中国は3年連続して、通常では考えられないような5%前後の成長率を記録してきた。これは、過剰債務・過剰生産・乱売戦という最悪状態の中で生まれた統計上の奇跡だ。地方政府が2026年の目標を検討する中、しだいにはっきりしてきたことは、何がなんでも5%台の時代をもう1年続けさせることだという。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月5日付)は、「中国の成長目標『5%』 ただの数字ではない」と題する記事を掲載した。
(1)「ある中国の上級政策顧問が最近私に説明したところによると、この5%前後という数字は政治的な縛りとなっている。過去数年間のあらゆる主要な経済会議において、「2035年の亡霊」が中国政府に重くのしかかってきたと、この顧問は述べた。2035年は、習近平国家主席が中国の経済規模と1人当たりの所得を倍増させると2020年に述べた年だ。この日付があるため、経済の失速を防ぐのに習氏がどれだけの資金を投じる用意があるかは簡単に決まる」
習近平氏は、自らの権威を守るべく是が非でも「5%成長」を実現させる方針だ。病人に100メートル競走させるような話であろう。権威主義とは、このような恐ろしいことを平気で行う政治である。
(2)「目標を達成するには、中国は平均して年率約4.7%から5%の成長率を維持しなければならない。誤差の余地は狭い。この経済顧問が私に語ったところによれば、習氏にとってこの成長を維持することはもはや単なる経済目標ではなく、共産党の正統性を測る指標となっている」
2035年ビジョンに合わせて、5%成長を実現させようとしている。これを裏返せば、習氏が2035年まで国家主席を務める意思の表れであろう。
(3)「この重要性が頂点に達したのは2024年後半だった。数カ月間、各省からのデータは暗澹(たん)たるものだった。消費は横ばいで、住宅価格暴落による逆資産効果が中国の中間層世帯を守りの貯蓄者に変えていた。その年の9月までに、中国が5%目標を達成できない見通しであることが明らかになった。これは2035年ビジョンと直接矛盾するものと見なされる失敗だ」
2035年ビジョンでは、2021年比で経済規模と国民所得を2倍にする目標だ。これに合せると、平均4.7%成長を達成しなければならない。客観的事実をみれば、とうてい不可能だが、自己保身で実現させたい。絵に描いたような権威主義政治である。
(4)「元のデータが中南海の指導部に届いたとき、情報筋によると習氏は激怒した。その結果が「9月のサプライズ」だった。突然の幾多にもおよぶ景気刺激策、利下げ、株式市場への救命措置である。これは、中国政府が単なる成長速度よりも「質の高い成長」の重要性について語る一方で、主要な指標での目標未達を依然として恐れていることを示した。官僚機構への指示は明確だった。どんな犠牲を払っても数字を達成せよ、と」
経済成長のバランスを忘れた短期達成主義である。こういう無理を、2035年まで続けられるはずがない。
(5)「過去数十年間、中国の成長の原動力は、国内総生産(GDP)成長率が昇進の主要指標とされてきた地方官僚だった。しかし、このシステムは壁に突き当たった。中央政府が目標を設定する一方で、地方政府は支出の約85%を負担している。そして今、彼らは「わな」にはまっている。膨大な債務の山に埋もれながら、成長を生み出すよう命じられているのだ。このわなは、経済を消費主導型に移行させようとする中国政府の努力を無駄にしている。地方の指導者にとって、意味のない橋の建設を命じる方が、不安を抱える市民に貯蓄を新車購入に充てるよう説得するよりもはるかに容易だ。投資は国家がコントロールできる手段だが、消費には安心感が必要であり、安心感は命令によって生み出すことはできない」
中央官僚も地方官僚もすべて、釈然としない中でこういう無理な命令に従わなければならない。中国経済崩壊という現実が、迫ってくくるだけである。
(6)「この緊張は、各省が2026年の目標を最終決定する中で明らかになっている。南部の広東省のような経済規模の大きい地方がより柔軟な目標を導入し、4.5%から5%を目指している一方で、残りの地域は依然として「5%前後」の命令に忠実に従っている。「米国では、指導者は財布を気にする有権者によって評価される」と政策顧問は述べた。「中国では、目標達成を気にする上司によって評価される」習氏にとって2035年ビジョンは、家計資産や不動産市場の安定といった厄介な現実よりも優先される。5%目標は政治的な盾となり、中国型経済の優位性を守るために使われている。国家の命令と経済の実態との乖離が峡谷へと広がる中でもだ」
権威主義政治には、習氏の権力を制約するシステムが備わっていない。「己の欲するところが法律になる」という典型例である。もはやこれ以上、論評をする気持ちも失せるほどだ。


コメント
コメントする