これまで、ラピダス批判の常套句は、「国内に2ナノ半導体需要があるのか」であった。それが、ついにキヤノンが国内初の顧客候補になった。ラピダスは、海外で積極的な営業活動が行われているというが、試作品ができる前に国内で第1号候補が出たことで、今後の営業に弾みが付くであろう。
『日本経済新聞 電子版』(3月3日付)は、「ラピダスの顧客候補にキヤノン 国内大手初、2ナノ半導体を生産委託」と題する記事を掲載した。
経済産業省が開発費の一部を支援し、ラピダスの課題だった顧客開拓を後押しする。実績を積み上げ、国内企業にラピダスとの連携を促す。
(1)「ラピダスとキヤノンの両社は回路線幅2ナノ(ナノは10億分の1)メートルの画像処理用チップをラピダスの北海道千歳市の工場で試作する。キヤノンが共同開発する半導体設計最大手の米シノプシスを通じて生産を委託する。最終的な開発費は最大400億円規模を見込み、経産省傘下の新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)が約3分の2を補助する」
ラピダスは、試作品ができる前から営業活動を始めている。顧客第1号が決まれば、あとは比較的スムーズにいくものだ。
(2)「キヤノンは、デジタルカメラや監視カメラなどを手がけ、機器に搭載する半導体で画像を処理している。2ナノ品を搭載すれば、電力消費を大幅に抑えたり、画像処理の性能を高めたりできる可能性がある。試作品をつくり、性能を検証する。ラピダスは顧客企業が設計した半導体を受託生産する。27年度の量産開始を目指しており、人工知能(AI)半導体スタートアップの米テンストレントとはAI処理用のCPU(中央演算処理装置)などを開発している。工場を安定的に稼働させるためには、さらに多くの顧客を先行して確保する必要がある」
キヤノンと言えば、精密機器のパイオニアである。どういう思いでラピダス第1号顧客候補になったのか。キヤノンは現在、半導体大手が使う後工程向け露光装置では、ほぼ独占状態である。ラピダス工場へも納品しているので、こういう縁もあるのだろう。
(3)「2ナノ半導体は、生成AI用のデータセンターや自動運転への搭載が見込まれるが、国内の顧客候補は限られていた。AI開発のプリファードネットワークス(東京・千代田)はAI半導体の開発を進めており、ラピダスの工場で生産することを検討している。富士通もラピダスが29年にも生産を始める次世代の1.4ナノで、AI用CPUを生産委託する可能性に言及している。日本政府は30年度までに半導体とAI分野に10兆円以上を支援する方針を掲げ、先端半導体の供給網構築を急いでいる。ラピダスは31年度までに7兆円超が必要と試算しており、3兆円規模は国が支援する方針だ」
キヤノンに続いて、AI開発のプリファードネットワークス(東京・千代田)がAI半導体の開発を進めており、ラピダスの工場で生産することを検討しているという。富士通もラピダスが29年にも生産を始める次世代の1.4ナノで、AI用CPUを生産委託する可能性に言及している。潜在顧客が現れ始めた。
(4)「今回、キヤノンのチップ開発にも補助金を出すことでラピダスの顧客獲得についても国が支える形を鮮明にする。経産省は、キヤノンとラピダスの取り組みで一定の成果を示し、ロボットや自動車メーカーなど他の国内企業にもラピダスへの発注を促す。台湾積体電路製造(TSMC)は25年末に台湾で2ナノ品の量産に入った。米インテルも25年10月に自社製品向けで2ナノ相当品の生産を始めたとしている。後発のラピダスは、ウエハーの処理速度を早める生産技術を世界で初めて採用し、少量短納期生産で差異化を図る」
経産省は、ロボットや自動車メーカーなど他の国内企業にもラピダスへの発注を促すという。先端半導体の「仲人役」を買って出ている。国は、ラピダスの株主である。経営を軌道に乗せなければならないという責任感があるのだろう。
(5)「ラピダスは、22年8月に設立された。2月までにキヤノンを含む民間32社から計1676億円の出資を受け、政府依存からの脱却を進めている。30年度ごろに営業黒字を達成し31年度に新規株式公開(IPO)を目指す。持続的な事業にするためには大手顧客向けの受託生産を軌道に乗せ、収益を高めることが欠かせない」
ラピダスは、30年度ごろに営業黒字を達成し、31年度に新規株式公開(IPO)を目指す。その頃までには、さらなる発展の青写真を描ける状態になっているであろう。


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