精鋭軍事組織「イラン革命防衛隊(IRGC)」は、20万人近い兵力を擁する準軍事組織である。また、正式な政治・経済体制と並行して活動する勢力としても機能しており、その主な任務は、1979年のイラン革命後につくられたイスラム体制を防衛し、その影響力を中東全域に拡大することにある。このように、政治・軍事の混合組織であるIRGCは、米国とイスラエルの攻撃にどう対応するのか。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月2日付)は、「イラン革命防衛隊、究極の試練に直面」と題する記事を掲載した。
IRGCが打倒されるか、あるいは何らかの形で転向させられない限り、イランは正常化しないだろう。IRGCは、不正な活動を通じて資金を生み出し、イエメンの親イラン武装組織フーシ派のような代理勢力である。IRGCは、イランの通常軍隊とは別の軍事部門と情報部門を持ち、国内の企業活動に深く根を下ろしている。IRGCの傘下には、地域内各地の武装組織との関係を担う秘密性の強い「コッズ部隊」のほか、ミサイル計画やイラン国内の治安を担当している部門もある。
(1)「イスラエルは2月28日、IRGCに甚大な被害を与え、同隊のモハンマド・パクプール司令官やハメネイ師の軍事顧問アリ・シャムハニ氏のほか複数の高官を殺害した。これは、イスラエルと足並みを揃える米国が、IRGCの弱体化を狙っている証左といえる。IRGCの関連施設に対する攻撃は、同隊の下部組織の工作員に対する統制を揺るがし、国内の反対勢力を抑え込む能力を低下させる可能性があるとアナリストらは指摘している」
米軍は、最初からIRGCの潰滅化を狙った作戦を展開している。
(2)「テネシー大学チャタヌーガ校のサイード・ゴルカル准教授は、「IRGCの頭を切り落とせば、その体は震え始めるだろう」と語った。イスラエルが攻撃した標的には、IRGCの本部「タラッラー(Tharallah)」が含まれていた。タラッラーは混乱が生じた際に、情報機関、警察機関、路上で取り締まりを行う民兵組織「バシジ」の活動、心理作戦などを調整している」
IRGCのトップを崩せば、その本隊はガタガタになるだろうという見方がるが、「宗教部隊」である。筋金入りであろう。
(3)「IRGCは、イラン国内では支配的勢力だが、米国およびイスラエルと比較すると戦力は圧倒的に低い。それでも、アナリストやイランの反体制派指導者によると、IRGCを機能不全に陥らせるためには、数週間から数カ月にわたって空爆やその他の軍事措置を講じざるを得なくなる可能性がある。そうしない場合、イランの体制は維持され、一層抑圧的になる公算が大きい。今回の米国とイスラエルによる攻撃を生き延びた強硬派が権力の座にしがみつこうと、体制に忠実なIRGCの部隊をさらに動員するとみられるからだ」
IRGCが排除されない限り、イラン正常化は困難であろう。資金源を握っているだけに、簡単には崩れないことが予想できる。
(4)「ハメネイ師の死去によって、「体制内で最も強硬かつ軍事化された勢力の影響力が強まった」と米ワシントンのリスク助言会社バシャ・リポートの創業者、モハメド・アルバシャ氏は指摘し、「この機に乗じられるほど組織化された反体制派は存在しない。そのため、今後は改革ではなく権力の集約が進み、閉鎖的な軍事国家に近づく可能性が高い」と述べた。トランプ米大統領は28日、IRGCと警察が「平和的に一体化」して、政府に反対している一般のイラン人と「連携」するよう呼び掛けた。同大統領はソーシャルメディアへの投稿で、「われわれはIRGC、イラン軍とその他の治安・警察部隊の多くがもう戦いたくないと考え、免責を求めていると聞いている」と述べた」
IRGCが権力を握ると、閉鎖的な軍事国家に近づく可能性も否定しきれないという。トランプ氏は本来、正規軍と警察が統合化して,後継政権を作ることを願っている。
(5)「47年間続いてきたイスラム強硬派による統治および反米政権からの移行は、短期的には最も起こる可能性が低いとみられているシナリオだと、アナリストらは述べている。IRGC内部には現実主義者もいるが、彼らのイスラム原理主義への忠誠度は、ハメネイ師や彼とともに国を支配してきた聖職者らに劣らない。IRGC幹部の多くは、1980年代の激しいイラン・イラク戦争の時期に、兵士として戦いながら青年期を過ごした。そしてこの時期に、イランの現体制を支えるIRGCの中心的役割が確立された。アナリストらによれば、ハメネイ師による支配の下で、イデオロギー教育がさらに広く根付いたという」
IRGC幹部の多くは、1980年代の激しいイラン・イラク戦争の時期に、兵士として戦いながら青年期を過ごした経験を持っている。簡単に矛を収めることにならないという慎重論もある。
(6)「イラン政府は、IRGCが主導権を握る一種の軍事独裁体制へと移行する可能性がある。米軍が1月初めにベネズエラを攻撃して同国のニコラス・マドゥロ大統領を拘束し米国に移送したことを受けて、同国のデルシー・ロドリゲス副大統領(後に暫定大統領)が米国の意向に沿った行動を示した。だが、アナリストらは、ロドリゲス氏のような人物がイランに現れることは想像し難いと話す」
イランに、ベネズエラのような暫定政権がすぐにできるか疑問視されている。ここが、米国にとっても「泣き所」であろう。となると、米軍はある時点で攻撃を中止し、様子を見るほかなくなる。


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