ドイツは、悩んでいる。2月25日からメルツ首相が訪中した。直前の24日、メルツ氏は高市首相へ電話し25分間ほど協議した。日本外務省の発表によると、メルツ氏はインド太平洋地域で同志国の日本との協力を重視していると語った。両首脳は、東アジア情勢を含む地域・国際情勢について意見交換したという。
メルツ氏の高石市への電話は、同士国日本への気配りであろう。ドイツ首脳が訪中に当たり、日本へ「挨拶」したのは、ドイツが中国一辺倒でないという意味である。メルツ氏の訪中自体が気の重いものである。ドイツはこれまで、中国経済の成長と共に輸出を伸してきたが、今や逆転している。大幅な対中貿易赤字を抱えているのだ。この赤字を減らすには、中国依存度を減らすことである。日本への挨拶には、こういう意味もあるのだろう。
メルツ氏は、訪中1週間後に訪米予定である。トランプ大統領と厳しい通商交渉が待っている。名うての「タリフマン」(関税男)トランプ氏を相手に、どう話をまとめるか。
『ウォールストリートジャーナル』(2月26日付)は、「対中関係の再構築、ドイツが示す難しさ」と題する記事を掲載した。
ドイツ経済は長年、中国の爆発的成長に便乗してきた。25日に初めて北京を訪問したフリードリヒ・メルツ独首相は長年の中国懐疑論者であり、自国にとって最大の貿易相手国である中国との関係で新たな方向性を示そうとしている。ドイツ当局者によれば、メルツ氏は1週間足らずのうちにワシントンも訪問し、トランプ氏の厳しい通商政策を受けた米欧間の今後の通商関係を明確にすることを目指すという。
(1)「独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)はかつて、売り上げの最大40%、利益はそれ以上を中国で得ていたが、その後同国でのシェア急減に見舞われた。このためVWは、その90年近い歴史において最大規模の人員削減とドイツ国内では初めてとなる工場閉鎖に追い込まれた。メルツ氏は、米誌『フォーリン・アフェアーズ』に今月掲載された寄稿の中で、中国は既存の世界秩序を変えようとする修正主義の超大国だと述べている。ドイツは中国との関係を断つべきではないが、中国への依存を大幅に減らすべきだとの考えを示した。同氏は、クリーンテクノロジーと自動車の分野で、中国からの輸入を関税と現地調達比率規制によって制限するという欧州連合(EU)の提案を受け入れ始めている」
メルツ氏は、中国批判派である。だが、対中ビジネスをまとめなければならないという大役も担っている。今回の訪中は、経済界の強い要請に基づいていた。元首相メルケル氏が、中国一辺倒であっただけに、路線修正には大変なエネルギーが必要である。
(2)「ドイツ当局者の中には、欧州での合弁事業に乗り出す中国企業に、現地の合弁パートナーとの知的財産の共有を義務付ける案を支持する可能性を口にする者もいる。これは、外国メーカーに中国が何十年も前から課してきたルールと同じだ。ドイツはまた、自国企業が輸入する原材料などについて、中国への依存を回避させる取り組みも進めている。あるドイツ政府高官によると、中国はEUに対し、2020年に大筋合意された中欧投資協定を批准するよう求めており、将来的な貿易協定締結への地ならしをしようとしている。だが、ドイツ政府は懐疑的だという」
ドイツ当局には、中国の技術を現地企業に開示させるという「弱気論者」まで現れている。ここまで、「負け犬根性」が浸透しているのだ。かつてのドイツの誇りは消えた。
(3)「ドイツにとって、今回の「チャイナショック」は全く新たな現実だ。21世紀に入ってからのほとんどの期間、中国とドイツは共生的な関係にあった。ドイツは、アジアの巨人である中国が、世界に安価な消費財を供給するために必要とした自動車や工場、インフラを中国に販売することで、中国の急激な成長にあやかることができた。この共生関係はもはや終わっている。ドイツの2025年の中国製品輸入額が8.8%増加した一方で、ドイツの対中輸出額は9.7%減少し、対中貿易赤字は33%拡大した」
ドイツ企業は、中国急成長の「お相伴」に預かってきた。その急成長が止まって、逆にドイツへ製品が逆流している。まさに、チャイナショックである。
(4)「長年、自由貿易の熱心な支持者だったドイツの経済ロビー団体や労働組合の一部は政府に対し、中国からの輸入に障壁を設けるよう迫っている。ただ、ドイツ政府には、中国との関係を断ち切れるだけの余裕は「まだ」ない。市場シェアが縮小しているとはいえ、独製造業大手の一部は中国市場への依存度が依然高い。自動車メーカーや武器メーカーなどは、今後何年も中国製の材料に依存し続けるだろう。一部の企業にとって、中国は主要な研究開発拠点になりつつある」
政治体制の異なる国家と経済的に深入りすると、大変な結末を迎えるという生きた例がドイツである。価値観が全く異なると、常識が通用しないのだ。


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