a0960_008527_m
   

ソニーグループは1月、テレビ事業の主導権を中国のTCLエレクトロニクス・ホールディングスに委ねると発表した。2027年以降、TCLが製造するテレビが「ブラビア」というブランド名を引き継ぐ。ホームエンターテインメント事業で提携するソニーとTCLは、TCLの技術を用いる合弁事業を設立する。TCLが合弁会社の株式過半数を保有する。

 

戦後の日本経済を牽引した「二頭馬車」は、家電(特にTV)と自動車であった。そのTVで世界市場を切り開いたソニーが、祖業とも言うべきTVから事実上の撤退である。ただ、TCLと合弁でブランド名を残す。こうしたソニーの決断を「利益構造の強化」として、歓迎するという見方もある。ソニーは、コンテンツ事業へ特化して行くからだ。

 

『ブルームバーグ』(2月2日付)は、「ソニーのテレビ離れは進化の象徴、歓迎しよう」と題する記事を掲載した。

 

ソニー製品はかつて、最先端の代名詞だった。テレビのブランドも、重厚なブラウン管の「トリニトロン」から薄型の「ブラビア」へと進化。今もなおプレミア感でユーザーを引き付けている。2027年以降、TCLが製造するテレビがブラビアというブランド名を引き継ぐ。

 

(1)「確かに、一つの時代の終わりを告げる出来事かもしれない。だが、ソニーなど日本の家電メーカー全体がスイッチを切ったわけではない。チャンネルを変えただけだ。1970年代、ソニーはRCAやマグナボックスといった米国の家電メーカーを市場から押し出した企業群の先頭に立っていた。ソニーは優れたテクノロジーと、後にアップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏に影響を与えることになる洗練された工業デザインを融合させた。その本質は、「It’s a Sony」というソニーのスローガンそのものだった」

 

ソニーは、米国の消費者に米国企業と思われるほど浸透していた。このブランド力を生かして、ソニーはコンテンツ事業へ転換している。消費者にとっては、「チャンネルを変えただけ」かも知れない。

 

(2)「長い間、それだけで消費者には十分だった。今でも一部の人々にとって、ソニーのテレビや日本製品全般は、他では再現できない品質と結び付いている。だが、少なくともテレビに関しては、その認識はおおむね時代遅れだ。ソニーは長年パネル製造に関与しておらず、2011年に韓国のサムスン電子との合弁事業の持ち分を手放した。ソニーのテレビ事業は10年にわたって赤字が続いた後、14年に分社化された。現在のブラビア上位モデルは、韓国製ディスプレーにソニーがソフトウエアを加えたものだ」

 

TV組立ては、労働集約型事業である。自動車と異なって、作業の自動化が困難な分野である。そうとなると、競争力の決め手は賃金の安さとなる。日本の賃金では、競争力を維持できなくなったことは疑いない。中国が、登場するのは自然の流れであった。

 

(3)「日本メーカーは次々とこの分野から撤退した。日本のテレビ産業衰退は、バブル崩壊後の典型的な失策と見なされた。確かに、各社はタイミングを読み違え、誤った技術への投資を重ね、自ら首を絞めた面がある。パナソニックホールディングスはプラズマに全力を注ぎ、シャープも市場が崩落する直前に液晶パネル生産へと大きくかじを切った。こうした誤算は、避けられなかった流れを早めただけかもしれない。テレビの価格はここ数十年で、ほぼ他のどの製品よりも急速に下落し、1980年以降99%下がった(同じ程度値下がりしたのはパソコンくらいだろう)」

 

テレビの価格はここ数十年で、1980年以降99%も下がったという。パソコンも同じだ。賃金の安さが決定的な価格競争力を決める構造だ。

 

(4)「日本の経済学者、赤松要(1896~1974)は1930年代、産業が経済発展の段階に応じて国から国へ移っていくとする「雁行形態論」を提唱した。サムスンとLGエレクトロニクスという韓国の2社が最初にテレビの寡占を崩したが、やがて同じことが韓国勢に起きるかもしれない。依然として、テレビ製造世界一のサムスンにTCLが急接近している。有機ELのプレミアムデバイスで強みを持つLGは最近、同社が最後まで持っていた大型液晶工場を売却した。買い手は誰あろうTCLだ。中国勢のテレビ製造支配が目前に迫っているようにも見えるが、将来的にはインドやベトナムとの競争に揺さぶられる可能性もある」

 

赤松要氏の「雁行形態論」は有名である。産業は、雁が並んで飛ぶように、国際伝播することをモデル化したもの。輸入から始まって、次は国内代替生産に移行するという内容だ。米国→日本→韓国→中国→インド・ベトナムという流れが想定されるのだ。