最先端半導体の国産化を目指すラピダスが、民間からの出資額が2025年度の計画を上回る1600億円超となる見込みとなった。ソフトバンクとソニーグループが、それぞれ210億円を出資して最大の株主となる。米IBMも、米当局の審査を経て出資する。政府は、2.9兆円の支援を決めたが、企業の間でも日本の半導体産業の復権を支援する機運が高まっている。これまで、大手メディアを中心に「ラピダス失敗論」が流布されたが、ようやく「認知される」形になった。
『日本経済新聞』(2月5日付)は、「ラピダスへの民間出資、想定上回る1600億円超に 米IBMも検討」と題する記事を掲載した。
株主は現在の8社から30社以上に増える。企業の多くは1月末までにラピダスと合意し年度内に出資を完了する。2月中にラピダスが取りまとめて公表する。25年度は民間から1300億円規模を調達する計画だった。それが計画を上回って1600億円へ拡大した。企業別では富士通も200億円を出資する。既存株主のNTTは100億円、トヨタ自動車は40億円を追加出資する。
(1)「民間最大の株主となるソフトバンクは、24年末に高性能メモリーを開発する新会社「SAIMEMORY(サイメモリ)」を設立した。将来的には、ラピダスで製造した人工知能(AI)半導体にサイメモリのメモリーを搭載することも想定している。NTTは次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」を開発している。IOWNの電気信号を光に置き換える技術を半導体の内部に搭載すれば、消費電力を大幅に抑えられる」
ソフトバンクやNTTは、ラピダスで半導体製造を委託する意向である。株主として詳細な技術情報を得ての決定であろう。
(2)「IBMは、ラピダスに出資する初の外国企業となる見通しだ。IBMは、ラピダスに技術を供与している。資本面でも支援することで確実な量産につなげ、半導体の受託製造の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)への依存を下げる狙いもあるとみられる。ラピダスは31年度までに7兆円超の資金が必要と試算しており、このうち民間出資は1兆円規模を目指している」
IBMは、ラピダスへ2ナノ技術を提供した関係で出資する。自社技術が製品化される以上、出資は自然な流れであろう。
(3)「資本調達額が想定より増えたのは、ラピダスが技術的な成果を示してきたことが大きい。25年7月には回路線幅2ナノ(ナノは10億分の1)の半導体素子の動作を初めて確認し、12月にはAI半導体を効率良くつなぐための配線層を試作し公表した。主要企業との交渉では、経済産業省の担当者が同席するなどして説得にあたった。最先端半導体を直接必要としない企業でも「国家事業に協力しないわけにはいかない」(出資企業の幹部)との意識が働いたようだ。政府は、2ナノの最先端半導体の国産化を経済安全保障上の重要なマイルストーンと位置づける。ラピダスは、官民から調達した資金で27年度に北海道の工場で目指す2ナノ品の量産に備える」
資本調達額が想定より増えたのは、ラピダスの技術が確実に進んでいる結果だ。製品もできていない企業への出資には抵抗もあったが、ようやく納得が得られたのであろう。
(4)「今回の各社の出資額は、最大が200億円規模なのに対し、最も少ない企業は5億円程度だ。半導体メモリーを手掛けるキオクシアは、追加出資額を10億円にとどめる。同じく設立直後から出資するNECも追加出資を10億円以下としたもようだ。ラピダスは、これまで政府が特別待遇で支援したことで、会社設立から3年足らずで試作にこぎつけた。社員数は25年末までに1000人を超えた。ただ、量産に向けては生産規模の拡大や歩留まり(良品率)改善、顧客開拓など越えるべきハードルは多い。民間からの出資の目標とする1兆円にはまだ遠く、今後も着実に成果を見せていく必要がある」
未だ製品が出ていない企業への出資であるから、懸念を言い出せばいくらでもあろう。だが、経済安全保障やフィジカルAIの切り札として大きな期待が掛っている企業だ。暖かい目で支援する度量も必要だろう。


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