23年に重点資源国指定
日本への協力で25ヶ国
中国と縁を切って鞍替え
レアアースは国際公共財
中国は、日本の20社・団体に対してレアアースの輸出規制をすると発表した。理由は、日本が「新軍国主義に向っている」としている。日本が、防衛力を強化していることを批判しているのだ。自衛権は、国家固有の権利である。中国が、批判すべき事柄ではない。まさに、中国が得意とする「内政批判」に当る越権行為である。
軍国主義とは、外交の手段として戦争を重視し、政治、経済、教育、文化などのあらゆる活動が、軍事力強化のために行われる国家体制である。中国こそ、軍国主義国家である。「国家安全」の名の下に外国人すら平然と拘束する国家が、ノーマルな国家と呼ぶわけにはいかないのだ。
中国は過去にも、レアアースを戦略的資産として、対日外交の切り札に使ってきた。今回の規制は2回目となる。前回は、2010年の日本による尖閣諸島国有化への反発であった。このときは、中国が腰砕けになって、最後は日本へ購入を呼掛ける「無惨な結果」に終った。今回は、果たして日本を屈服させられるか、である。下記の理由によって、その可能性がまったくないと言うほかない。
日本は、2023年に経産省が「重点資源国25ヶ国」を指定して、日本の化学的精錬法技術を提供する見返りに、レアアースなどの優先輸入協定を結んできた。この拡大版が現在、米国主導で進んでいる「重要鉱物特恵市場」(26年8月稼働)である。日本・米国・EUなど55ヶ国が参加する国際版である。音頭を取ったのは米国だが、実際のプロモーターはほかならない日本である。
特恵市場は、日本の重点資源国25ヶ国を含んでおり、日本が資金・技術を提供する。さらに、南鳥島のレアアースも特恵市場へ提供するということが、多くの鉱山国を参加させる要因になった。日本が、「虎の子」の南鳥島のレアアースを特恵市場へ提供して、一人占めにしないという開かれた発想が共感を呼んだのである。日本では、資源が「国際公共財」という視点に立っている。中国は、逆に「レアアース主権」を宣言している。製品に0.1%の中国産レアアースが含まれていても、中国主権が及ぶというのである。
日本の資源に対する基本姿勢が、中国とは全く違うことで多くの鉱山国の賛同を得ている。しかも、肝心の製錬技術は日本が提供するという好条件である。従来、中国へ精錬を依存してきた鉱山国が、こうして日本と提携する結果となった。この効果が、これから次第に出てくるのである。
23年に重点資源国指定
経産省が、23年の時点で25カ国を重点資源国として選定したのは、単なる外交リストでなく、資源地政学・技術支援・経済安全保障を統合した戦略的布陣と理解されている。JOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)や経産省の制度設計は、現場の鉱山開発から製品化までの国際枠組みを一貫して支えるシステム化したことに注目すべきであろう。日本一国の立場を離れて、鉱山国とウイン・ウイン関係をつくり上げたのは、日本官僚機構の柔軟性を示している。中国の「一人占め」とは、雲泥の差である。
日本では、官僚機構へ往々にして厳しい評価を下しがちである。だが、日本の資源地政学的位置が脆弱であることから、重点資源国25ヶ国へ精錬技術を提供する形で自立化を促したことは、大きな政策的ヒットと呼ぶべきだろう。この延長で、国際版の重要鉱物特恵市場へと拡大できたもので、西側諸国全体にとって中国のレアアース支配を跳ね返す基盤をつくることになった。日本の静かな資源外交が実を結んだのである。
一方の中国の官僚機構は、日本の静かに進んでいた資源外交の影響力を全く見落としていた。なぜ、こういう結果になったのか。ここに、中国官僚機構の根本的な欠陥を指摘できるであろう。それは、中国官僚機構が家産官僚制と言われるごとく、情報の収集分析よりも「虎の威を借る狐」のごとく、相手国への威圧効果を狙った「力の演出」に力点を置いていることだ。先の「レアアース主権」宣言もこの種のもので、習近平国家主席の好感を得て出世を期待する振舞となった。動機が、国益でなく自らの出世願望に基づく行為だ。
これは、清末の家産官僚制が抱えていた「構想なき権威主義」の再来とも言える。英国船焼払い事件(1840年)は、官僚が国家のためではなく、体制維持と自己保身のために動いた結果である。この事件が、清国滅亡へ繋がったことは有名だ。こうした悪しき伝統は、現代中国の官僚機構にも引き継がれている。その結果、鉱山国や先進国は中国から距離を取り、日本や他の信頼できる国々と連携関係を深めている。
日本の近代官僚制(実務主義型)と中国の家産官僚制(権威主義型)では今後、対外外交でさらに大きな違いを生むであろう。中国の政治制度が権威主義(専制主義)である以上、家産官僚制は改まらないからだ。日本へのレアアース輸出禁止は、中国家産官僚制がもたらした「亡国的政策」となろう。日本が、ますます重要鉱物特恵市場充実へと加速するからだ。これが、中国のレアアースを巡る外交的位置を押下げるであろう。
日本への協力で25ヶ国
日本が、具体的にレアアース資源確保に向けて動き出したのは、23年6月に策定された「GX(グリーントランスフォーメーション)を見据えた資源外交の指針」に基づくものである。(つづく)
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