権威主義の弊害顕著に
模倣技術から脱出絶望
人口ボーナスを勘違い
技術包囲網で隔離策へ
中国では現在、「東昇西降」という言葉が流行っている。習近平国家主席が、この言葉を「愛用」することもあって広く使われている。中国が発展し、米国が衰退するという意味だ。戦時中の日本でも、「鬼畜米英」と言い国民の愛国心を煽った。「東昇西降」は、これと同じ意味合いである。実は、ソ連末期でも「西側衰退論」が流布されていた。
「東昇西降」・「西側衰退論」・「鬼畜米英」は、自国の優越論を植え付け、国民に自国の悲惨な実態から目を逸らさせる効果を持つ。いわゆる「戦意高揚」である。ことさら、愛国心を強調するのは、政治的意図が含められている。中国は、この東昇西降を反映し「中国社会主義」を強調している。現実は、この社会主義が権威主義をカムフラージュする言葉に使われているのだ。社会主義と言えば、資本主義の欠陥を補正した理想的国家イメージを与える。世界の社会主義を名乗る国家で、経済的に発展した国は一つもないのだ。
中国もいよいよ、「発展しない社会主義国」の仲間入りすることが決定的になってきた。主な理由を二つ上げれば、次の通りである。
1)人口減少が顕著である。2023年の合計特殊出生率は、「1.0」である。人口維持には「2.1」が必要とされている。すでに、その半分以下の水準へ落込んでいる。24年の合計特殊出生率は未発表である。24年は「0.73」という推測もでるほど。これまで、韓国の合計特殊出生率が世界ワースト・ワンとされてきた。現実は、中国がワースト・ワンになっている可能性が出ているのだ。国連人口予測では、2100年の人口が7億人を割るとみている。現在の人口が半減する。国家を維持できないほどの急減だ。
2)コンドラチェフ循環の技術革新は現在、第5波の下降期に向っている。詳細な内容は後で取り上げる。中国には、第6波に乗れる技術シーズ(種)が存在しない。第5波は、IT・デジタルだ。中国は、米国企業の中国進出に伴い、これら技術を取り入れて「世界の工場」と言われるまでになった。中国の安くて豊富な労働力が魅力になって、米国に続き西側諸国企業が進出した結果である。中国は、これを自国技術で発展したと思い込んでいる。東昇西降は、それを象徴する言葉である。実態は、「借物技術」に過ぎないのだ。
権威主義の弊害顕著に
中国経済にとって権威主義という政治制度は、短期的に資源を集中させる効果を持つ。だが、長期的には制度の硬直化をもたらし、身動き取れない事態を生むことが、歴史的に証明されている。ナチス・ドイツや旧ソ連は、悲劇的結末を迎えた。理由は、制度が硬直的で、途中での迅速な修正ができないことにある。権威主義は、途中での修正が「誤りを認めた」とされ権威を傷付けるのだ。中国共産党が「無謬主義」を唱えて、習近平国家主席を神格化している。政治に無謬など本来、あり得ないことである。
中国の「一人っ子政策」(1979~2015年)は、人口を機械的に最適化するための数理モデル(最適制御モデル)が適用された。人口学では、政策で出生数を急激に下げると、反動が大きいこと。一度下がった出生率は、政策で戻すのが極めて難しい、という点を強調している。中国は、この「人口学の鉄則」を軽視したもので、現在の長期的な人口危機の根源になった。
毛沢東は、「産めよ、増やせよ」であった。「社会主義に失業は存在しない」という屁理屈をこねた結果だ。当時、これに反対した北京大学学長が、追放されるという強引さであった。毛は、新中国建国の功労者だが、強引な人口増加策によって、国家基盤を揺るがす「爆弾」を仕掛けていたことになる。
革命前の中国は、人口4億人がピークであり、その後は減るというパターンを繰返していた。新中国になって、集団農業制による「人民公社」で食糧配給制が採用され、赤ん坊も大人も同じ量の配給になった。これで、出生率が一挙に高まって、人口急増に慌てる事態となった。こうした結果、人口急減策に転じたのである。以上のように、すべて権威主義が招いた人口混乱に伴う災難である。この災難が、いよいよ中国経済の命運を左右するという厳しい段階を迎えている。
問題は、中国政治が権威主義という硬直化した制度であることだ。民意を反映する政治スタイルでないので、最高指導部の意思一つで政策が決められる。もっとハッキリ言えば、習近平氏の「胸三寸」によるのだ。14億人の国民に関わる問題が、一人の指導者によってすべて決める現実に、卒倒するほどの違和感を覚える。民主政治であれば、定期的に行われる選挙による民意の反映で、政策は自由に変更される。これが、政策の弾力性につながっている。中国は、そういうチャンスがない「暴走政治」である。
模倣技術から脱出絶望
ここから、前述の2点を総合して中国経済がすでに最盛期を過ぎて、もはや「再起不可能」という厳しい現実を迎えている点について話を進めて行きたい。
中国で現在、起っている社会的・経済的な混乱は、コンドラチェフ循環という超長期景気循環(約50~60年間)の下降局面でよくみられる現象である。このコンドラチェフ循環は、技術のパラダイムシフト(異次元への転換)を軸にして起るもので、世界はこれまで第5波の過程が終ろうとして、第6波へ繋がる「局面転換期」に遭遇している。(つづく)
https://www.mag2.com/m/0001684526


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