもガラス製に切替えてコストダウンを実現した。1枚から取れるチップの数が増えるためにコストダウンになる。後発ならではの工夫がされている。
(2)「後工程の試作ラインを設置するのは、建設中のラピダス工場の隣にあるセイコーエプソン千歳事業所になる。ラピダスは同事業所の一部を借り、約9000平方メートルのクリーンルームをもつ研究開発拠点を整備している。試作ラインは3月末までの完成を目指す。半導体の製造は前工程と後工程に分かれる。前工程は材料のシリコンウエハーに電子回路を作り込むまでにあたる。後工程はウエハーからチップを個別に切り出し、樹脂で封止して製品に仕上げる段階を指す。前工程はナノレベルの微細化に限界が見えつつある。後工程はチップの並べ方などで技術革新の余地が残されているとされる。日本における最先端半導体の生産拠点は、前工程ではTSMCの熊本県への進出で可能になった。後工程を請け負う体制はなお乏しい。半導体産業に詳しいデロイトトーマツの鹿山真吾パートナーは、「後工程を制する者がサプライチェーンを握る。北海道でやっていくことに意義がある」と話す」
今後の半導体の勝負は、後工程とされる。いわゆる「チップレット」と呼ばれるチップの積み上げ技術が競われる。ラピダスは、この難しい後工程の全自動化を目指している。これによって、歩留まり率の飛躍的向上を目指す。
(3)「25年には国内の後工程請負会社(OSAT)による業界団体「日本OSAT連合会」が発足した。正会員は直近で29社あり、アムコー・テクノロジー・ジャパンやアオイ電子、新光電気工業などが名を連ねる。生産体制の相互補完や、材料や部品の共同調達を目指す。連合会によると、国内のOSATはほぼ中小企業で、国内生産量は世界シェアの5%程度という。生産量では海外勢に太刀打ちできないが、林力事務局長は「日本は歩留まりや品質で強みがあり、少量多品種の生産に勝機がある」とみる。
ラピダスは、後工程の全自動化を行うが、後工程請負会社をパートナーとして受入れる。ラピダスは、後工程を完全に内製化するのではなく、試作・先端技術の中核部分を自社で担い、量産や周辺工程はパートナーと分担する構想を描いている。「共創」という対等な関係を維持する方針だ。
(4)「ラピダスは、半導体を前工程から後工程まで一気通貫で生産する体制を整えようとしている。計画通りに後工程の試作ラインが稼働すれば、関連する材料や装置のメーカー、テストや解析を手がける企業の集積が進む可能性がある。後工程が比較的盛んな九州地方では、アムコーなどのOSATや検査大手のアドバンテスト、米テラダインが拠点を置く。チップの接続に用いる金属フレームやパッケージングに使う樹脂、金型といった材料のメーカーも集まる」
TSMCは、後工程を完全に下請けに出しているが、ラピダスはあくまでも自社も関わりながら専門企業を育成する方針である。
(5)「千歳市によるとラピダスの進出以降、市内に45の関連企業が拠点を設けた。このほか83社が市内への立地を検討中で、後工程のサプライヤーや検査会社も含まれているという。市が約4000社にアンケート調査を行い、約200社に聞き取ったうえで集計した。ラピダスは25年7月、回路線幅2ナノ(ナノは10億分の1)メートル半導体の試作品を初公開した。試作品の披露により、市の次世代半導体拠点推進室の塚田啓介総務課長は「企業の温度感は変わってきた」と話す。拠点進出に前向きになる会社の増加に期待する」
ラピダスとのビジネスを求めて、関連企業が千歳市へ進出している。まだ、製品出荷は始まっていないが、25年7月に半導体試作品を初公開以降、熱気が高まっている。


コメント
コメントする