a0960_008532_m

   

日本は、世界のウナギ消費の6~7割を占めている。世界は、水産資源保護で稚魚の乱獲に厳しい目を向ける時代だ。こうした中で、日本の水産庁が稚魚から養殖する一貫態勢を構築した。26年には、「完全日本産ウナギ」が食卓へお目見えするという。コメ作りより高収入が見込めることから、休耕田や廃校を利用しAI(人工知能)を活用した完全養殖ウナギ時代が目前に来ている。

 

『日本経済新聞 電子版』(2月1日付)は、「ウナギ完全養殖、民間参入で育て 人工ふ化で『かば焼』26年夏食卓へ」と題する記事を掲載した。

 

ウナギの完全養殖技術が向上し、商業化に向けた取り組みが本格的に始まる。水産庁は2025年度補正予算で、ウナギの人工種苗研究と社会実装の加速に向け新たに独立した予算、7億円を充てた。知的財産の国外流出を防ぎながら、民間事業者に技術移転を進める。今夏には人工ふ化のウナギを使ったかば焼きも、初めて試験販売される見込みだ。

 

水産庁は補正予算で「ウナギ安定供給緊急総合対策」を打ち出し、7億円を計上した。現在ウナギは100%天然で採捕した稚魚を養殖しており、輸入依存度も高い。この状況から脱却するため「人工種苗の早期の社会実装」(水産庁)に本腰を入れる。水産庁所管の国立研究開発法人である水産研究・教育機構(横浜市)が開発した完全養殖技術を民間へ普及する。意欲ある企業が量産試験を実施する場合の、水槽などの設備導入や専門家の派遣による技術指導の経費を支援する。

 

(1)「機構のウナギ研究拠点では、採卵や飼育の現場を案内し、12週間の研修も可能。「ウナギの完全養殖は日本の様々な技術、人との出会いのおかげで進化した。幅広い企業の挑戦を歓迎している」(シラスウナギ生産部の風藤行紀部長)。機構は2010年、世界初のニホンウナギの完全養殖に成功した」

 

春先には必ず、ウナギ稚魚の密漁問題が起る。稚児からの養殖が実現したので、こういう法に触れる事態も減るだろう。

 

(2)「人工種苗の生産費は16年度には1匹4万円と高額だったが、ヤンマーホールディングスや不二製油など民間の協力を得ながら、より安定的に量産する技術を磨いてきた。24年度には同1800円、25年度には一段と下がり、2年後の27年度には「1匹1000円を確実に下回る」(風藤部長)見通しだ。経費の大部分は水温調節の光熱費や給餌・掃除の人件費のため、温泉の熱や廃熱などを活用し「23〜25度の水を安定供給できる場所なら、より低コストを実現できるだろう」(同)」

 

人工稚魚には、23〜25度の水が安定供給される環境が必要。生育コストの大半が、この分野という。そこで、温泉があって廃校や休耕田があれば、これを利用して「100%ウナギ養殖」が可能になる。あるいは、稚魚を一括して生産して各地の養鰻業者へ卸すという道もあろう。

 

(3)「26年は販売面でも大きな進展がありそうだ。現在、ウナギ養殖は天然資源を守るため国の許可制で、飼育していい稚魚の上限数も決まっている。完全養殖のウナギは天然資源への負荷がないが、現在は販売や養殖のルールが整っていない。水産庁は制度面の見直しを検討している。ウナギ養殖大手、山田水産(大分県佐伯市)は環境が整い次第、今夏にも人工ふ化したウナギをかば焼きなどにし、消費者に試験販売することを目指している。実現すれば、世界初だ」

 

生産が軌道に乗って、利益が出るという見通しが立てば、必ず手を上げる人は出てくる。これまでは、稚魚を購入して養殖してきたが稚魚価格が乱高下してきた。例えば、1kg=数十万〜100万円超も変動した。それが、稚魚の国産化で価格が安定することは、消費者にとっても大きな朗報である。値下がり期待ができるからだ。

 

(4)「同社は機構の研究者が開発した技術が、民間の養殖事業者の手でも再現できるか、検証するため協力してきた。専門の担当者や施設を置き、採卵や人工授精、ふ化などで一定のノウハウを習得、24年以降年1万匹以上の人工種苗を安定生産している。食味も通常のウナギと遜色なく「自信を持って提供できる」(加藤尚武取締役)という。26年の丑(うし)の日商戦を目標に直営店や電子商取引(EC)サイトで販売し、消費者の声を聞きながら一段の食味向上や量産も検討していく」

 

26年の「土用の丑の日」には、100%人工養殖ウナギが食卓へ並ぶという。

 

(5)「ウナギの完全養殖は東洋水産や近畿大学もそれぞれ独自の技術で成功している。制度が整えば商業目的で養殖や販売もできるようになる。25年、ワシントン条約締約国会議でウナギを国際取引の規制の対象にするか議論された。今回は否決されたが、世界最大の消費国である日本に世界から厳しい目があることに変わりない。ウナギは生態に謎が多く、完全養殖は魚介類の中で最難関のひとつとされてきた。60年以上多くの研究者がバトンをつなぎ、悲願の商業化まであと一歩のところまでこぎつけている」

 

ウナギの完全養殖は、東洋水産や近畿大学もそれぞれ独自の技術で成功している。条件は揃った。時代は、100%人工養殖ウナギへ動き出す。